MagiaSteam
【デザイア!】UndergroundBattle!



●歯車騎士
 フリーエンジンの妨害が活発化している。
 つい数ヶ月ほど前はさしたる力のなかった反社会組織と言う認識だったが、ここ最近の活動はラジヲニュースを揺るがすほどである。ノウブルはしかめ面をし、亜人達は言葉なく歓喜に震えていた。
 スレイブマーケット開催後、その活動はさらに注目される。様々な場所から奴隷を『強盗』し、その存在をアピールしていく。神出鬼没の動きで歯車騎士団を翻弄し、スレイブマーケット運営者も頭を悩ませていた。
 そして警備担当の歯車騎士団も同様である。足取りの掴めないフリーエンジンの対策の為に、日夜会議を行っていた。
「次は何処が狙われるのだ!?」「奴隷マーケットなど星の数ほどあるぞ!」「もしかしたら奴隷商人が連中と通じているのかもしれん!」「外国売人はもう一度洗いなおした方が!」「スターゲージ・パイ一皿はいりました!」
 喧々囂々と続く会議。しかしそれはようとして進まない。当たり前だ。神出鬼没の相手の出てくる先を予想しようとしているのだから。情報不足の段階でそれに悩んだところで、正解が見えるはずがない。
「連中を押さえるなら、奴隷を連れて逃げる時が一番です」
 あまりの無駄に耐えかねて、一人の男が挙手と共に意見する。
「相応の戦闘力を有していても、足手まといがいればそれは激減する。逃げるルートを予測し、その先を押さえて包囲する。これが妥当かと」
「やれるのか? ランド四等」
「人数を与えていただければ」
 ラッド四等――『ランサー』ネッド・ラッドは敬礼して頷いた。
 逃げる場所の予測はついている。あれだけの数の人数を目立たずに逃がすルートは――地下だ。蜘蛛の糸のように張り巡らされた地下から『自分ならどうするか』を想像して作戦を組み立てる。
「ここだ」

●自由騎士
 奴隷解放を行ったフリーエンジン――こと自由騎士達は街の地下を走っていた。蒸気配管を通すために作られた空間で、太い配管の上を進む形で街の外に向かっていた。
「――追われている」
 気づいたのは誰だろうか。自分達の後ろから、横から、配管を走る音が聞こえてくるのだ。そして――
「そこまでだ奴隷泥棒。お前らは包囲されてるぜ」
 銛に似た蒸気槍を持つ男が前に出る。歯車騎士団の証である勲章を身に着け、配管の上を慣れた足取りで進んでくる。
 これから向かう西側配管と、今まで向かって来た東側配管。そして真横の北側配管。進むことが出来る道は、全て歯車騎士団が塞いでいる。足を踏み外せば、そこの見えない暗闇に真っ逆さまだ。
「大人しく捕まるなら、焼き印と首輪だ。抵抗するなら命はないと思え。まあ、女子供は慈悲ぐらいはくれてやるよ」
 言いながら槍を構える男。それを合図にして、歯車騎士団も武器を構えた。後ろに控えた歯車騎士団は、明らかにこちら側より多い。
 解放した奴隷達は諦念の表情で膝をつく。あれだけの数に勝てるはずがない、と。
 そんな折、マキナ=ギアを通じて自由騎士達に通信が入る。
<状況は把握している。三分ほどしたらそこから飛び降りろ。全員受け止めてやる!>
 なんでもソラビトを中心とした救出部隊が向かっているという。とにかく希望は見えた。後はこの状況を耐え抜くまでだ。
 自由騎士と歯車騎士団。蒸気の街の地下配管で、非公式にぶつかり合う――



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
他国調査
担当ST
どくどく
■成功条件
1.20ターンの間、戦線を維持する。
 どくどくです。
 変則HARD。やることは多いです。まあ、奴隷を見捨てれば楽なのですが。

 この依頼はアナザー設定の『ニコラス・モラル(CL3000453) 2019年07月28日(日) 18:42:21』の依頼から発生しました。
 名前のある方が参加することを強要しているものではありません。参加を確定するものでもありません。

●敵情報
『ランサー』ネッド・ラッド
 ノウブル男性。歯車騎士団。階級は四等。銛を投げるガンナーです。その武器の形状もあって、近接戦闘も得意です。拙作『【機国開戦】Jesus! 自由騎士、全滅!?』に出ていますが、認識としては歯車騎士団の一員で問題ありません。
 北側方向で道を塞いでいます。
 『ウェッジショット Lv3』『サテライトエイム Lv3』『コンフュージョンセル Lv2』『ホエールキラー(EX)』等を活性化しています。

EXスキル:ホエールキラー 攻遠貫2(50%、100%) 鯨の皮膚を貫通する鋭い一撃です。【防御無】【致命】【必殺】溜1

『ゴリラマッスル』コンラッド・ウォートン
 キジン(オールモスト)男性。歯車騎士団。階級は四等。機械腕で殴ってくる格闘家です。パワーファイターらしく、力で押してきます。
 東側方向で道を塞いでいます。
『影狼 Lv3』『龍氣螺合 Lv3』『鉄山靠 Lv2』等を活性化しています。

『ライトフェンサー』ライラ・ジェファーソン
 ノウブル女性。歯車騎士団。階級は四等。由緒正しいヘルメリアフェンシング使い。魔すら斬り返すと言われたジェファーソン流の正統伝統者。
 西側方向で道を塞いでいます。
『バーチカルブロウ Lv2』『リフレクト Lv3』『フルカウンター Lv3』等を活性化しています。

・歯車騎士団(×9~)
 階級は五等。新兵ですが、訓練済みの為強さはそれなりに。各四等の命令に従います。
 戦場外で待機しており、倒されれば1ターン後に倒れた数と同数が参戦します。
 軽戦士のランク1あたりを活性化しています。

●逃亡奴隷
 自由騎士達が奴隷商人から奪取した奴隷達です。だいたい10名ほど。後衛のさらに後に入る扱いです。
 自由になれるという希望は、歯車騎士団の登場で打ち砕かれました。捕まれば逃亡の罪で今まで以上の扱いを受けると知り、絶望しつつあります。絶望が一定ラインを超えると、身投げなどをして自殺します。
 戦闘の空気により3ターンごとに絶望が増し、PCが戦闘不能(フラグメンツなどで復活した場合は除く)になった時は大きく絶望が増します。
 また、歯車騎士団(五等)を倒すたびに絶望は減り、四等を倒すと大きく減ります。また呼びかけ等で減る可能性はあります。
 歯車騎士団は奴隷を攻撃するつもりはありません。自由騎士の足かせになるからです。

●戦場
 地下の蒸気配管の上。その三叉路。明かりは幸か不幸か歯車騎士団が大量のランタンをもってきています。
 配管の太さにより、空を飛ばずに横に並べるのは二名までです。配管から落ちれば、ただでは済まないでしょう(ノックバックなどで落ちたり落されたりすることはありません)。
 戦場は<北側><東側><西側>に分かれます。その三方向から囲まれた形です。それぞれの戦場に、最低でも一人は配置してください。誰もいない場合、歯車騎士団はその方向から雪崩れ込んで奴隷諸共一網打尽にします。そうなれば依頼失敗です。
 各戦場への移動は通常移動で行えます(移動後、その戦場の前衛後衛好きな場所に行けます)。各戦場へは配管などで斜線が十分に通っておらず、別戦場へスキルなどで干渉することはできません。全スキルも別戦場に届かないものとします。

大雑把ですが、

                 <西側>『ライラ』『歯車騎士団(×3)』
                         ↑
<北側>『ネッド』『歯車騎士団(×3)』 ← <自由騎士+奴隷>
                         ↓
                 <東側>『コンラッド』『歯車騎士団(×3)』

 と言った感じになります。

 この共通タグ【デザイア!】依頼は、連動イベントのものになります。この依頼の成功数により八月末に行われる【デザイア!】決戦の状況が変化します。成功数が多いほど、状況が有利になっていきます。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
3個  3個  3個  7個
7モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年08月31日

†メイン参加者 8人†

『イ・ラプセル自由騎士団』
シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『キセキの果て』
ニコラス・モラル(CL3000453)
『慈悲の刃、葬送の剣』
アリア・セレスティ(CL3000222)
『日は陰り、されど人は歩ゆむ』
猪市 きゐこ(CL3000048)



「ふっふっふ。耐久戦闘なら任せて貰おうか!」
「僕らの『希望(デザイア)』を傷つけさせやしない」
 西側の通路に立つ『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)と『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)。シノピリカは仁王立ちするように歯車騎士団の前に立ち、マグノリアは亜人を庇う位置で武器を構える。相手の挙動を見過ごすまいという強い視線で。

「Iaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!」
「アンタにしちゃあなかなか好条件じゃないか、お仕事だからか?」
 人間の可聴域を超えるか否かの叫び声をあげるのは北側通路の『空に舞う黒騎士』ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)だ。そして『その過去は消えぬけど』ニコラス・モラル(CL3000453)は相手の降伏勧告を皮肉るように言う。相手にその気がないことなど透けて見えるとばかりに笑みを浮かべた。

「温情で焼き印と首輪だなんて価値観の違いを感じるわね。女性や子供の扱いを勉強してくるといいわ!」
「その程度の数でフリーエンジンを捕らえられると思うな」
「まだゴリラのケモノビトの方が恐ろしいぜ。出直してきな」
「ここから先は生かせません!」
 東側に立つのは四名の自由騎士。瞳をローブで隠した『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)。逃げ道を塞ぐ歯車騎士団を鼻で笑うように言葉を放つ『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)。キジンの四等に挑発を行うウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。二刀を構える『死人の声に寄り添う者』アリア・セレスティ(CL3000222)。後ろに居る亜人達に不安を与えまいと意気揚々と声をあげ、内心の不安を押さえ込んでいた。

「状況を理解できない理想主義者のようですね。残念です」
「おいおい、これでも女性と子供には優しく扱ってるんだぜ。何なら閨で実演しようか?」
「んだとゴラァ! 歯車騎士団を敵に回したことを、牢獄で後悔するんだな!」
 西側、北側、東側の四等が自由騎士達の態度に言葉を返す。言葉こそ違えど、その意味は等しく『戦闘開始』だった。従う五等騎士団は武器を構えると同時に、軽戦士特有の強化を行う。
(自己強化……やはり歯車騎士団の権能は『戦闘前に強化を行える』所か)
(移動や攻撃を行わない所を見ると、行えるのは『自分に対する強化限定』のようだな)
 歯車騎士団との経験を重ねてきた自由騎士は、彼らが持つ権能がどういったものかを理解してきた。彼らが奉じるヘルメス。その性格と狡猾さ。それがにじみ出ている権能だ。合理的かつ、無駄のない一手。
 三方を敵に囲まれ、兵力差も圧倒的。自由騎士以外の誰もが歯車騎士団の勝利を信じていた。そして亜人達は暗い未来を想像する。これまで受けた以上の仕打ちを前に、命を絶とうとする気持ちが増してくる。
「大丈夫。僕達がついて居るから……信じて」
 そんな亜人達に、マグノリアが優しく声をかける。その言葉を信じるにはあまりにも状況が悪かったが、それでも衝動的に身投げをする事だけはとどまった。
 イ・ラプセルの自由騎士と、ヘルメリアの歯車騎士団。両国のオラクルが日光射さぬ地下でぶつかり合う。


 北側通路を塞ぐのは、『ランサー』と呼ばれた四等騎士率いる歯車騎士団だ。
「殺Suuuuuuuuuu!」
 怒りのあまりに人語ですらなくなったナイトオウルは、両手に武器を構えて大きく叫ぶ。所見の歯車騎士団はそれに圧倒されるが、武器を下すことはない。ナイトオウルはそれを見て獣のように身をかがめ、パイプを蹴って距離を詰める。
 怨嗟の力を魔力に変え、『偽聖剣「アスカロン」』と『偽聖槍「アスカロン」』に纏わせる。憎き者を喰らいたいという気持ちが形となり、黒のオーラが武器を包む。大上段から叩きつける一撃が、殺意と共に歯車騎士団に振るわれた。
「悪魔、槍、滅BOSU!」
「えげつないなぁ。亜人はしっかり鎖につないでおかないとな。逃げられないように」
「大した皮肉だな」
『ランサー』の言葉に苦笑するニコラス。この歯車騎士団はナイトオウルの狂戦士ぶりを揶揄したのだはなく、ニコラスが逃亡したことを責めているのだ。ナイトオウルに回復の術式を施しながら、ニコラスは『ランサー』の顔を見る。
「まあ、バレてるよな。海戦ぶりか、ネッド」
「マリオンの戯言は本当だったか。生きていたとはな、自由騎士。っていうか、本当に戻ってきたのか。ニコラス」
「ああ。取り戻しに来たぜ」
「朗報を悪報をくれてやるよ。兵站軍には入れてねぇ。お前の仕事を継いでもらってるからな。お前以上に血に塗れてるぜ」
「……そうかい。そいつは朗報と悪報だ」
 交わされる言葉。その言葉だけで十分とばかりに二人の男は動き出す。『ランサー』は銛を振るい、ニコラスは魔を紡ぐ。


 東側は激戦区となっていた。
「ここから先へは行かせない!」
 絶望を払うように声をあげるアリア。二本の刃を手に背後の亜人を守るように背筋を伸ばして立つ。『ゴリラマッスル』と背後に控える歯車騎士団。彼らに捕まればどんな目に合うか。その想像を振り払い、アリアは剣の柄を強く握りしめる。
 相手が動き出すより前に接近し、戦場をかけるアリア。二本の刃を変幻自在に動かし、回転するようにステップを踏み相手を困惑させる。相手を殺すのではなく、幻惑する舞。その姿はまさに美しい蝶の如く。
「あの人達には指一本触れさせません!」
「威勢がいいな。だがそれも何時だけもつかだな」
「無論最後までだ」
 歯車騎士団の挑発にアデルは迷わず言い放つ。だが苦戦は必至だという事も分かっている。目の前には訓練された軍属の兵士。こちらは亜人達を守りながらの戦い。戦う前から状況は圧倒的不利といえた――ただしそれは戦闘の勝利条件が相手の全滅ならば、だ。
 やるべきことを念頭に置き、アデルは槍を構える。足場のパイプをしっかりと踏みしめ、槍を強く握って前に進む。培った力、技術、そして経験。その全てを眼前の敵に向かって叩き込む。突き出された槍が、『ゴリラマッスル』の胸を穿った。
「力勝負といこうか。不得手とは言わせんぞ、ゴリラ野郎?」
「次のセリフは『フリーエンジンのキジンがどの程度か、試してやる!』ね!」
「フリーエンジンのキジンがどの程度か、試してやる! ……はっ!?」
 未来を見ることで『ゴリラマッスル』のセリフを読みあてるきゐこ。少しでもハッタリになればとローブの奥で笑みを浮かべる。未来を見ながら現在の術を構築する。二重のヴィジョンを脳内で整理しながらきゐこは思考を回していた。
 魔力で強化された瞳で戦場を見ながら、細かに練った魔力の矢を展開する。五秒後の世界、現在の世界。吐きそうになる程に複雑な視界のずれを押さえるように歯を噛みしめ、矢を放つ。きゐこの鋭い一矢が『ゴリラマッスル』の構えをほどく。
「どうよ。魔導を甘く見るとこうなるのよ!」
「聞いてはいたがやはり魔術使いか。国外から傭兵を雇ったか、奴隷泥棒!」
「おおっと、肉体派に見えて中々慧眼だな。俺達はヴィスマルクの傭兵団だ!」
『ゴリラマッスル』の推測にウェルスはとっさにそう叫ぶ。いつかはバレるだろうが、まだ自由騎士の存在を知られるわけにはいかない。信じてもらえるかはわからないが、情報の煙幕ぐらいにはなるだろう。
 足元のパイプでステップを踏むようにリズムを刻むウェルス。その音、その感覚。それ自体が術式の流れ。南方舞踏の海の踊り。それに魔力を介した術式が水流となって歯車騎士団の足を奪う。
「流石に四等を庇うぐらいの魔道対策は取るか」
「無論だ。歯車騎士団を侮るな!」
 敵も無能ではない。報告書から対策を立てるぐらいはやってくる。
 激しい攻防の音が、東側通路を支配していた。


「我が名はシノp……自由を愛する謎の女騎士、シノじゃ! 四等の徽章、恐らくは細剣の使い手……即ち、噂に聞こえたジェファーソン流の太刀筋と見た!」
 言いながら『ライトフェンサー』の前に立つシノピリカ。状況が許せば堂々と名乗りたいのだが、今は已む無し。使い慣れた軍刀を手に相手の意識をこちらに向けるように構えを取る。いざ尋常に勝負、と無言で訴える。
『ライトフェンサー』はシノピリカの構えに応えるようにレイピアを構えた。細い剣から感じる圧倒的な圧力。それを感じながらシノピリカは前に出た。交差する刃、繰り出される剣技。僅か数秒の間に互いの気迫がぶつかり合い、そして両雄同時に間合いを離す。
「良い太刀筋だ。異国の軍人剣術とお見受けするが、如何か」
「さてな。貴公こそ噂に違わぬ動き。魔すら断つとは偽りではなさそうじゃな」
「でも魔術が敵を滅ぼすだけのものと思わないでほしいね」
 マグノリアは言いながら背後の亜人と前に立つシノピリカを見る。冷静に。武器を手にして自分にそう言い聞かせる。大事なのは魔力でもない。継戦能力でもない。冷静に状況を見ることだ。そこから積み木のように勝利への道を積み上げていく。それが錬金術師だ。
 この場を突破されない為に重要なことは何か。考える間もなく、共に戦うシノピリカの継戦の力だ。マグノリアは慣れた手つきで生命を司る水を生み出し。シノピリカに纏わせる。生命力を活性化させる命の水。自分にではなく、防御の要である彼女にかけた。
「命は守る。『希望』は繋ぐ。それが僕の役割だ」
「錬金術師は理知的と耳にしましたが……残念です。噂は噂でしかなかったようだ」
 亜人を守ろうとするマグノリアに落胆するように『ライトフェンサー』がため息をつく。高い知識を使って無駄な事をしている。そう言いたげに。
 それがヘルメリアの『常識』なのだ。そうと分かっていても自由騎士達は納得できない。
 追い詰められた騎士、追い詰めた騎士。共に油断なくぶつかり合う――


 状況的に考えれば、自由騎士が取る選択肢は防戦である。相手が一気に攻めてこないとはいえ、時間が来れば退路が開ける状況で無理をする必要はない。――背後に逃亡奴隷がいなければ。
 絶望に顔を青ざめる亜人達。仮に希望を伝えたところで、持ちこたえられるかどうかなど分かりやしない。それが一般的な判断だ。防戦で耐える姿は、次はお前達がこうなると暗に示されているに等しい。
 故に自由騎士達は攻勢に出る。歯車騎士団に負けないという事を見せる為に。
「ちぃ! 思ったよりも抵抗が激しい……!」
『ゴリラマッスル』は四名の自由騎士を相手に少しずつ追い詰められていた。機械の剛腕で何度か押し返すも、そのたびに強い反撃を受ける。
「押し込め! 練度も勢いもこちらが上だ!」 
 アデルが大声をあげて、槍を振るう。声は味方と敵、そして背後の亜人達に向けての言葉だ。鼓舞と挑発、そして発破。絶望などしないというメッセージ。たとえ苦しくとも、一歩も引かないという気迫がそこにあった。
「ええ、まだまだ戦えます!」
 蛇のように伸びる刃を振るい、アリアが叫ぶ。変幻自在の軌跡は初見の敵を翻弄する。加えてアリア自身の三次元的な動きが相手に標準を定めにくくしていた。息を突く間もなく跳躍し、刃を振るうアリア。
「これでお終いよ!」
 きゐこの『緑鬼魔杖』から放たれた魔術の矢が『ゴリラマッスル』の胸部に突き刺さる。数度よろめいたのちに『ゴリラマッスル』は崩れ落ち、膝をついた。そのまま杖を歯車騎士団に向けたまま、威嚇するように魔力を込める。魔術の強さを示すように。
「よぉ、苦戦してるようだな」
『ゴリラマッスル』打破後、ウェルスは戦線を移動して北側で戦う自由騎士と合流する。継戦能力を高める為の回復役だ。ウェルス自身も東側通路で浅くない苦傷を受けているのだが、それを意に介さず笑みを浮かべた。
「Heeeeeermeeeeeees! Apoooooostaaaaaateeeee!」
 言葉にならない叫びをあげるナイトオウル。肉体の潜在能力で傷を無理やり塞ぎながら、剣と槍で歯車騎士団を蹴散らしていく。その身体にどれだけ槍や銃弾を喰らおうが関係ない。ただ異教徒を倒す。ナイトオウルはそれだけを行っていた。
「いや助かった。おじさん一人じゃ、流石に耐えきれない」
『ランサー』の槍に傷つき膝をつきながらニコラスが援軍に向かって笑みを浮かべる。因縁という事もあるが、回復魔術師を潰すのは基本とばかりにニコラスに『ランサー』の槍が集中したのだ。
「予想はしていたけど、簡単に突破はできないか」
 マグノリアは『ライトフェンサー』の牙城を崩すべく魔術を行使していたが、容易ではないと知って対象を五等兵士に変える。時間をかければ倒すことはできるが、そこに拘る意味はない。合理的に判断するのが錬金術師だ。
「大丈夫。我らを誰じゃと思うておる? 音に聞こえしフリーエンジンぞ! 悪名轟々どこ吹く風と、回すは自由な蒸気の機関! お主らも必ず自由の身にしてみせる!」
 機械の腕と軍刀を振るいながら、シノピリカが背後の亜人達に向けて鼓舞を行う。歯車騎士団から消して目を離すことなく、威風堂々と背中ごしに語りかけていた。不安などない。それを示すように刃を振るう。
 無論、自由騎士達も歯車騎士団がけして組し易い相手と思っているわけではない。剛腕、機械銛、王国剣術。三種三様の四等騎士が与えてくる傷は浅くはない。自由騎士達はフラグメンツを削られながら、攻防を行っていた。
 だからこそ――おかしい。
 違和感に気付いたのは『ランサー』だ。戦術眼ともいえる何かが相対する相手の異常な戦意に苛立ちを感じていた。普通なら押し切っている。精神論でどうにかなるものではない。否、精神論でいえば守られている奴隷達は既に心折れているはずだ。なのに――
(絶望していない……。違う、何かがこいつらを支えている?)
 亜人や自由騎士達を支える『何か』。それは『ランサー』では未知の領域。合理性を突き詰めるヘルメリア軍人にはけして理解できない方向の極地。すなわち、人の心の力。
「お前らは全員生きる。そうでなければ意味がない」
 ウェルスは歯を噛みしめ、魂を削るようにして言葉を紡ぐ。配管で視界が遮られ、十全な支援が届かない。だったら話は簡単だ。声自体、生きる意志そのものに支援を乗せればいい。
 それはここにいるもの全ての共通認識。『生きたい』と言う思いだけはたとえ機国だろうと妨げさせない。例えここがアウェーだろうが、ヘルメリアの力がどれだけ強かろうが関係ない。生命とは、そこにあるだけで奇跡であり希望なのだ。
 ここにいる全ての者に、生きる希望を。ヘルメリアの差別に叛逆を。叛逆の意志は自由騎士と亜人達に宿り、強い活力となって希望を生む。
「ほらデザイア達、俺たちはまだ戦えるぜ!」
『デザイア・ブロッサム』――それは亜人達に希望を与えた奇跡。日の指さぬ地下で花咲いたヘルメリアの亜人達が見た希望の光。その背中を、言葉を、血を流しながら戦う自由騎士達の姿を彼らは忘れない。そしてそれは他の亜人達に口伝され、立ち上がるための杖となる――
「来ました! 皆さん飛び降りてください!」
「下に我らの仲間が網を張った! 飛び降りてそこから逃げるんじゃ!」
 時間を測っていたアリアとシノピリカが叫ぶ。その言葉を受けて、亜人達は飛び降りていく。殿を守るように最後の亜人が飛び降りるまで、自由騎士達は歯車騎士団をけん制していく。
「二重の逃亡経路を要していたのか! ……いや、非効率だ。ならばあらかじめ待ち伏せが予測されていた……?」
「さて、どうじゃろうな。我らフリーエンジンの頭脳は伊達ではない、とだけ言っておこうか」
『ライトフェンサー』の言葉にシノピリカが答える。水鏡のことまでわかりはしないだろうが、けん制しておくに越したことはない。
(まあ、フリーエンジンの頭脳が伊達じゃないのは確かじゃしな。後で菓子折りもっていこう)
「あばよ。いつかその顔に一撃見舞わせてやるからな」
「そうやって逃げ続けてな。その逃げ腰をアイツに聞かせて、酒の肴にさせてもらうぜ」
『ランサー』に向かって手をあげてから飛び降りるニコラス。ニコラスの頭の上から、『ランサー』の負け惜しみが聞こえてきた。少し耳が痛いが、今はこれでいい。生きていれば希望は繋がる。
「忘れるな。これがフリーエンジンの戦い方だ。神出鬼没の動き、歯車騎士団には捕えられまい。
 俺達はヘルメリアに住む全ての亜人を救ってみせる。奴隷制度をぶち砕いて、こんな国をぶっ潰してやる!」
 最後に残ったウェルスが歯車騎士団に聞こえるように叫ぶ。それは宣言でもあり、決意でもあった。胸糞悪い社会をぶち壊す、反逆の意志。
 ――少なくともこの場で戦った歯車騎士団は、それを戯言と受け流すだけの余裕は持てなかった。


 その後、無事逃亡を果たしたデザイア達はフリーエンジンに迎えられる。
 絶望的な状況にあって、自らの命を絶つことなく希望を見たデザイア達。彼らは肉体的にも精神的にも癒されていた。過去の傷を受け止めながら、同時に自由騎士の戦う姿に希望を感じていた。
 彼らなら、本当にこの奴隷制度を壊してくれるかもしれない。
 今、ヘルメリアに住む亜人の心に、希望の華が確かに開いていた。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『自由を愛する謎の女騎士シノ』
取得者: シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『帰ってきた工作兵』
取得者: ニコラス・モラル(CL3000453)
『黒き狂戦士』
取得者: ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)
『剛槍の』
取得者: アデル・ハビッツ(CL3000496)
『幻想錬金術師』
取得者: マグノリア・ホワイト(CL3000242)
『デザイア・ブロッサム』
取得者: ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『二刀、地下に舞う』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『機兵貫く魔矢』
取得者: 猪市 きゐこ(CL3000048)

†あとがき†

どくどくです。
まさかの全員生還……だと!?

以上のような結果になりました。
宿業改竄のみならこの結果にはならなかったでしょう。布陣や声掛けなどベースとなる作戦も連携も含めて見事なモノでした。見事、大成功です。
MVPは我が身を削ったライヒトゥーム様に。死亡者0はその覚悟の上での結果です。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済