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《オラトリオ1818》オラトリオオデッセイ




 オラトリオ・オデッセイ。
 それは神がこの大地に降り立った軌跡を祝うまつりだ。
 創造神はこの世界に自分の体を10に分けて実在なる神を与えた。
 創造神は一週間かけて神を作った。神は一週間かけてこの世界を知った。
 12月24日から年があけ、1月7日までの間。
 人々は神の誕生を祝う。
 それはイ・ラプセルだけではなく他の国でも同じ、大きな祭になる。
 ヴィスマルクの女神などは、この戦争のさなかだというのに、オラトリオオデッセイのために休戦を発布したというほどだ。
 
 イ・ラプセルにおいては、12月24日から豪華な料理をたべたりプレゼントの交換が盛んにおこなわれる。イベントだって盛り沢山だ。
 最初の日に恋人とともに過ごし愛を確かめ合ったり、オデッセイを祝うデコレーションツリーを立ててたりと、街は華やかに彩られる。

 王城ではダンスパーティや祝賀会が開かれる。今年は、エドワード国王が王になって初のオラトリオオデッセイであるので、昨年よりも大掛かりなパーティになるだろう。

 基本的には年末の12月31日の昼頃からあける新年1月1日の昼まで丸一日をかけて、イ・ラプセルの女神、アクアディーネの誕生を祝う。

 今年からは王城に自由騎士たちも招待されることになった。

 きみたちにおくられたその招待状に従っても従わなくてもそれは自由である。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
イベントシナリオ
シナリオカテゴリー
日常γ
■成功条件
1.オラトリオオデッセイを楽しむ。
 ねこてんです。
 オラトリオオデッセイのもっとも盛り上がる年末から新年の時間軸のパーティです。
 王城での豪華なパーティの招待状をどうぞ。
 アクアディーネ様はお誕生日用のドレス姿です。
 ダンスホール中央には綺羅びやかな大きなデコレーションツリーが飾られています。真っ白なツリーの頂上には星がかざられています。
 その他いろいろなオーナメントもかざられています。欲しい方はもっていってもかまいません。

 ダンスをしたり、貴族とお話したり、豪華なお食事をたべたりとおもいおもいの時間をすごしてください。
 アクアディーネのお誕生日を祝うと女神様は喜ばれると思います。
 (もちろんしなくても構いません。御用があれば御用を最優先してください)

 また遠征の皆様が参加する場合はシャンバラでどのように現在すごしているかをRPしてくださいませ。
 *シャンバラでの動き次第で描写できる行動項目が増える可能性があります。
 もちろんこの日にマキナ=ギアで通信してアクアディーネと話すこともできます。

 ●参加しているNPC


 元老院の政治家のお歴々。
 基本的にどの派閥の方々もいらっしゃいますが、エドワード・クラウス派と穏健派が多いです。
 ノイマン派のみなさんも我が物顔でデコレーションツリー周辺にいらっしゃいます。
 基本的に彼らは談笑しておりますのでお話してくださって構いません。

 有力貴族のみなさま。
 某お嬢様もいらっしゃいます。
 お見合いパーティのときのようにクラウスさんにおねがいすれば、貴族を紹介してもらうことは可能です。

 エドワード・イ・ラプセル
 クラウス・フォン・プラテス
 
 イ・ラプセルの王と宰相様です。どんな人物かは皆様の知るとおりで多少の無礼はなんとも思いません。
 エドワードは下記ダンスに誘えばきてくれます(社交ダンスの腕はそれなりです)
 談笑にも応じてくれますのでご自由にどうぞ。聞きたいことがあればご遠慮無く。

 アクアディーネ
 この日だけは神殿ではなく王城にきています。
 ですが周辺警護はかなり厚くなっています。
 ホール奥の玉座に据わっています。ダンスのお誘いはちょっと難しいです。

 ブランディーヌ・イ・ラプセル
 前王妃です。エドワードのお母さんです。穏やかな方です。

 クレマンティーヌ・イ・ラプセル
 エドワードの妹さんです。15歳。恥ずかしがり屋の王女です。
 気を抜くとカーテンの後ろに隠れてしまいます。

 クラウディア・フォン・プラテス
 彼女も一応普通に貴族ですよ? エドワード、クレマンティーヌ兄妹とは本当の兄妹のように育ってきています。
 
 アルブレヒト・キッシェ
 穏健派筆頭。 わりと朗らかなひとがらのキッシェ・アカデミーの現学長です。

 オスカー・フォン・ノイマン
 奴隷制復活を求める派閥の筆頭です。貴族主義ですので、基本的にノウブル以外とは口を聞かないでしょう。
 亜人・混血に話しかけられたらいやいや口は聞きます。

 亜人たちが暴れればそれをネタに騒ぐことは間違いありません。
 むしろそれを狙っている節もあるので、話しかけたノウブル以外は辛辣なことを言われるでしょう。
 がんばって我慢してください。

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 彼らと話す話さないは自由です。

 その他参加NPC
 フレデリックさんはお仕事中ですので無理ですが、それ以外のNPCは呼べばだいたい
 どこでもきてくれます。

 フレデリック・ミハイロフ
 アクアディーネの警護にあたっています。不埒者は逮捕されます。

 ヨアヒム・マイヤー
 バーバラ・キュプカー
 ダンスしたりご飯たべてます。おしゃべりも歓迎。


 佐クラ・クラン・ヒラガ
 ミズーリ・メイヴェン
 カシミロさんたちと談笑しています。誘われればダンスにも参加します。
 ミズーリさんはともかく佐クラは相当ダンスは下手くそです。

 アンセム・フィンディング
 めっちゃ端っこで早く帰りたい感じになってます。

 ムサシマル・ハセ倉
 アーウィン・エピ
 めっちゃ食ってます。もりもり食ってます。
 アーウィンは他国亡命者であることもあり、政治家に観察されまくっているので結構ビクビクしています。
 ムサシマルは食うことに忙しいです。ダンス? そこにいるどヘタレミミズクが踊るっていってるでござる。
 アーウィンは誘えばダンスには応じますがめちゃくちゃ下手ですのでそうとう足を踏まれると思います。

 基本的に亜人組は政治家の近くには近づかないように配慮はしています。

 
・できること。
 基本的にあっちもこっちもと行くよりは、一つに集中したほうがよいリプレイになると思います。
 希望のタグを最初に記入してください。
 タグでチェックをかけているのでご協力いただけると執筆しやすいです。

 王城での服装は基本的には礼服でお願いします。礼服がない場合は貸出もあります。
 どうしても礼服は着ないということも可能ですが、貴族の心象はあまりよくないです。

 【食事】
 豪華な食事が用意されています。お土産に持ち帰りは少しならかまいません。

 【ダンス】
 貴族のみなさんやNPCとダンスしたり、PCの皆様同士でダンスしたりしてお楽しみください。
 
 【談笑】
 貴族のみなさんやNPC、PCたちと楽しく会話をしてみてください。
 何かを尋ねれば答えれることであれば答えてくれます。
 貴族のみなさんは身分にとてもこだわりますので、ご注意を。(エドワード・クラウス派のみなさん(ご家族も含む)はそこまで気にはしませんが、貴族に話しかけるということはどういうことかをご注意ください)

 【警備】
 警備はいつだって必要なのです。

 【他】
 別に王城のダンスパーティで遊ばなくてもいいんですよ?
 王城以外もアデレードあたりの町並みはとても賑やかにバザーが行われていたりしています。
 アデレードの中央には王城とおなじようなツリーが立てられています。(待ち合わせ場所としてメジャーです)
 アデレードにはアルヴィダ・スカンディナもいるかもしれません。
 ちょっと遠出して、メモリアに会いに行ってもかまいません。
 カシミロさんと13番はオラトリオの商売をされています。
 なにか来年にむけて画策してることがあるとか?
 クローリーは呼べば来るかもですがさすがに王城にはいかないと思います。それくらいの空気は読むようです。

 このタグは王城以外で何かをしたいかたはどうぞご自由にお使いくださいませ。
 遠征組もこちらでどうぞ。 

 また、おひとりさま参加だけど、NPCにかまってもらいたい。でもそういうのちょっとはずかしい……という方は、EXにかまってほしいと書いていただければ参加NPC(運営(担当がちょころっぷ)NPC+ねこてんNPC)はだいたいだせますのでこっそりお声がけください。
 こちらが勝手に構いに行ったという体でかかせていただきます。呼ばれなければ大人しくしてます。
 また、誰に話しかけられるかわからないけどそういう出会いもいいよね! という方はEXにランダム希望といれていただいたら、誰かは絶対にかまってくれます。

 ですが、上記のパーティにいるNPC以外は【他】タグでおねがいします。
 他国人とかはその他です。

 ☆12/25追記。
 シャンバラ組についてですが、今回だけ特別に吾語STの許可を得て、
 マリアンナ・オリヴェル
 パーヴァリ・オリヴェル
 との絡みも可能になりました。担当が違うので深い部分での人間関係については描写はしきれないかもしれませんが。
(吾語STの監修は入る予定です)
 ヨウセイに対する質問などは、当該シナリオ(吾語STのシナリオ)でお願いします。
 時間軸としてはほんの少しの隙間の時間という時間軸になります。


●イベントシナリオのルール

・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
状態
完了
報酬マテリア
0個  0個  1個  0個
12モル 
参加費
50LP
相談日数
12日
参加人数
38/100
公開日
2019年01月10日

†メイン参加者 38人†

『みんなをまもるためのちから』
海・西園寺(CL3000241)
『黒砂糖はたからもの』
リサ・スターリング(CL3000343)
『慈悲の刃、葬送の剣』
アリア・セレスティ(CL3000222)
『ReReボマー?』
エミリオ・ミハイエル(CL3000054)
『教会の勇者!』
サシャ・プニコフ(CL3000122)
『イ・ラプセル自由騎士団』
シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『英雄は殺させない』
マリア・スティール(CL3000004)
『虚実の世界、無垢な愛』
蔡 狼華(CL3000451)
『キセキの果て』
ニコラス・モラル(CL3000453)
『SALVATORIUS』
ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)
『生真面目な偵察部隊』
レベッカ・エルナンデス(CL3000341)
『こむぎのパン』
サラ・ケーヒル(CL3000348)
『戦場に咲く向日葵』
カノン・イスルギ(CL3000025)
『私の女子力は53万ですよ』
ライチ・リンドベリ(CL3000336)
『そのゆめはかなわない』
ウィルフリード・サントス(CL3000423)



「へへへ陛下!ご機嫌麗しゅう存じます!」
 エルシー・スカーレット(CL3000368)はレンタルしてきた白い礼服の裾を握りしめながら、真っ赤な顔で、エドワード・イ・ラプセル国王に挨拶をする。
 おかしい、アクアディーネ様にお誕生日のお祝いをしたときこんなに緊張なんかしなかったのに。
「うん、ごきげんよう、エルシー」
 ドレスどうですか? アクアディーネ様と比べて、なんて意地悪だっていうつもりだったのに、彼の目の前に立ったとたんに言葉がでてこない。
「今年は陛下が即位された年でもありとてもお忙しかったと思います」
 言葉にできたのは違う言葉。
「そうだね。あっという間にオラトリオオデッセイだ。正直忙しすぎて記憶だって曖昧さ。けれど君たちが頑張ってくれたのだけは覚えているよ」
「あの、陛下、せめてこのパーティのときだけはお心をあんじらりぇ……」
 いい感じのことを言おうとしたのに噛んだ。ううう、恥ずかしい。
「エルシー」
「ひゃい!」
「よかったらダンスでもしないかい? エスコートが私ではダメだろうか?」
「そそそそそそ、そんなことありません!!」
「ではレディ、お手を」
 そう伸ばされた手をとることに戸惑いはなかった。
「あの、もしかして、陛下。アレみました?」
「なんのことだい?」


「先日はありがとうございました」
「ごきげんよう、テオドールさん。ちゃんと白いバラを渡した?」
 めかしこんで少し大人っぽいドレス姿のクラウディアにテオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は挨拶する。
「ええ、もちろん。ですがその……意味はまだわからずじまいで」
「んもう、これだから。知らずに渡したとかほんと、野暮なんだから! 『私は貴方にふさわしい』、だよ」
 クラウディアから聞かされた真実にテオドールは面食らう。
 そんなことを彼女に伝えたのか? それでは今後不安も弱音も吐けぬではないですか。いえ、そんなつもりはないけれど。頭のなかでぐるぐると考えが巡る。
「ほらほら、あっちでカタリーナさんが待ってるんだから! カタリーナさんにふさわしいテオドールさん!」
 言ってクラウディアはテオドールの背中を押した。
「カタリーナ」
 意味をきいた後だ。少しだけ気まずいような恥ずかしいような気分になる。
「テオドール様!」
「陛下や宰相どのにはご挨拶を済ませてあるかな?」
「ええ、テオドール様をまっておりました」
 嬉しそうにカタリーナはテオドールの腕をとる。
「あの……ご迷惑でしたか?」
 その瞬間の微妙な表情に反応したカタリーナがしゅんとする。そんな顔をさせたいわけではないのに。
「いや、君が格段と美しくて戸惑ってしまったんだ。こんな美しい姫君を娶れるなんて思ってもいなかった」
「テオドール様はどうして私でいいとおもったんですか?」
「正直ね、今まで再婚などと考えてもいなかった。だけど、世界を変えようと努力する陛下をみて、自分でも変わるべきだとおもったんだ。そして、君を紹介してもらった。
 そりゃあ私も戸惑ったさ。下手をすれば娘のような年頃の少女だからね。それでも君と話しているうちに君の真摯さ、あどけなさ、優しさ、それに惹かれていった。
 だから君がいいと思った。誰でも良かったわけではないよ」
 その真っ直ぐな言葉にカタリーナは頬を薔薇のように染めた。
「君の気持ちもよかったらきかせてほしい」
「最初はとても年上の方で怖そうで困りました。だけどお話してみればテオドール様は優しくて。
 ご存知ですか? テオドール様ったらお笑いになられるととっても可愛らしいお顔になるんです。私はそのお顔が好きです。
 前の奥様の事は知っています。ですが、私がそのこころの穴を埋めてさしあげたいと思っています。だからテオドール様の今の言葉に私は嬉しくてしかたないんですよ?」
 そういってカタリーナは微笑む。
「まいったな、君にはかないそうもない」

「クレマンティーヌ様」
 海・西園寺(CL3000241)はいつもどおり、カーテンの直ぐ側で小さくなっているクレマンティーヌ・イ・ラプセルに声をかけた。
「海、ティーヌでかまいません」
「ではティーヌ様。西園寺はお願いにあがりました」
「なにかしら?」
「西園寺にダンスを教えてほしいのです」
 その言葉に王女は一瞬戸惑う。ダンスを踊るならダンスホールにいかなくてはならないのだ。
「だめですか?」
 海の言葉に一瞬だけ王女は瞑目すると、大丈夫ですと答える。大切な友人のお願いがきけなくてなにが友人か。
「はじっこなら、あまり注目されないとおもいます」
「でしょうか?」
 ホールに音楽が流れる。ゆったりとしたスローテンポの曲だ。
 ダンスを教える王女は真剣で、いつものほんわかした様子とは違う。それが見れたことだけで海は胸いっぱいになる。
「こんなかんじですか?」
「はい、そこでターン」
 たどたどしい足取りの海の手をひいてリードする王女。思ったとおりにじぶんよりずっとずっとダンスが上手だった。ターンのしかたには王族ならではの優雅さと上品さがある。西園寺がやってもあんなにきれいにできるのでしょうか? と思ってしまう。
「ティーヌ様は、もっと自分に自信をもっていいとおもうのです」
「自信ですか?」
「やっぱりティーヌ様は素敵なレディです。西園寺にはかないません」
「海もすてきなレディです」
 そう言ってもらえたことがうれしかった。海はバッグのなかから星の欠片をだすと、王女に渡した。
「これは?」
「ダンスのお礼です」
「きれい……でもいいんですか?」
「はい」
 西園寺は大好きなティーヌを守ると心にきめたから。自分が居ない間は星の欠片にまもってもらえるように。
「ありがとうございます。じゃあ」
 ティーヌはきれいな絹のハンカチを袖元から出すと海にわたす。
「お礼です」
「お礼のお礼になっちゃいます」
「あなたにもっていてほしいから」
「はい、ありがとう、ティーヌ」

 マグノリア・ホワイト(CL3000242)は角を結い上げた髪で隠しエドワードをダンスに誘う。
 ダンスはそれなりにはできるはずだ。
「今日はレディかい? よく似合ってる、と言うと複雑な気分になるかい?」
「いいや、そんなことはないよ。似合っていると言われれば悪い気はしないよ」
 ゆったりとしたダンスミュージックに合わせ、二人は踊る。ややあってマグノリアが口を開く。
「アクアディーネは。必要があれば僕らとともにダァトに向かうといった。ボクはアクアディーネがダァトへ行き、世界を守るために協力がしたい」
 エドワードは黙って続きを促す。
「そのためにケテルのハイオラクルである貴方も必要だと考えている。だから貴方にその覚悟があるかを確認しにきたんだ」
「世界のために、この生命をベットする覚悟はあるよ。だけど君は勘違いしている。
 ダァトは異世界とか新しい世界のことじゃないよ。
 蠱毒がなされればやがて至る場所だ。つまりは結果論なのさ。
 君たちがダァトに達することができたとして、帰る場所は必要だ。私はその帰る場所を守ろうと思っている。
 それにね。君たちじゃないときっとアクアディーネ様をダァト至らせることはできない。私では寂しいけれど、無理なんだ」
「なぜ?」
「それは君たちが特異点<■■■■シス>であると、あの道化師にきかされただろう? 私はただのハイオラクルであって可能性<■■■■シス>たりえない。情けない話だけどね」
「そう」
 マグノリアは頭の中でその言葉を反芻する。届きそうで届かない。世界の奥点に手をのばすことのできるものとできないもの。だから代わりに成し遂げてほしいと言われた言葉を深く、深く、考えてみる。今はまだすぐに答えはでてこないものなのかもしれないけれど。

 女神に誕生のお祝いをしたサラ・アーベント(CL3000443)と英羽・月秋(CL3000159) は退席するとそのままダンスホールに向かう。
「一曲、踊っていただけますか?」
 年下の月秋のエスコートは少し緊張しているのがわかる。それがかわいくてサラは微笑んだ。
「私はあまり上手に踊れないかも知れませんが、笑わないでくださいね」
 伸ばされた月秋の手をとれば自分のモノとはまるでちがう大きさに男のこだと感じ、鼓動がたかなる。
 そのたかなりが恋なのかはわからない。でも嫌なものでは決して無い。
 月秋とて必死だ。このエスコートで正しいのかはわからない。それでも彼は男だ。やるときはやるんだ。
 緊張しながら背中に手を回す。どうにも音楽はアップテンポでまるでそれが自分の心をあらわしているようで焦るけれども必死で自分を律して優雅に踊る。
 サラはその真摯な眼差しがとてもきれいだとおもった。けれど彼には伝えずにおく。いっぱいいっぱいで男の子らしくある彼にこれ以上の負担はかけたくない。
 お互いに緊張づくしのダンスを終えて次は会食だ。
 眼の前の料理はまるで宝箱のようで、月秋の目が輝く。そんな素直な月秋がかわいくてサラは微笑む。
 月秋はここでも男をみせると。美味しそうできれいな食事を選びトレイにのせサラのもとに向かう。
 トレイにはサラが好きそうなものが沢山のせられていた。
「よくばりしてきたんですね」
 そういって笑うサラにあなたのお好きなものを考えていたらいっぱいになってと言い訳する。
「だいすきなケーキ。ありますから嬉しいですよ」
 言って受け取ったトレイの中からケーキを切り分け一切れ差し出してあーんする。
「あの、子供扱いはしないでください!」
 うれしかったけど照れくさくて断ってしまう。
「あら」
 さみしげなサラに罪悪感が募り、月秋は差し出されたままのケーキをくちにする。口内に広がる甘み。
 その美味しさに目をキラキラさせてしまうと、サラは嬉しそうに微笑んだ。
 願わくばこの時間が終わってほしくない。
 月秋はそう思う。なぜそう思ってしまったのかは、まだわからない。
 

 怪しい黒衣姿の青年が柱の影からアクアディーネを覗いている。
 正直すっごい圧だ。たぶんこっそりと祈りを捧げているとおもっているのは、ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)だけだろう。貴族の子どもが指をさして母親に叱られている。
「ごきげんよう。ナイトオウル。お祝いにきてくれたのですか?」
「AHAAAAAAAAAAAA!! 女神! 女神!! あああああ!!」
 叫び声をあげて滂沱の涙を流すナイトオウル。
「本当にあなたはいつだって大げさですね」
「ああああ、今日もパンケーキとジャムをたべておりましたぁああ!」
「他のものも食べていいんですよ」
「わかりましたああ女神! 私はここにあるすべてのものを食べます!」
「そんなことしちゃ、お腹壊しちゃいますよ」
「壊れても! 女神のためであれば!」
「んもう。壊れてしまったら私がこまります」
「あああああああ!! 私は女神を困らせてしまった! それこそは冒涜! 悪逆! 今! 命をもって!!」
「もう! もう! えっと困ってません。いい間違いました!」
「ああああ! 女神は困ってない! 困ってないです!」
「そうだ、皆さんにいただいたリンゴ、いかがですか? ご一緒にたべれたら私はうれしいですよ」
「わかりましたああああ! 女神から頂いたリンゴ! 家宝!! 至宝!」
「リンゴは食べるものですからね。美味しく食べてくださいね?」
 いつもどおりの通じているようで通じないこの会話でも、アクアディーネは嬉しそうに微笑む。
「RINGOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO! APPLEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」

「お初にお目にかかります。クレマンティーヌ様。街の劇場で子役をしておりますカノンと申します」
 カノン・イスルギ(CL3000025)は団長に教えられたマナーを思い出しながら演技力でもって上品にカーテシーで挨拶する。
「はじめまして、カノン」
 王女はやわらかな笑みで迎える。
「あの、王女様はお芝居はお好きですか?」
「ええ、王立劇場のお芝居はたまに見ます」
 その言葉に自分の庶民相手のお芝居は合わないだろうか? とカノンは心配する。
「あなたたちはどういうお芝居をしているんですか?」
 王女の言葉にそれが杞憂であったことがわかったカノンは、口早に自分のやっているお芝居の話をする。
 どんな演技をしているのか。どんな役をやっているのか。
 たくさんたくさん言葉がでてくる。王立劇場のお芝居はどんなものかときけば、専門的なことはわからないと王女はいいつつも感想をおしえてくれた。王女のはなしからホリゾントの照明の使い方や演出を類推して参考にしようと思う。
「お礼に王女様にお祝いの歌をうたっていいですか?」
「はい」
 紡がれた歌は素朴ながらも優しいもので、王女は嬉しそうに手を叩いて喜んでくれた。
 その満足感に包まれ小さな歌姫は丁寧にお辞儀をして退席する。
 丁寧な喋り方は疲れたけれど、でも王女とお話できたことがうれしくて。はやく団長や団員に自慢をしたくてたまらなかった。

 借りてきた礼服。やばいのがきたら逃げるための鋭聴力。それでもって場にそぐわないことにならない演技力でフル装備のライチ・リンドベリ(CL3000336)はパーティに赴く。
 お話もするけれど、花よりだんご。
 美味しいごはんはしっかりたべるのだ。
 コルセットは巻かれそうになったけれどそれはなんとか辞退することに成功した。
「ずいぶんたべてんな」
 そう話しかけてくるのはアーウィンだ。
 両手のトレイには美味しそうな食べ物が詰まれている。どうもあちこちでパシられているようだ。
「ええ、アーウィンさん……いえ、アーウィン様。とても美味しくて」
「ライチ、その演技似合ってない」
「失礼な! ちゃんとべんきょうしてきてるんですよ!」
「そりゃ失礼。じゃあ、お嬢様、このテリーヌなんていかがですか? なんてな」
「演技下手くそ、それじゃ執事っていうかよくて下男がいいところかな」
 手厳しい演技指導にアーウィンは苦笑する。
「ミートローフと野菜の付け合せも美味しかったし、くえくえ」
「ん、ありがとう」
「そういえば、女神さまに挨拶はしてきたのか?」
「ああーーーっ!」
「ちょうど今、あいてるみたいだしいってくるといいぜ」
「ありがとう、アーウィンさん。あ、そのミートローフ美味しかったからおかわりおいておいてね」
「お前までパシるのかよ!」

 パーティ会場を警らするのはウィルフリード・サントス(CL3000423)。
 礼服を着て不埒なものがいないかとあるきまわる。
 やはりというかたまにノイマン派の貴族が自由騎士にいちゃもんをつけるのを間に入ってすぐにとりなす。
「貴族社会をわからぬ田舎者ですので」
 まったくもってなんとも忙しい。マザリモノである彼本人に文句をいう貴族もいる。
 そのたびに謝って謝って。
 なんともストレスの貯まるお仕事だ。揉め事を起こすつもりはないが、間にはいるときにさり気なくマントの裾を踏んでやった。高級なマントにはみごとな足跡がついている。
 気づくまでには時間がかかりそうだ。
 すこしだけ気がはれた気分で警備を続ける。
 何事もないわけではないが、それなりには平和なパーティであることに、ウィルフリードは笑みを浮かべた。


「やあ、佐クラ嬢、今日もきれいだな」
 ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は佐クラ・クラン・ヒラガを見つけると真っ直ぐに駆けつけてくる。
「ウェルスさん、ごきげんよろしう。また、お上手なこというて、いつもそういうて女の子口説いてるんです?」
 まんざらでもなさそうに、佐クラはウェルスの肩をぺちぺちと叩く。
「いつものもいいけど、ドレス姿もお嬢の可愛らしさがでているし色っぽくていいぜ! それにこういうの言うのはお嬢にだけだぜ?」
「またすけべえなこといわはるんやもん、うち恥ずかしいわぁ」
「ダンスは踊らないのか?」
「うち、だんすなんてハイカラなことできへんもん。ウェルスさんはどうなん?」
「まあ……俺も少ししか踊れないわけだが。ものは試しだ。ものづくりもそうだろ? 今踊ってみるとか? ……どうだ?」
「ええですよ。研究家が試しいわれてことわれへんもん。ほんまずるいわぁ」
 くちもとに手をあてて佐クラが笑う。その笑いがチャーミングでウェルスの鼻の下はどんどんのびていってる。
「もちろん、今度二人で練習とかでもいいけど、そうしたらデートの約束になるだろう?」
「ほんまうまいこといって、自由騎士のお仕事あるんちゃうん?」
「美女のためならいつだって予定をあけておく!」
「それはお仕事優先せなあきません」
 そういって伸ばされた手にウェルスはきょとんとする。
「踊ってくれはるんやろ? いいはったやん?」
「あ、おう!」
 どぎまぎと兎のお姫様の手をとるはくまの王子? 様。
 ちなみにお互いひたすら足を踏みまくったのは内緒のお話。

「アーウィン、疲れているのか?」
 壁際で、礼服の首元を緩めているアーウィンをみて、グローリア・アンヘル(CL3000214)は声をかけた。
「ああ、グローリア。そういうわけじゃないけど、やっぱりこういう場所は苦手というか、かたっ苦しいから、休憩ってところかな」
 ドキン、とその言葉に心臓が跳ねた。これはただの不整脈だと思う。医者は恋だとかいうけどそんなわけない。そもそも色恋沙汰は避けてきた。今更恋情なんてわからない。
「お前の国ではどんなオラトリオオデッセイをすごしてたんだ? その、子供のときとか」
「あ? いたって普通だぜ? 俺のハイマート(こきょう)はまあ、20年かそれくらい前にヴィスマルクに占領されたんだけど、される前は、神様とかそういうのはよくわからんけど、その日だけはかーちゃんが奮発していつもよりいいメシが出たとかそういうかんじだったな。
 ヴィスマルクの国籍になってからはラーゲリだったからな。まあ、毎年メシがマシになったとかそんなカンジだな」
「やはり、この国とは違うのだな」
「逆にこの国が珍しいんじゃないのか? しらんけど。こういうメシみるとハイマートのチビどもにもっていってやりたいとは思うぜ」
「ずいぶんと可愛がっているんだな」
「まあな。チビたちは全員可愛いしな。生意気だけどさ、まあそこも可愛い」
 可愛い、その言葉にまた心臓が跳ねた。少しだけそのチビたちにたいしてチクチクとした思いを抱いてしまったのを頭をふってなかったコトにする。そもそもにおいてこいつが可愛いというときの顔が良くない。なんでそんなに優しい顔になるんだ。
「可愛いという言葉は特別なんだ」
「は?」
「なんかよくわからんがお前が可愛いという言葉を出すと私がなんだか不整脈になるんだ! なぜだ! お前だからか?」
 珍しくグローリアが感情的になる。なぜだかわからないけどイライラとする。
「お、おい、グローリア、お前言ってることが支離滅裂だぞ!」
「支離滅裂にさせてるのはお前だろう!」
「なんでだよ?!」
 自分の心がわからない。こんなことを言いたいのじゃないのに。
「なんかよくわからんけど、お前のほうが疲れてるのかもな」
「疲れてない!」
「わかったわかった。んじゃ、そのテーブルの椅子に座ってくれ。メシもってきてやるから。そんで今度はお前のオラトリオの思い出きかせてくれよ」

「おにくっ!」
 サシャ・プニコフ(CL3000122)は両手いっぱいにおにくをもってアクアディーネのもとに向かう。
「アクアディーネ様、お誕生日おめでとうだぞ!」
「はい、ありがとうございます。サシャは今日もおにくなのですか?」
「うん! そうだぞ! 前のパーティーでもこれが一番楽しかったのだぞ!
 にくにくにくのにくまつりをするぞ! オラトリオオデッセイといえば!」
「ターキーですか?」
「その通りなのだ! そとはこんがり、中はジューシー! 一人で一羽なんて余裕なんざぞ!」
「すごいですね。今日は沢山おにくがありますから、お腹いっぱいたべてくださいね」
 でも、とサシャが沈んだ顔をする。
「どうしたのですか?」
「サシャだけが自由騎士でおいしいものを食べているけれど、教会の子たちはオラクルじゃないんだぞ。だからサシャみたいにできない」
 それは国という母体が抱えてしまう貧富の格差にほかならないのだ。全てに手をのばすことは不可能だ。
 女神はそのやるせなさに瞳をくもらせる。
「でも、こっそりお土産でにくを包んでもらうのだ!」
「私にいってしまってはこっそりじゃなくなりませんか?」
 しかしそれを吹き飛ばすようなサシャの笑顔が素敵で女神もつられて笑う。貧富の差はあっても笑顔は変わらない。それがとても嬉しかった。
「じゃあ、アクアディーネ様とサシャのふたりの秘密なのだ!」
「はい、ひみつですね」

 一方その頃裏町では。
 ローラ・オルグレン(CL3000210)はパーティの招待状をゴミ箱に捨てる。別にパーティが嫌なわけではないけど肩がこる。
 それにこの時期は正直パーティどころではない。かきいれどきなのだ。
 銀の潮騒亭をきりもりするマスターとしてのローラは、そのチャンスを無駄にするわけにはいかない。
 王城もだが下町や裏町だってお祭りなのだ。
「ローラねえさん、衣装がないーー」
「そっちのスツールにしまってあるの使って」
「ローラちゃん、またお客さんはいってきたよ」
「いいよぉ、お出迎えしてあげてぇ。ローラもいまからでるから」
 少々際どい戦闘服(ダンサーいしょう)に身を包んだローラは店の女の子たちに答える。
「ヒューー!」
 怪しいいろの照明のなかステージにあがるローラと女の子たちは下卑た歓声に笑顔で手をふる。
 ようし、カモだらけ。
 そう舌なめずりをする毒婦の頭の中はお金の計算でいっぱいだ。
「お気に入りの子はいたー? 特別料金で個室接待もあるからね~」
 その言葉に男たちは口笛で歓迎する。
 怪しげな音楽が奏でられ女たちは妖艶に舞う。
「いいぞー、脱げー!」
「しかたないんだからぁ」


「へっくしょい」
 外での警備は寒い。エミリオ・ミハイエル(CL3000054)は神様の誕生日にかこつけていちゃつくカップルに爆発しろ! と毒づく。なんなら爆弾も本当にご用意しましょうか? なんて言いたくなってくる。ははは。
 まあ、そんなことでお縄についてもバカバカしい。警備を続ける。
 そりゃ真っ当に恋愛をもとめるのなら自由騎士なんてなるわけがない。いつ死ぬかもわからない職種だ。
 それに意外と自由騎士ってたのしいこともあるのだ。そう、自分は充実してる。
 とはいえ、やはりこういうイベントには寂しさを感じずにはいられない。
 ため息をついたそのほほに暖かいものが触れる。
「うわっ!」
「うわ、っとはなによ。バーバラお姉さんからの差し入れもってきたのに」
 ふれたものは銀色のカップになみなみと注がれたスパイスいりのホットワイン。バーバラ・キュプカーの差し入れだ。
「ありがとうございます」
「あったまるわよぅ」
 両手で暖をとるようにカップをもち、ワインをすすれば、五臓に染み渡る暖かさでみたされる。
「おかわりはあるけどお仕事中だから控えめにね」
「女神」
「なによ? 急に。まあ優しいバーバラお姉さんですから女神にみえるでしょうけれど」
「ありがとうございます。ヒトのあたたかさにふれた」
「大げさね。こっちはバゲットにお肉と野菜を挟んだサンドよ。寒い中警備ありがとう」
「いえ! ぜんぜん! オラトリオオデッセイを楽しむみなさんが幸せになるように!!」
 ずいぶんとゲンキンに喜んでしまうエミリオだった。

「アークライトの姫君ですね。自由騎士になられたと聞きました。武勇も耳にします」
 もっきゅもっきゅと食事をしながら貴族の女の子を眺めかわいいにゃーと鼻の下をのばしていたヒルダ・アークライト(CL3000279)に穏健派の貴族の青年が話しかけてくる。
 その瞬間にヒルダは鼻の下をきゅっともどしてアークライトの姫たりえる表情に戻る。
「いえ、そんなこと」
 青年はヒルダにたいして猛烈なアピールを始める。やれ自分は狩猟が得意だ、あなたと狩猟をしてみたい、やれキッシェの学会で良い成績をとった、などなど。
 アークライトは貴族のなかでも穏健派だ。ヒルダと婚姻を結ぶことでより堅牢な立ち位置がほしいのだろう。
 うちなんて狩猟戦闘民族みたいな家系で政治的なお話に興味のない一族なのに。いや、だからこそ穏健派でも武力のある家系にしたいのか。
「あ! アルブレヒトおじさま!」
 青年の話は自慢話ばかりでどうにもつまらない。そんなところに現れるのは救いの神様、アルブレヒト・キッシェその人だ。
「やあやあ、ヒルダ」
「私、アルブレヒトおじさまの彼女ですので、では!」
 とんでもないことを口走ってアルブレヒトの腕をヒルダがとる。青年は絶望的な表情をしている。
「おいおい、ヒルダ、なんてことをいうんだ。私に変な噂がついてしまうじゃないか? 私は妻がいるんだよ?」
「いいから!」
「すまないね、君。どうにもヒルダはご機嫌ななめのようだ。またの機会で」
 穏健派のトップからそういわれてしまえば従うほかない。青年はしょんぼりと肩をおとして去っていった。
「すこしあからさまじゃないかね? 彼はずいぶんとしょげていたよ」
「そういう話苦手なんですもん、結婚なんてまだ先です! 興味もありません」
「まったくとんだレディだ」

 うちみたいな庶民がパーティに参加してもドレスとメイクしてもらえるのはほんま嬉しいわ。
 前回のメイクが気に入ったアリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)は今日もめかしこんでもらった自分のすがたを鏡に写してご機嫌でポーズをとる。
 メイク係のメイドがくすくすとわらって言ってらっしゃいませお嬢様なんていうもんだから、アリシアはお嬢様気分で、会場のアクアディーネのもとに向かう。
「アクアディーネ様、お誕生日おめでとうございます」
 見よう見まねのカーテシーでお嬢様らしくご挨拶。
「ありがとうございます。今日はいつもよりお上品ですね。アリシア」
「素敵なドレスきせてもろたんです。せやから上品にせんとな思いまして。今年一年無事にすごせたのはアクアディーネ様が見守ってくれたおかげです」
「いいえ、あなた達の尽力あってこそです。こちらこそお礼をいわせてください」
 女神にお祝いを述べたあとはお楽しみの料理だ。みたこともないようなきれいな料理がならんでいる。
「なんやこのケーキみたいなの」
 縞模様のベースにセージと胡椒の実、そして魚のマリネが添えられている料理にフォークをさせば柔らかい。
 切り分けたその欠片を口にいれてみれば野菜の味が優しくひろがる。
「ふあ、これ野菜のムースやん。すごい! すごい美味しい!」
 アリシアはその味に舌鼓をうち笑顔になった。

「~~♪」
 会場に聖歌隊衣装に身を包んだティア・ブラックリップ(CL3000489)のボーイソプラノの声が響く。みなその美しい声に耳をかたむけている。
 曲の内容は女神を称える聖歌。
 女神の誕生日を祝い、彼女の目の前で歌う。
 すごく緊張してしまう。女神のお姿を間近でみれるのは光栄で。だからいつもより熱のこもった歌になってしまう。
 願わくば、目の前の女神がいつもその笑顔で、幸せにいられますようにと。
 歌が終わる。
 ぱちぱちと女神が目の前で拍手をしている。その拍手はやがて漣のようにまわりにひろがっていき、最終的には大きな拍手がティアをつつみこんだ。ティアは恥ずかしいのと嬉しいのがないまぜになってしまう。
「素敵な歌でした。ティア」
 水のように透明な声にはっとしたティアは背筋を伸ばす。
「アクアディーネさま、お誕生日おめでとうございます!」
 そしてふにゃっと笑顔を浮かべれば、女神はその頭をなでる。ティアはそれがうれしくてしかたなかった。

「よっ! 食ってっか?」
 ニコラス・モラル(CL3000453)はトングで料理をトレイに乗せるミズーリ・メイヴェンに声をかけた。
「ええ、おかげさまで。貴方はどう? ちょっとだけ貴族の視線がやっかいよね。私なんて通商連からの出向だからよけいにね」
 すこしだけ苦笑してミズーリは答える。
「まあ、刺すような視線は感じるけど害意なんてねぇし、平気平気」
「お行儀よくしてればね」
「そうそう、あっちは勝手に監視して勝手に気ぃすり減らしてるんだ」
「いい気味だ、なんて?」
「いうじゃないか、お嬢ちゃんなんていうんだ?」
「んもう、ミズーリ・メイヴェン。こうみえても成人ですから」
「そりゃ失礼。まあ俺にとっちゃお嬢ちゃんだ。俺はニコラス・モラル」
「意地悪で能天気なニコラスさんっておぼえたわ」
「んー、能天気かい? そうでもないぞ? 深刻になって過去を後悔して考えても無意味だって思ってるのさ。
 だから明るくいく。取りこぼしたものを今更嘆いても拾いに行ける場所はもう遠いし手足は短い」
「そうね、ええ、そう思うわ」
 彼女とていろいろなことがあったのだろう。ニコラスの言葉に神妙に頷く。
「今までの俺の決断と行動は最善ではなかったかもしれない。それでも最善を選び続けていたと割り切るしかない」
「失礼しました。意地悪なニコラスさんと覚えます」
「意地悪なのはなくならないんだ? お嬢ちゃん」
「ええ、なくなりません! お嬢ちゃんって呼ぶ限りは」

 シャンバラよりミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)から女神へと連絡があったと、告げられた。
 アクアディーネはその端末を借りる。
「異郷でも信徒としての筋は通さないといけません。というわけでご生誕日おめでとうございます」
 ノイズ混じりのその言葉に女神は淡く微笑む。
「無事でなによりです。ありがとうございます」
「新しき年も良い年になるようにお祈り申し上げます。それと」
「どうしましたか? ミルトス」
「イ・ラプセルの外にでたことは良かったと思います。他国をみて自分の視野が狭いことが実感できました」
「こんな状況にならなくては他の国に向かうことなんてそうそうあるものではありませんから」
「結局のところ、考え方も好き嫌いも皆違うものなんですね」
「なにかがわかりましたか?」
「はい、いろいろな考えがあります。私がしらなかった考えもありました。その考えで好きなものもキライなものもかわってくるんだって」
「そう、ミルトスは世界が広がったのですね」
「はい。良き便りとお土産をもって、必ず、帰還します」
「はい、まっています」
「あの」
「はい?」
 そこでノイズが大きくなり通信が切断されてしまう。
「ありがとうございます。私に『闘わない理由』をくれた方」
 その言葉は届かなかった。それでも。伝えたかったのだ。あの優しい女神に。

「女神様っ、連絡中だった?」
 大切にかごの中にいれて育てていた小鳥が新しい世界をみつけた。女神はそれがうれしくて借りた端末を抱きしめたところでカーミラ・ローゼンタール(CL3000069)に声をかけられる。
「はい、ちょうど終わったところです」
「\おらとりお・おでっせい!/
 おたんじょーびおめでとーだよ!
 みんなでお祝い、たのしーね!
 前にリンゴが好きって言ってたから、お供え物持って来たよ!」
 ぴかぴかに磨いた赤いリンゴをもってカーミラはお祝いの言葉を伝える。
「まあ、きれいなリンゴ。ありがとうございます。カーミラ」
 優しくて大好きな女神のお礼の言葉がくすぐったくてカーミラははにかむ。
「お洋服かわいいね! すごく似合ってる!」
「ありがとう、カーミラのドレスもすてきですよ」
「お誕生日のお菓子、みて! 女神様のお顔かいてあってかわいいの! あ、でもたべれない」
「ふふ、私を頭からたべちゃってください。がおーって」
 そんな女神の冗談も可愛らしくてカーミラもがおーっと言い返す。
「あのね、神さまもいろいろあってたいへんそーだけど、女神さまが神の蠱毒で勝てるようにがんばるね!
 あれいすたーが胡散臭いこといっぱいいってるけどぜんぶぜんぶ解き明かしちゃうよ」
 胡散臭いの言葉に女神は笑う。ええ、胡散臭いわ、と。
 世界の秘密は今だ多い。それでも解き明かす意志は必ず叶うのだ。その表明をする幼い子どもが女神には愛しくてしかたなかった。

 
 お城のパーティもたのしいんやろけど。
 蔡 狼華(CL3000451)はアデレードの街で買い出しだ。年末、そしてあけて年始は狼華にとっても忙しいタイミングなのだ。
 それに通商連のお店をみるのは世界各地みたこともないようなものもたくさんあってそれだけでも楽しい。
「そうや、オラトリオて、プレゼントを送る習慣もあんねんな。マダムや店のみんなになんやこうたろうかな?」
 いろいろなものをみているうちに思いが口にでてしまう。
「おいおまえ」
 そんななか尊大な口調で呼び止められた。13番だ。
「うちの店で買っていけ」
「なあにぃ、お口悪い子やなあ」
「口は悪くても、商品はすごい、良品」
「そうなん? じゃあ、みせてもらうわぁ。あかいぼうしでもよかったんやけど、やっぱり普段遣いできるほうがええかなおもて、なんやおすすめある?」
「もちろん、このあったかい靴下。もふもふ」
「へえ、ええやん」
「買え」
「いらちやなあ。ほかもみていいやろ?」
「買え」
「圧つよいわぁ。 あ、このブローチ素敵やん?」
「それか。それは恋待鳥の羽根のブローチ」
「こいまちどり?」
「そう、鳥の中には自分の一生を添い遂げるものがいるそのうちのひとつが恋待鳥。ペアでもつと別れないっていう。けど、それを売った夫婦が3日後別れた」
「あかんやん」
「努力がたりなかった」
「なんやそれ。でもきれいやしどうしよう」
「人と一緒にいることにはお互いに努力は必要。もっていればその気持ちが大きくなる、かもしれない」
「でもわかれたんやろ?」
「それはそれ」
「おかしなこというわあ。ええわ。それちょうだい。みんなのぶんも」
「へい、いっちょおかいあげ」
 そういう13番の口調も表情もかわらない。もっと努力すべきはこの少女の表情筋の話ではないのか?
「誰かと一緒にいるのも努力かあ、ふうん」
 狼華は感じ入るものがあったのかもう一度その言葉を繰り返した。

「ムサシマル!」
 元気よくリサ・スターリング(CL3000343)が食事するムサシマル・ハセ倉に話しかけた。
「おー、リサ殿。食っとけでござるよ! タダ飯ほどうまいものはないでござる!」
「うん、そうだね! お肉! お肉!」
 前回とはちがって濃い色の礼服をかりた。多少の汚れは目立たないだろう。
「貴殿、本気でござるな?」
「もっちろん! ムサシマルとだと一緒にたくさん食べれる気がするの!」
「ほうほう? しからば、戦争でござるな? どちらが先にぎぶあっぷするかの!」
「ええっ?! う、うん、まけないからね?」
「拙者のほうが先に食べてるぶんはカウントするでござる」
「ずるい!」
 少女たちのフードバトルが勃発する。リサはそれがたのしくてしかたない。
 お肉にテリーヌにデザートに。たくさんたくさんお腹に詰め込む。もちろん味わうこともわすれない。
「あのね、ムサシマル」
「なんでござるか? 待ったはきかないでござるよ」
「ムサシマルと食べてるからこんなに美味しくてたのしいんだとおもうんだ」
「ぶはっ」
「ちょっとムサシマル大丈夫」
「なんでもないでござる!」
 そういって顔をそむけたムサシマルの耳はすこしだけ染まっていた。

「アクアディーネって神殿からでても大丈夫だったの?」
 ライカ・リンドヴルム(CL3000405)は、アクアディーネの玉座にまっすぐ大股であるいていく。もし誰かに殺されたらどうするんだ! 危険じゃないのか? すこしだけ心がいらつく。
「ええ、この日だけですけどね。皆さんの様子をみるのも楽しいですし、護衛のみなさんもいますから」
「それならいいけど、殺されたらだめだからね」
 お祝いの言葉のかわりにでてくるのは違う言葉。めでたいとはおもうけれどお祝いなんて絶対にいってあげない。
 なにげなく様子をみていれば沢山のひとに祝われるたびに名前をよんでお礼をいわれることがなんだかすごく羨ましく思えてくる。
 女神はアタシの名前をまだよんでくれていない。そりゃそうだ。アタシは彼女にお祝いなんていってないから。
 お腹がすいたとデザートをとりにいく。お肉とかは無理。全然無理。その間も女神をにらみつけている。もしアタシより先に女神を殺すやつがいたらだめだし。
 そうこうしているうちになんだかいたたまれない気分になって大きな歩幅でアクアディーネのもとにいく。
「アタシと踊りなさい! アクアディーネ! 一曲でイイから」
 あまりにも真っ赤な顔で手を差し出しているものだから。それがとても愛おしくて女神は笑って手をとる。
 やがてダンスの曲もおわりに差し掛かる。せめて、せめていわないと。でも意地っ張りが顔をだして言葉にはできない。口の形だけでおめでとうといったけれど伝えられてなんてない。なのに。
「ありがとうございます、ライカ」
 女神はアタシの名前を呼んだ。
「ダンスお上手なのね。いちどだけ足を踏んだのはゆるしてくださいね」
「べ、べつに。アンタが下手なだけ!」
 曲がおわる。手が離れる。それがさみしかったから精一杯の悪態をついてライカは走り去る。
 カーテンの後ろ。真っ赤になった顔を隠したい。そして呼ばれたことを思い出す。ライカの口角があがっていることに気づくものはだれもいない。

「ダンス、踊ってくれませんか?」
 レネット・フィオーレ(CL3000335)は淑女らしいおとなしいドレス姿でヨアヒム・マイヤーを誘う。
「ん、ちょっとまって、今のなかったことにして?」
 突然の否定にレネットはしょんぼりとした顔をする。
「違うちがう。ごほん、レネット、俺とダンスを踊ってくれませんか? ほら、女の子に誘わせるなんて紳士失格だろ?」
 ウインクしてヨアヒムは手を差し出す。
「は、はい! でもじつはダンスなんてさっぱりで……。リードお願いできますか?」
「もちろん。じゃあ、一番簡単なステップにしよう。ワンツースリー、ワンツースリー、このリズムでこう足をうごかす」
 ヨアヒムはレネットの手をとりリードする。思った以上にわかりやすく教えてくれたからレネットはすぐに覚えることができた。
 わんつーすりー、わんつーすりー。
 最初はステップを踏むことに必死だったが余裕もでてくる。だから聞きたかったことを口にした。
「……ヨアヒムさんってバーバラさんのこと、恋愛的な意味で好きだったりします?」
「ぶっ、いや、姐さんは普通に幼馴染。子供の頃俺の親に世話をしてやってくれっていわれて、今の今まで姐気取りさ」
 そのことばにレネットの顔が明るくなる。そうか、好きな人がいるわけじゃないんだ。
「そうだったんですか? じゃあ好きな人はいるんですか?」
「そうだな、目の前の女の子とか?」
 レネットの心臓が跳ねる。ドキドキと音がヨアヒムに聞こえるんじゃないかって思うと気が気じゃない。顔だって熱い。
「だめですよ」
「ん?」
「その気のないひとに優しくしたらダメなんです。だって、ヨアヒムさん優しいから、わたしみたいに勘違いしちゃうこがでちゃう」
「ふえええ?!」
 そこでヨアヒムはたたらをふんでついでにレネットの足を踏んでしまう。
「うわっ、ごめん」
「嘘です。ちょっと意地悪いいました」
 嘘じゃないけど。レネットは焦るヨアヒムの顔が可愛くて、それで満足してしまう。
「そっか、そうだよな! びっくりしちゃったよ」
「でも踏んだことは許しません。もう一曲だけ踊ってください」
「よろこんで」

 アダム・クランプトン(CL3000185)はアクアディーネに祝辞を述べるとアデレードに向かった。
 どうにも王城はあのお見合い練習を思い出して気まずくなる。
 からん、と音をたてて、見知った店にはいればアルヴィダ・スカンディナがいた。
「戦場以外で会うのは初めてだね」
「そうだったかい?」
 アルヴィダが酒を並べるテーブルにアダムは座る。
「っとしつれいしてよかったかな? 貴方とまたお話がしてみたくて」
「かまわないよ? あのきーきーうるさい金髪はいっしょじゃないのかい?」
「金髪……ジュリエットさんか。彼女は一緒じゃないよ」
「ふうん、そうかい、ふーーーーん」
「聞いてみたかったこときいてもいいかい?」
 アダムの頼んだミルクがテーブルに置かれたことを景気にアルヴィダにきいてみたかったことを聞く。
「いってみな? アタシは今酒飲んで気分がいいからね」
「キャプテンはなぜ海賊に? あなたの才覚ならもっと違う道だってあった。いや言いたくなかったらいいんだ。もしそういうの口にすることで貴女の心が少しでも軽くなればいいって」
 いいながら自分は何をいってるんだ! 貴女の心が軽くなればって何気取ってるんだ! はずかしい! とアダムの耳が赤くなる。
「奪われたからさ。国を、家族を。ヴィスマルクに。だから、奪い返す」
「奪われた?」
「ああ、根こそぎ、アタシの父様の国がね。蹂躙だった。そうなったのも力がなかったからさ。力のないものは奪われる。それが世界ってもんだ」
 それは違う、そういいたかった。力のぶつけ合いでは解決はしない。
 しかし目の前の女の怒りと憎しみの前ではその言葉は表面を滑るだけだ。
「湿っぽくなっちゃったねぇ。そうそう、アダム。女の身の上話をきくのは女を口説くときだけだよ?」
 その言葉にアダムは恥ずかしさが頂点を超え、一気にミルクをのみほすと、貨幣をその場において立ち上がる。
「あ!! 今用事を思いつきました! じゃあまた今度! オラトリオ・オデッセイ! いい日でありますように!」
 そういってアダムは真っ赤な顔で店を飛び出した。
「思いついたってなにさ」
 アルヴィダは口を膨らませてアダムが飛び出した扉を見つめた。
「女をくどくときだけだよ(キリッ)、って姐さん、処女のくせに気取りすぎ?」
「なんだよ! うるさい! キャプテンって呼べ!! バカ!!」
「これ、姐さんも恥ずかしくってそういったんだって」
 そんな海賊たちの喧騒が店から聞こえた。
 
 大勢のヒトの中にはいるのは少し慣れてきてはいるが、貴族や偉い人の近くだとどうしても気が遅れるし緊張もしてしまう。
 招待状はきたけれど、警備として務めることを選んだ。
 多分ごちそうを食べるたびにビクビクしてしまうし、そわそわして怪しくなってしまうのがいやだったのだ。
 それに誰かは警備の仕事をするひつようがある。
 きらきらしたパーティは自分には不相応だ。遠目にみえる女神様にお祝いはいいたいけれどお仕事を完遂することでそのかわりにする。
「アクアディーネ様、おめでとう」
「本人に言えばいいのに」
 その言葉に耳がビクリと跳ね上がった。誰かの足音は鋭聴力できこえてたけど。声を直接かけられたら別だ。
「わわ、バーバラさん。どうしたんですか?」
 トット・ワーフ(CL3000396)はバーバラにといかける。
「警備をしているみなさんに差し入れよ。はい」
 差し出されるのは銀のカップに注がれたスパイシーなホットワイン。
「あったまりなさいな。あとサンドもあるわよ。お肉のと卵の。どれがいい?」
「じゃあ、お肉ので」
「りょ。警備ありがとね」
「ううん、そうすることでなにごともなければいいとおもうから」
「あとでね、ヒトがすくなくなってきたら、アクアディーネ様のところつれていってあげるわアクアディーネ様も直接おいわいされたほうが嬉しいにきまってるわ」
「そうか、そうだね。ありがとう、バーバラさん」
「どういたしまして」

 レベッカ・エルナンデス(CL3000341)は実家からもってきたドレスに身を包みダンスホールに向かう。
 友人のサラ・ケーヒル(CL3000348)がダンスを教えてほしいといってきたのだ。
 先生、というガラではないけれど、手ほどきは一応うけている。一緒に踊りながら教えてあげればいいだろう。
 対するサラは前回貴族とダンスを踊ってその拙さを痛感してしまったのだ。恥ずかしい。
「先生おねがいします」
 借りてきた礼服に身を包み大きく頭を下げる。
「んもう、もっとエレガントに、ケーヒル様。レディならそんなふうに頭をさげるものではありませんわ。こうやって優雅にカーテシーを」
 サラは見よう見まねでカーテシーをすればレベッカは満足そうに頷いた。
「ではお手を。ケーヒル様は運動神経がいいですし、覚えればすぐに上手になるとおもいますわ」
「そう、そうですか? えっと、こう、こう、こう」
「その通り、おじょうずですわ」
 拙い足取りはやがて優雅なステップにかわる。
「エルナンデスさんの教え方がお上手だからです!」
「なら、代わりにお願いしてもよろしくて?」
「ええ、わたしにできることなら」
「その、ケーヒル様は料理がお上手と伺いましたので、今度わたくしに教えていただけないでしょうか?」
「お料理ですか? ええ、よろこんで!」
「あと、その……お名前でお呼びしてもかまわないかしら? サラ様と」
「ええ! もちろん、じゃあわたしもレベッカさんと。レベッカさん」
「えっと、なんでしょう?」
「なんだか嬉しくて! 呼んだだけです」
「サラ様ったら」
 少しだけ友人との距離が縮んだことがお互いにうれしくて、ふたりはしばらく意味もなくお互いの名前を呼びつ透けるのだった。

 孤児院の調理場でアリア・セレスティ(CL3000222)は汗を拭う。
 子どもたちのためのお菓子をたくさん作ったのだ。明日になって配ればきっと子どもたちは喜ぶだろう。
 その笑顔を想像して温かい気持ちになって、椅子にすわる。
 そしてつぶやくように名を呼んだ。
「アレイスター君、いますか?」
 しぃんとする調理場にはなんの気配もない。かつん、とブーツの音がした。振り向けばそこにはアレイスター・クローリーの姿。
「やあ、アリア・セレスティ。よんだかい?」
「まあ、呼びつけるのもアレでしたけど、これしか方法がわからなくて。
 アレイスター君、お誕生日おめでとう」
 いって、りんごケーキを渡せば、かの道化師はきょとんとした顔を浮かべている。
「ああ、今日僕の誕生日かぁ、わすれてた」
「あなたのための手作りですよ」
 アクアディーネ様と子どもたちのためのあまりではあるのだけど、嘘ではない。
「それはありがたい。もしかして僕にほれちゃったかにゃ?」
「はいはい、冗談ばっかり。お誕生日忘れないでください」
「まあ1600年も生きてりゃ忘れちゃうものさ、どうでもよくて」
「801歳じゃないんです?」
「ああ、そうだった。まあ些細な数字の差だね」
「倍を些細とはいいません。私達定命のものにとっては大事な概念なんです。誕生日って」
 誰のものであったとしても。そういってアリアはクローリーの目をみつめる。
「そうかい。今食べてもいいかい?」
「どうぞ、紅茶も用意します」
 アリアは聞きたいことはたくさんあった。けれど今はそれを聞かない、誕生日に質問攻めなんて無粋にも程がある。だから少しだけ彼と一緒の小さなお茶会を楽しもうと思う。
 
 呼ばれたからきた。
 カスカ・セイリュウジ(CL3000019)にとって宴というものはそんなものだ。損をするわけでもない。美味しい料理が並んでいる。それも無料で。
 その程度のお話。
 友人や誰かと話もするのも嫌いじゃない。貴族は避けてはいるが別に嫌いじゃない。ただ煩わしいだけだ。
 衣装だって前回と同じ。そんなものでいいと思っている。
「カスカ、どうしたの? 一人で」
「ああ、ヨアヒム。寂しく一人ですか?」
「失礼な! ダンスおどってきたよ」
「珍しい! 天涯孤独で、モテ要素零の貴方が!」
「カスカ、俺のことキライなの?」
「いいえ、そんなことはありませんよ。でも面白いとはおもっています。勘違いしないでくださいね。貴方に恋愛感情はひとつも、これっぽっちも、一切合切ございません」
「そこまで断言されるとむしろ気持ちいいね」
 ヨアヒムはがっかりと肩を落とした。その向こうにバーバラの姿がみえたので、ふとおもいたって、カスカはヨアヒムの腕をとる。
「ふぁっ?!」
「きにしないで、いい感じに私の肩をだいてください」
「なんで?!」
 それに気づいたバーバラはカスカにサムズアップを送る。ああ、だめだこれ。弟に彼女ができてからかうネタができたっていう悪魔の姉の顔だ。
「ちょっと、なに馴れ馴れしく肩にてをおいているんですか? 訴えますよ?」
「ええっ?! どういうこと?!」
 そんな乙女たちのやりとりに気づくこともなくヨアヒムはただ狼狽えるだけであった。

 シャンバラに潜伏するものたちは数日後の決戦の日を前にして酒宴を開く。
 ヨウセイの集落の果実酒をいくらかもってきてのささやかなものだ。
 張り詰め放しでは勝てる戦もかてるわけがないと誰ともなく提案されたそれは意外にもヨウセイたちにも受け入れられた。
「うっしゃあ景気づけじゃあ貴様等! 呑め!」
 非時香・ツボミ(CL3000086)は事前にクローリーも呼び出したのだが、今ヨウセイに顔をみせるつもりはないと断られた。
 なんだよ、クロちゃんのけちんぼー。
 思えば遠くにきたものよ、としんみりするのはシノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。
 異国でオラトリオを祝うことになるとは思わなかった。それもまた故郷のチビたちへの笑い話になるだろう。
「これこれ、乾杯をするべきだろう! ほらみんなカンパーイ!」
 シノピリカの乾杯の音頭に皆が手持ちのカップを持ち上げる。あちこちでカップが打ち合う音がする。
「今頃本国ではお祭り真っ最中なんだろうなあ」
「なんじゃ? 美女のお酌がきにいらんと?」
「んなこといってねーよ。こういうのもいいなあって思ったんだよ。そういえばボルカスが呑んでないぞ」
 しんみりとするザルク・ミステル(CL3000067)は速攻絡まれその矛先を傲慢騎士にむける。
 そんなボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)は酒を飲むパーヴァリ・オリヴェルに年齢を聞く。少し前にマリアンナ・オリヴェルには絶対に飲まないようにと強くいっていた。勧めることも皆に禁止していた。ほんとに真面目な男だ。
「僕は君たちのいうセイジン? とはよくわからないが二十才は超えているよ」
「ならストレス解消! 飲み給え!」
「そういうボルカス殿もじゃぞ」
 美女(シノピリカ)がなみなみとカップに酒を注いで廻る。
「オラトリオオデッセイ!」
 お祭りの催しはちがうかもだけどどこにでもあるものだ。アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)はエールがないことには業腹だがお酒が飲めるのはうれしいと思う。
「オラトリオオデッセイ?」
「あら、あなた達は祝わないの?」
 不思議そうに問い返すマリアンナに逆にアンネリーザは問いかけた。
「私達には神様はいないから。でもそういうお祭りがあるのはしっているわ。神様の誕生を祝うなんてごめんだけど、あなた達の神様になら祝ってあげてもいいわ」
「そう、ならぱーっと飲み明かしましょう!」
 少しくらいなら浮かれてもいいだろう。この宴ですこしでもヨウセイの皆と友誼を深めることができればそれにこしたことはない。
「そうだぞーーーマリアンナー。パーヴァリもー。兄妹なかよく! うぇーーーい」
 ツボミがアンネリーザとマリアンナの間から二人の肩を抱いて突っ込んでくる。すっかり出来上がった酔っ払いだ。
「不満を吐けわがままをいえー頼れ甘えれおっぱいもませろ。いいちちしてるじゃないかマリアンナー」
 わきわきと怪しげにてを揺らすツボミにマリアンナはドンびく。
「その、有り体にいわせてもらうけど、ツボミはどうかしちゃったの?」
「質の悪いよっぱらいね、ほら、マリアンナが迷惑してるでしょ」
「よいではないか、よいではないか」
 自分の肩とマリアンナの肩にかけられたツボミの手を剥がす。
「いいわけないわよ! バカみたいでしょ。でもこうやって皆でお酒を飲むのが楽しいのよ」
 マリアンナに向かってアンネリーザがそういえばマリアンナは頷く。
「私も大人になったら貴女とお酒がのみたいわ」
「ええ、約束しましょう」
 アンネリーザとマリアンナの間に小さな約束が結ばれた。
「こらーボルカス脱げー」
「脱ぐか!」
「しのぴりかのんでるかー?」
「ほいほい、ここの果実酒はうまいのお」
「よーし、汝ら罪なし!」
 呂律は回っているもののあきらかにべろんべろんの酔っぱらいのふりをして、ことさらはしゃいでいるのは彼らヨウセイたちの心を解きほぐすため。
「びじょをもてー」
 というかツボミの素かもしれない。
「全く、変な人たち」
「つれてきたのは君だ」
「そうだったわね」
 半目でマリアンナとパーヴァリが笑い合っている。そこにはギスギスしたものはない。それをみてツボミは笑った。嬉しかったからだ。
「で、エルエルはのまないのかい?」
 ザルクが杯を片手に端のほうにいるエル・エル(CL3000370)に話しかけた。
「他国でオラトリオオデッセイを迎えることになるなんてね」
「まあそれも悪くないだろ」
「そうね、そうかもしれないわ」
「で、呑め呑め! 呑んでしまえー」
「お酒ぇ?」
「成人してるだろう」
「そりゃそうだけど」
「ならばよし」
「あなた実は質の悪い酔っぱらいね。いいわ。こんなところで断ってもしかたないし。飲みやすいのをちょうだい?」
「よし! 呑め」
 こくり。臓腑を温めるような熱い酒精が体にしみわたっていく。
「あらおいしい」
「おお、エルもいけるくちか」
 ボルカスもお酒を注いでくる。
「ちょっと、もう、わかったから落ち着いてぇ」
 宴は続く。笑顔が並ぶ。ヨウセイも、イ・ラプセル人も変わらぬ笑顔で。
 いつのまにか酔いがまわって眠ってしまったものはシノピリカが膝枕をしている。ボルカスは毛布を一人ひとりにかぶせて父親ヅラをしている。一日一傲慢。そう言うがその行動を傲慢と思うものはいない。
「エルは寝たのか?」
「ああ、いい飲みっぷりで。こんなに弱いとはおもってなかった」
 ザルクの膝の上で寝息をたてているエルはあどけない顔で眠っている。これが200歳のおばあさんなのだとは到底思えない。
「そうだ、インクはあるか?」
「ああ、あるが」
 ふとおもいたってザルクはボルカスに声をかけた。ややあって渡されたインクを小指につけて顔に落書きをする。
「おい、あとで怒られるぞ」
 ボルカスはたしなめるが頬にかかれた言葉をみて、微笑んだ。
 なんとも傲慢な言葉だ。
「こいつ決闘裁判から先変だったからな。なんていうか勝手にいなくなるような」
 ザルクの独白をボルカスは黙って聞く。
「そういうのさ、こっちが困るんだよ。復讐とか、復讐が終わったらとかそういうの。終わったらなんだよ。そしたら新しい人生になるだろ。その先がない? ばっかじゃねえの。だったら残りすくない時間を楽しいことで埋めればいいんだよ」
「ザルク、お前も酔っているみたいだな」
「よってねえよ」
「酔っぱらいはそういう」
「俺はこいつに居なくなられるのはいやなんだ。こいつは俺の復讐の先輩だ。その後が不幸だなんてやってらんねえ」
 
「悪かったよ、疑ってよ」
「仕方ない、君たちにも君たちの立場がある」
 マリア・スティール(CL3000004)は遠巻きに終わりつつある呑み会を眺めるパーヴァリ・オリヴェルに声をかけた。
「ばかみたいな掟で妹に矢をつがえたんだとかおもってた」
 その言葉にパーヴァリは苦笑する。
「めんどくせー事情があったにしろ、こっちも本気で殴り飛ばしたヨウセイがいたし。あ、あいつにも詫がいれたいんだ! 名前おしえてくれ!」
「ストルツォ、だよ。安心していいよ。僕らは怒ってはいない。矢を番えたからには、同じように傷つけられるのは覚悟のうえさ」
「あともう少しであんたのことをクソアニキっていいそうに……っていいや、いまのなしで」
「その通りだとおもうよ」
 沈黙が二人の間におちる。
「……正直さ」
 先に口火をきったのはマリアだった。
「羨ましいところがあったんだよ。マリアンナはウチにきたときボロボロでさ。それでもアニキを心配してて」
「……」
「オレには兄弟なんていねえからな。だから兄弟で心配しあうっていうのが羨ましい」
「……」
「今はさ、マリアンナのアニキがちゃんとアニキしてたのがわかってよかったとおもってる。部外者の勝手な言い分だけどな」
「いいや、僕らにとって君たちは部外者じゃないよ。来てくれてありがとう。妹をまもってくれて、本当にありがとう」
「へへ、もう離れ離れになんかなるなよ」

 次の日エルは周りの人が自分の顔を見るたびクスクス笑われることに気づく。
 頭は痛いし、最低な気分。
 お水を飲もうと泉にむかう。泉が映し出す自分の顔にはなにか落書きがされている。
 だれよ! まったく。
 鏡文字でよみにくいけれどそこにかかれていた文字はへったくそでよれよれの文字。
『勝手に消えていなくなるなよ』
 誰がかいたのなんかすぐにわかる。
 ばかね。
 本当にばかね。私なんかのために。
 泉が映し出す自分の姿が頬からこぼれた雫が齎した波紋にに拡散され、文字は判別できなくなった。
 それでも。
 エルの心にはその文字は強く刻まれたのだった。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

特殊成果
『シルクのチーフ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:海・西園寺(CL3000241)
『あかいりんご』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)
『使い古しのマフラー』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:グローリア・アンヘル(CL3000214)
『恋待鳥の羽根飾』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:蔡 狼華(CL3000451)

†あとがき†

参加ありがとうございました。

MVPは復讐の魔女になにかを気づかせたあなたに。

オラトリオのお祝いサービスということで少し文字数は多めにしてあります。
基本的にはもっと短くなりますよ?
FL送付済