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【機神抹殺】Dawn! 時代の夜明けの鐘が鳴る!




 1820年3月某日。ロンディアナの今日の天候、晴れ。スモッグから陽光が射すこともあるでしょう。
 所により、移動城塞が降ってきますのでご注意ください。

●アイオロス
「これは」
『ロンディアナ』に蒸気を供給しているアイオロス・ルーム。そこに繋がれている『蒸気王』はわずかな微震と音に気付く。永く王を務めてきた経験が、それを危険だと知らせている。すぐに対処しなければ、手遅れになる毒だと。
 だが『蒸気王』は動くことが出来ない。仮に動けたとしても、ここを離れれば『ロンディアナ』は止まる。そうなれば仮に侵入者を排したとしても『ロンディアナ』に繋がれたヘルメリアの民はいずれ蒸気不足で枯渇するだろう。
「――王!」
 動けない王の前に、蒸気鎧をまとった騎士達が現れる。ロンディアナ防衛に努めていた歯車騎士団だ。既に国は形骸化しており、ヘルメリアの騎士職もなんの特権もないお飾りだ。
「すでに余は王ではない。この『ロンディアナ』を動かす部品にすぎぬ」
「いいえ! 我ら歯車騎士団にとって王はただ一人! 国滅ぶまで、我らの車は王と国民の為に!」
 それでも彼らは騎士であろうと努めた。神ではなく、王に仕えて国を守る騎士として。
「……わかった。残存部隊を三つに分けよ。二チームは調査と避難誘導。残りは重要拠点の防衛」
「はッ!」
 かくして、歯車騎士団最後の作戦が発令する。

●ディファレンスエンジン
「――侵入者、イ・ラプセルと確定」
 ヘルメリア議会の三頭、ディファレンスエンジン。
 それは『事実』を歯車に組み込み、あらゆる過去を蓄積して現代を予測するモノ。後の時代に『コンピューター』と呼ばれる原型。
 それは確かにイ・ラプセルの侵入を確定した。そして彼らが取りうる行動と、その対策も導き出す。打ち出された城塞を確保し、そこにいる者達を人質にする。彼らの過去の戦闘データから推測するに足は止まり、最悪意見は二分される。任務を優先するものと仲間を助けようとする者。勢力が割れれば隙が生まれる。
「それも悪くないけど……折角の知識を使わないのはもったいないわね。動くことが出来ないんだから、楽しめる時は楽しまないと」
 ディファレンスエンジンに融合した幻想種が意見する。
 ナーガラージャ。ナーガの王にしてドラゴンに比喩されるほどの幻想種。天候を操り、再生と永遠を意味づけられた蛇。その知識がディファレンスエンジンに吸収され、そして意識を持つ。
「――同意。融合体の精神的安定を優先し、作戦を変更」
「来なさい、イ・ラプセル。魔に満ちた時代の知恵と機械の融合、存分に味わうがいいわ」

●ヘルメス
「自由騎士……オラクルの侵入……!」
 ヘルメスが事態を把握したのは、『ティダルト』の着弾からしばしの時が経ってからだった。
 神は死なない。神を殺せるものはいない。巨人であれドラゴンであれ、唯の力や魔では神を傷つけることはできない。故に神は永き間、世界に在ることが出来たのだ。唯一の例外、オラクルの存在を除いて。
 だがそれも、ヘルメスを恐怖させるには至らない。
「単に『殺せる』というだけで、この『トリスメギトス』を突破できるわけではない。無駄な足搔きだと知るがいい」
 ヘルメスは言って緑色の『板』を空間のポケットから取り出す。ヘルメスの指先が板に触れれば、緑色に発光した板から無数の文章が浮かび上がり、ヘルメスを守るように蛇のように絡みつく。
「クローリーにも秘してた『エメラルド・タブレット』。まさか対■■■■用の武器をこんな所で使うことになろうとはね。屈辱だよ、イ・ラプセル」
『トリスメギトス』『エメラルド・タブレット』……神が神との戦争の為に作り出した個人兵装。デウスギアとは異なる対個人の概念兵器。
「神に逆らう愚か者には、絶望を与えなくてはね」
 自らを殺しに来るモノに、万全の体制で挑むヘルメス。そこに油断はない。慢心はない。在るのは神という人の上位存在としての矜持。愚かなる存在に鉄槌を、分をわきまえぬ生物に絶望を、ヒトに永遠の隷属を――
 灰色の機神、ヘルメス。生物を弄び、時代を狂わす存在。ヒトを平等に下に見る愛なき神。それが動き出す。

●自由騎士
『ティダルト』をキュニョーの砲車で撃ち出し『ロンディアナ』に叩き込む――
 当たり前と言えば当たり前だが、高速で移動する『ロンディアナ』に命中させるという事は移動――というよりは射出である。空気抵抗を考慮して『ティダルト』全体に回転をかけて撃ち出された――中はかなりの加速がかかり、着地時にはそれなりの速度と衝撃が生まれる。
「あははー。今まででも3番目ぐらいに匹敵する酷い移動でしたねー」
「Good! 流石イ・ラプセルの技術屋! ゴルドスト火山からの脱出よりはマシな状況だった!」
 耐衝撃用に様々なクッションや装甲を用意してあったこともあり、『フリーエンジン』勢は割と平気な顔をしていた。
「――以上が事前に『水鏡』から得た情報です」
 同じくフリーエンジン勢の『先生』は『ロンディアナ』打破の詳細を事細かに説明する。
「私達はココで防衛しながら支援に徹するわ。『ティダルト』のことは気にせずに戦ってちょうだい」
「No Problem! どうしようもなくなったら敵を巻き込んで自爆するからな!」
 それはどうなんだろう、と思う自由騎士だがやるべきことは確かに一つだ。障害を排し、ヘルメスを倒す。その為にここまで来たのだ。ヒトに格差をつけることで発展した蒸気の国。その暗雲を晴らし、新しい朝を迎える為の戦い。
 その火ぶたが、今切って落とされた――!



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
大規模シナリオ
シナリオカテゴリー
S級指令
担当ST
どくどく
■成功条件
1.『アイオロス』の打破
2.『ディファレンス・エンジン』の破壊
3.20ターン以内にヘルメスを殺す
 どくどくです。
 ヘルメリア最後の決戦です。時代の夜明けを迎えるのは果たして――

●説明っ!
 ヘルメスの『人機融合装置』により生物と融合した都市『ロンディアナ』。これを止めてヘルメスを倒すには三点を抑える必要があります。
 一つ、『ロンディアナ』全体に蒸気供給を行っている『アイオロス』。
 一つ、『ロンディアナ』の頭脳ともいえる『ディファレンス・エンジン』。
 一つ、ヘルメス本人。
『トリスメギトス』により生命を分断したヘルメスは、このどれかが無事である限り『死』を免れます。故に三カ所同時攻略が必須となり、同時に『エメラルド・タブレット』によりその防衛力が強化されています。

●敵情報
★【A】
『ロンディアナ』に蒸気供給を行っている『アイオロスの球』がある場所です。20名近くの蒸気騎士が防衛しています。『アイオロスの球』は機械に繋がれ、身動き一つとれません。

◆蒸気騎士(×20)
 蒸気で動く鎧を着た騎士です。現代の技術でいうパワードスーツ。身長2mほど。
『チェシャキャット』と呼ばれる蒸気で動く回転鋸(近距離 二連)と、『マーチラビット』と呼ばれる炸裂弾(遠距離範囲 三連撃 バーン2 ショック 使用時、回避にマイナス修正)を使ってきます。
『アイオロスの球』の効果により、HPが毎ターン回復していきます。

◆『アイオロスの球』(×1)
 赤く光る球体の中に、一人の女性が浮かんでいます。会話はできますが、説得は意味を成しません。最後の最後まで――自らの負けを知りながらも――国と神を守ろうとします。
『トリスメギトス』の一つであり、これを破壊しない限りヘルメスを殺すことはできません。

・『下なるものは上なるもののごとく、上なるものは下なるもののごとし』
『エメラルド・タブレット』によるアイオロスにかけられた防衛式です。3ターンごとに『リフレクト50』と『カウンター50』が入れ替わるように付与されます。

★【B】
『ディファレンスエンジン』がある場所です。20m四方高さ10mほどの部屋で、その壁一面全てが機械で埋め尽くされています。
 ヘルメリア議会における一角にして過去の情報から現代を演算する機械で、それが幻想種『ナーガラージャ』と融合しています。見た目は部屋全体を覆いつく機械で、幻想種はその意識が取り込まれている状態です。
 高い計算能力と天候を操る魔術、部屋自体を尾に変形させて攻撃するなど圧倒的な暴威を振るいます。逃げる事はいつでも可能ですので、いったん部屋から出て戦闘圏外で回復するという戦法は取れます。
『トリスメギトス』の一つであり、これを破壊しない限りヘルメスを殺すことはできません。

攻撃方法
機械尾  攻遠範 部屋の一部を蛇の尾に変形させて、鞭のように打ち据えてきます。
機械牙  攻近範 機械が蛇の顔に変形し、噛みついてきます。【致命】【ポイズン2】
らくらい 魔遠全 激しい稲妻が室内で荒れ狂います。【パラライズ1】【溜1】
ねっぷう 魔遠全 乾いた風がそこにいる者の体力を奪います。【バーン3】
おおゆき 魔遠全 寒波が竜巻となって吹き荒れます。【ウィーク2】【スロウ2】
大蛇の胃  P  この部屋自体がナーガラージャの胃袋。この戦場に居るものはターン毎にHPとMPが50減少します。
演算能力  P  積み重ねた経験と知識がヒトの弱点を知る。高CT所持。

・『太陽はその父、月はその母、風はそれを胎内に運び入れ、地はその乳母である』
『エメラルド・タブレット』によるディファレンスエンジンにかけられた防衛式です。循環する流れが不利益を流します。BSが付与された時、HP50を消費して打ち消します(BSが三つ以上乗っても、無効化される先にHPが消費されます)。

★【C】
 ヘルメリアの神、ヘルメスの座です。人間の青年型をしており、手には緑色に発光する『板』を持っています。『板』は現代の知識で言えばタブレット程度の大きさで、そこから派生する文章がヘルメスを守るように展開されています。
 オラクルの攻撃で神を殺すことは可能ですが、ヘルメスは『トリスメギトス』と呼ばれる秘術で命を三つに分けています。『アイオロス』『ディファレンスエンジン』を打破しない限り、この場のヘルメスを倒しても滅ぼすことはできません。

攻撃方法
『地を火から、微細なものを粗大なものから、非常なる勤勉さで丁寧に分離するがよい』
攻遠全 神による力の分離。ダメージに対象の<100-「現在のフラグメンツ」>を5倍しただけの追加ダメージが乗る。

『それは地から天に昇り、ふたたび地へと降って、上位のものと下位のものの力を受けとる』
魔遠全 循環する生命の攪拌。『この戦場で戦闘不能(死亡含む。ドラマ復活など戦闘不能を回避した場合は除く)になったキャラの数』に応じて、追加ダメージが乗る。

『その力はすべての力を凌ぐ。それはあらゆる精妙なものにも勝り、あらゆる堅固なものをも穿つからである』
P  ヒトの技巧や力のみでは突破できぬ領域の展開。プレイング文字数200文字以下のキャラクターからの攻撃を無効化します。

『太陽の作業についてわたしの語ったことは完遂し畢る』
P  力は満ち、ヘルメス・トリスメギトスは全世界の哲学の三部を具する。21ターン目の開始時に自動発動。フラグメンツ、ドラマ復活、スキル等を無視して、この場にいる全員を強制的に戦闘不能にします。

●支援行動
『ティダルト』から各戦場に支援が飛びます。
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フィールド効果:フレイムエッグ
『ティダルト』からの支援攻撃です。弾丸を射出します。
6ターンの間、敵一体にランダムで【バーン2】を与えます。7ターン目に射出機が自爆します。

フィールド効果:守れ、フランケン!
『ティダルト』からの支援です。メアリーが作った蒸気人形が皆を守ってくれます。
この戦いの間キャラのレベル×10点の追加HPが付与されます。この追加HPは回復できません。ダメージは追加HPから減少され、0になれば破壊されます。オーバーしたダメージはキャラが受けます。

フィールド効果:偽エイト・ポーン
『ティダルト』からの支援です。先の戦いで鹵獲したプロメテウスの兵装をニコラが改造しました。
6ターンの間、敵全体のFBが5上昇します。7ターン目に自爆して壊れます。

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●場所情報
便宜上戦場を【A】【B】【C】に分けます。プレイングの冒頭もしくはEXプレイングに行く場所を記載してください。書かれていない場合、ランダムに割り振ります(人の少ない所に行く、『特定のNPC』を殴る、など書かれてあってもです)。
 他戦場への移動は時間的かつ距離的な問題で不可能です。

●決戦シナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼相当です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『アクアディーネ(nCL3000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。

 皆様からのプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
5個  5個  5個  5個
11モル 
参加費
50LP
相談日数
9日
参加人数
56/∞
公開日
2020年03月27日

†メイン参加者 56人†

『みつまめの愛想ない方』
マリア・カゲ山(CL3000337)
『イ・ラプセル自由騎士団』
シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『キセキの果て』
ニコラス・モラル(CL3000453)
『ペンスィエーリ・シグレーティ』
アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)
『永遠のアクトゥール』
コール・シュプレ(CL3000584)
『日は陰り、されど人は歩ゆむ』
猪市 きゐこ(CL3000048)
『我戦う、故に我あり』
リンネ・スズカ(CL3000361)
『トリックスター・キラー』
クイニィー・アルジェント(CL3000178)
『鬼神楽』
蔡 狼華(CL3000451)
『戦場に咲く向日葵』
カノン・イスルギ(CL3000025)
『水銀を伝えし者』
リュリュ・ロジェ(CL3000117)
『天を癒す者』
たまき 聖流(CL3000283)
『薔薇色の髪の騎士』
グローリア・アンヘル(CL3000214)
『stale tomorrow』
ジャム・レッティング(CL3000612)
『復讐を終えた死霊術師』
アルミア・ソーイ(CL3000567)
『Who are You?』
リグ・ティッカ(CL3000556)



「アイタタタ。作戦に文句はないが、もう少し優雅に着地できなかったのか……」
 体をほぐしながら『ティダルト』から出てくるキース・オーティス(CL3000664)。周りの状況を見まわし、そして武器などに不具合がないかを確認する。幸いにして水鏡で見聞きした状況と変わりはない。
「私はヘルメスの極大攻撃に備え、予備戦力として控えておこう。もしあの攻撃が発動したら、その後にヘルメスの座に向かう」
 言ってキースは『ティダルト』の防衛に回る。ヘルメスの攻撃がどこまで届くかが分からない以上、ここで防衛に努めるのが最も効率がいい。あらゆる状況を想定して、それに対する布石を打つ。それがキースと言う自由騎士だ。
「無論、杞憂であるに越したことはない。頼むぞ」
 そんなキースの声に弾かれるように自由騎士達は作戦を開始する。

●アイオロスの球Ⅰ
「今こそ雌雄を決するとき! 来るがいい歯車騎士達、我が名はシノピリカ・ゼッペロン!」
 サーベルを掲げ『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は王を守る歯車騎士団の一人に迫る。イ・ラプセルとヘルメルアの決戦。もはやヘルメリアは国としての形を維持していないが、それでもこの戦いは二国の戦いと認識していた。
「勇ある者は来るがいい! 機国の騎士の力、我に見せてみよ!」
「ええ。国を守る騎士ならば、最後まで立ちはだかるでしょう」
 シノピリカの言葉に頷くフリオ・フルフラット(CL3000454)。同じ騎士だからこそわかる相手の気持ち。たとえ起死回生の策などなくとも、最後の最後まで国と王を守るために戦う。不器用なのかもしれないが、それが騎士という生き方なのだ。
「騎士として、真正面から打ち砕かせていただきます!」
 その心意気に応える為にも、フリオは真っ直ぐに敵陣に向かう。ヘビィブレードを構え、その重量を殺すことなく大きく振り回す。風圧と重量、そしてフリオの力と技量が
蒸気騎士のバランスを崩す。生まれた隙を逃すことなく自由騎士は攻め立てた。
「油断せずに行きましょう! 彼らは侮っていい相手ではありません!」
「うむ、王を守る騎士ならばその実力は相応たるもの。けして油断などせぬ」
 シノピリカの言葉に追うように頷く『背水の鬼刀』月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)。何かを守る相手は、けして弱くはない。それは実力的な面ではなく、精神的な面だ。最後の最後まで折れることない戦い方は、決して侮っていい相手ではない。
「守りたいという気持ちに差異はない。ヨツカはヨツカの守りたいモノの為に刀を振るう。汝らは汝らの守りたいものの為に銃を撃つ。ただそれだけだ」
 もはや意味をなさない王と騎士。だがヨツカはそれを貶すような真似はしない。真っすぐ踏み込み、刀を振るう。騎士の回転鋸とヨツカの刀が交差し、火花が散った。顔は蒸気鎧に隠れて見えないが、ヨツカは相手の鋭い意志を確かに感じ取っていた。
「ヨツカたちはお前らの代わりにお前らの神を倒す。もうヘルメリアを苦しませるな」
「終わりこそ花。あんさんらもきばりぃや」
 二刀を構え『艶師』蔡 狼華(CL3000451)が薄くほほ笑む。一人の王と二十名の騎士。ヘルメリアに残った最後の抵抗。蒸気国家と囃し立てられていたが、滅びる時はまさにあっけないものだ。
「ご機嫌麗しゅう『蒸気王』。サロンシープのロウファ・ツァイと申しますぅ。どうぞご贔屓に」
 一礼した後に狼華は刃を振るう。舞うようにリズミカルに、それでいて刃は的確に人の急所に向かって奮われる。足回り、腕の振るい方、全てが計算しつくされた動き。人を殺すと同時に美しさを追求する舞の動き。狼華の動きはその極みともいえた。
「まあ、あんさんらはこれで見納めやさかい。しっかり眼にやきつけぇや」
「そこどきぃ! うちの邪魔するんやったら、いてまうで!」
 機械の足を振るいながら『カタクラフトダンサー』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)は叫ぶ。本当は事の元凶ともいえるヘルメスを倒しに行きたかったが、三カ所同時攻略のこともありアイオロス対応に回ったのだ。
「邪魔するんやったら、これでもくらいや!」
 全身蒸気兵器の蒸気騎士の攻撃をかわしながら、ステップを踏むように機械の脚で斬撃を加えていくアリシア。空中を飛び回るような動きをしながら、隙あらば蹴りを加えていく。素早く、そして正確に。機械の脚が戦場を踊るように駆け巡る。
「うちの蹴りは、軽くないで! わからんのやったら教えたるから、かかってきぃや!」
「そうだ、かかってこーい! にゃあああああああああああ!」
 言って叫ぶ『にゃんにゃんにゃん↑↑』スピンキー・フリスキー(CL3000555)。咆哮するように叫ぶと真っすぐ敵陣に向かって武器を振り下ろす。そこに宿っているのはヘルメリアに対する怨みではない。ただ敵を倒すという闘志のみがあった。
「俺は負けんぞ! どんどんかかってこぉぉぉぉぉぉい!」
 挑発するように叫び、自らに気合を入れていくスピンキー。熱く叫び、そして攻撃を繰り返す。戦争に勝つとか、神の蟲毒とかは関係ない。スピンキーがそうしたいから戦うのだ。自分の心に忠実に、そして真っすぐした心で拳を振るう。
「みゃおおおおおおおおおおおん!」
「個人的には王が動けなくなって手合わせ頂けない状況は若干残念ではありますが」
 本当に残念そうに『我戦う、故に我あり』リンネ・スズカ(CL3000361)は呟く。戦争時に見せた剣技はもう見ることが出来ない。それは非常に惜しくはあった。だが状況は楽観できない。ヘルメリア最新鋭の蒸気騎士が不退転の覚悟で挑んでくるのだから。
「戦線維持は任せてください。ああ、前に出ていいなら出ますよ。その方が楽しめそうです」
 舌で唇を濡らしながらリンネが言う。ヒーラーとしての役目を忘れるつもりはないが、戦っていいなら戦いたいというのが本音だ。滾る血を押さえ込みながら回復の術式を行使していく。
「隙あらば前に出ることも考慮しましょうか。私はヒーラーですが、頑丈でして。むしろそれで仲間を守れるなら本懐なのやも知れませんね」
「アチラ防戦。ダカラ包囲、甘イ」
『竜天の属』エイラ・フラナガン(CL3000406)は言いながら走り回る。遠距離攻撃をするのに適した位置を探し、足を止めて撃ちはなる。そして相手の視線から逃れる意味も含め、すぐに場を移動して新たな狙撃場所を探す。その繰り返しだ。
「出来るダケ沢山の敵狙ウ。コレ戦争。ソウ、戦争」
 自らに刻むように、言葉を繰り返すエイラ。これは戦争だ。高みの見物を決め込むことなどできやしない。皆が当事者で、皆手が汚れるのだ。そこから逃げる事はしない。この矢も、この手も血に塗れている。だからこそ、言える言葉がある。
「エイラは……この国。滅ぼス。すル。ソコから、逃げナイ」
「そうね。でもだからこそやれることもあるわ」
 スナイパーライフルを撃ちながら『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)は頷く。国は滅んでも人は残る。イ・ラプセルはヘルメリアの人間を皆殺しにするような国ではない。人が残るのなら、未来は見いだせる。
「あそこにいるのは二百年間アイオロスに繋がれた少女よ。彼女を、救えれば!」
 アンネリーザの視線の先には、アイオロスの球の中で胎児のように浮いている少女がいた。蒸気機関の知識で彼女を救うことが出来れば。だがその余裕はない。そして何よりも、状況がそれを許さない。
『無理だ。トリスメギトスに余が含まれる以上、汝らの目的と余の命は共存できない』
「っ!?」
『蒸気王』の言葉にアンネリーザは絶句する。彼女を救うという事はヘルメスを生かすことと同義。故に、彼女は救えない。
「ヘビーだね。戦いが終わったあとにデートでもお願いしようと思っていたんだが」
『蒸気王』の言葉に肩をすくめる『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)。時代を変えたともいえる蒸気技術の知識。ヘルメリア復興にはその知識が必要だろう。そして何よりも、オルパの眼鏡にかなうほどの美女だ。心から惜しいと思う。だが、
「可憐な貴女にバッドエンドは似合わない。だが――」
 二本のナイフを振るいながらオルパは唇を噛む。ヘルメス打倒が譲れない以上、この乗除を救う手はない。そして新たな手立てを考える時間もない。強くナイフを握りながら、蒸気騎士に切りかかるオルパ。軽々しい言葉だが、そこには確かな重みがあった。
「……質の悪い神(おとこ)に振り回されて、苦労したろうにな。いい男に出会えれば、そんな人生を送らずに済んだかもしれないぜ」
『仮定に意味はない。今の結果が全てだ。だが――』
 その続きの言葉は、戦闘音に紛れて消える。機械のような王が紡ぎ出した結果以外の事に関する言及。それは誰にも聞かせず、消えた。
 王を守る騎士と、自由騎士の戦いはまだ終わらない。

●ディファレンスエンジンⅠ
 ディファレンスエンジン。それはヘルメリアが生み出した演算装置。過去の事例から現在を予測する機械だ。それは人機融合装置により幻想種ナーガラージャと融合していた。
「ヘルメス……ここを落とせば、神の座は三つに減るのですね」
 ディファレンスエンジンを前に『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)は頷く。ディファレンスエンジンはヘルメスの三位一体の一つ。それを滅ぼせば神の蟲毒はさらに進む。その際に、アレイスターはなんというのだろうか?
「……いいえ、それを考えるのは後です。いまはこの戦いに勝たなくては」
 ナーガラージャの生み出す天候に注意しながら、マリアは魔術を行使する。熱の風に対する耐性を施しながら、ナーガラージャの生み出す攻撃に耐えて魔力を解き放つ。凍える風が荒れ狂い、ナーガラージャに冷気がまとわりつく。
「ヘルメスの防御術式を逆利用させていただきます。氷の解除で体力を削られてください」
「もっとも、それを考慮したうえでの術式なんだろうねどね」
 部屋中から感じる生き物の気配を感じながら、そこに留まることを選択した『パツィフィスト・ゲベート』アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)。動きを止めずに攻め立てる。ヘルメスの術式はそれを為すための最適解なのだろうとアクアリスは睨んでいた。
「長期戦は不利なんだけど、ボクは攻撃手段をもってないんだよネ」
 肩をすくめながら、魔力を練り上げるアクアリス。イメージするのは視界の限り続く湖。水平線の彼方まで透明な鏡のような湖面。そこに水滴を垂らすように魔力を垂らす。広がる波紋のように、アクアリスの魔力が戦場の味方に伝わってその傷を癒していく。
「問題は魔力残量か。出来る事なら錬金術の補佐が欲しいネ」
「考慮しよう。部屋外に移動してもらうことになるが」
 ディファレンスエンジンの部屋の外で待つ『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)が言い放つ。もしもの為に室外で待機し、傷ついた仲間を癒していく算段だ。近づかないと施せない錬金術があるので、そればかりは外に出てきてもらわないといけないが。
(最悪、危険を冒して中に入ることも考えよう。あるいは私が攻撃に加わることも)
 瞳に魔力を通して、室内の様子を観察するリュリュ。天候を操ると言われたナーガラージャとディファレンスエンジンの組み合わせは、高火力かつ的確な判断で侵入者を攻撃していく。冷静に状況を見極めなければ。リュリュは肝に銘じて戦況を見守る。
「焦るな。タイミングを誤れば大惨事だからな」
「しかしこれが碩学の到達点にして議会の一角の正体とは」
『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は壁一面の機械を見て、何とも言えない表情をする。奇抜な事は嫌いではないが、この有様はあまりにもだ。そしてその到達点が導き出したのが無辜の民を犠牲にする事なのがなお許せない。
「ですが、不屈の魂を砕く力はないようですね」
 ミルトスはそう言い放つと精神を統一し、気を体内に駆け巡らせる。気を失うほどのダメージを受けても、なんとか気力で起き上がれるように。高い演算能力を超えるモノがあるのなら、それはヒトの意志。それを見せつける様に真っ直ぐに敵陣に立つ。
「さあ来なさい! その全てを撃ち砕いて見せましょう!」
「ナーガラージャさんは怖いけど……みんなと力を合わせて頑張るぞ。おー!」
 言って拳を振り上げる『黒砂糖はたからもの』リサ・スターリング(CL3000343)。融合前の幻想種はドラゴンに間違えられるほどの存在だ。そんな幻想種とヘルメリア最高の機械との融合。改めて怖さを感じるがそれを振り払うように足を踏み出した。
「こ、これでどうだっ!」
 震える足に活を入れて、リサは真っ直ぐにディファレンスエンジンに向かって突撃する。体全てを一つの拳のように意識し、衝撃を伝える様に体全てを叩き込む。衝撃がディファレンスエンジンを駆け巡っていくのが、触れているリサにもわかる。
「怖いけど……皆を信じてるから!」
「うおわっ! 危ない危ない!」
 ナーガラージャの攻撃をかわしながら『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)は冷や汗をかく。持ち前の反射神経と鍛え抜かれた経験。そして柔軟な体の動きで部屋中から迫る攻撃をかわしていた。同時に拳を振るい、ダメージを蓄積していく。
「ほーら、カノンに攻撃を当ててみなよ! こっちこっち!」
 ディファレンスエンジンを挑発するカノン。とはいえカノン自身も攻撃を受け、疲弊が激しい。だが負けるつもりはなかった。相手が人間の弱点を突くのなら、その弱点を克服するのも人間なのだ。その決意を込めて、カノンは改めて挑発を繰り返す。
「機械の計算を超える速度で成長すればいいだけだ! 簡単だよ!」
「その通り! 機械如きに負けると思う者はここにはいない!」
 言って槍を構える『折れぬ傲槍』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)。ヘルメリア最高峰の機械を前に、心の底から負けないと言い放つ。その傲慢さこそがボルカスの原動力。その言葉に魔力を乗せ、皆を鼓舞していく。
「安全地帯に避難する者は急げ! たかだか機械に寄生する蛇如き、この俺が押しとどめてやろう!」
 数多の天候を操るナーガラージャを前に、不遜にも言い放つボルカス。回復など不要とばかりに前に出て、ただ力の限りに槍を叩きつける。仲間を信じ、そして自分も信じる。天すら操る存在を前にしてもなお、ボルカスと言う騎士は傲慢を貫いていた。
「さあ、ケリをつけてやろう! この俺に続け!」
「いやはや。大したものだ。死ぬかと心配していたが、そんな気持ちも吹き飛んだね」
「わたくし達の初陣! 華麗に決めさせてもらいますわ!」
 クラリッサ・マクガフィン(CL3000653)と『ただの』エリシア・ブーランジェ(CL3000661)の【修道院】の二人がボルカスの鬨の声に合わせて躍り出る。クラリッサはスチームマータを、エリシアは東方の祈りの道具を模した鈍器を手にしていた。
「さて、我らがアクアディーネ様に良い所を見せようじゃないか! お淑やかにね!」
 クラリッサの言葉と同時にスチームマータは蒸気を吹き出し、クラリッサの意のままに動く。ナーガラージャの攻撃をかわしながら、最も攻撃に適した位置に陣を取ると同時に瞳を輝かせる。内蔵された蒸気エンジンが活性化し、魔力の光を解き放つ。
「スチムマータ、中々使い所が難しいね……!」
「ブーランジェ家の家訓の一つにこうありますわ。『数打てば当たる!』」
 胸を張って家訓を告げるエリシア。内容はどうあれ、この状況で足踏みをするわけにはいかないのも確かだ。古代語で聖句が描かれたフレイルを回転させ、祈りを一回転させる。
そんな精神的なバフを乗せつつ魔力を展開し、エリシアは炎の矢を放つ。
「いざとなれば部屋の外に出て逃げる事も考えた方がいいかな。これは」
「いいえいいえ! そーんなまだるっこしい戦略は勧誘禁止だぜですわ!」
「言葉遣いがおかしいぞ、エリシアくん」
「そんなことごぜーあせんですわ、おほほほほほ! 我が家訓にも『無茶をするときは前のめり!』とあります。ええ、ええ! ここで時間をかけてヘルメスを倒し損ねたら、それこそ手詰まりですわ!」
 エリシアのいう事は極端だが、真理でもある。一定時間以内に事を為さねばならないのは、ヘルメスだけではない。ナーガラージャを倒してもヘルメスを倒す人間が誰もいなければ、その時点で勝利はないのだ。
「……成程。だが命の危険に及ぶと判断したら連れて帰る。いいね?」
「そのようなことがこのわたくしにあろうはずがありませんわ。わたくしはエリシア・ブーランジェですのよ!」
 自信満々に笑うエリシア。どうあれ彼女の心は折れる事はない。その強さは、この非常時においてはプラスとなる。
 ヘルメリア最高峰の機械と天を繰る蛇の融合種。しかし自由騎士達の意志はその脅威にすら折れることなく、そして熱く滾っていた。

●ヘルメスⅠ
「ようこそ、青色のオラクル。
 まさかあんな方法で『ロンディアナ』に侵入するとはね。ノックはもう少し優しくした方がいいよ」
 ヘルメルの座に乗り込んだ自由騎士にそう告げるヘルメス。既に臨戦態勢は整っているのか、緑色の板を手に余裕の笑みを浮かべている。
「どっかーん! 突撃しちゃうのだ!」
 巨大な剣を構え、『ひまわりの約束』ナナン・皐月(CL3000240)が突撃する。真っすぐ突っ込み、大剣を振るう。だがそこに込められた力はナナンの努力の賜物。鍛え上げられたパワーがヘルメスを襲う。
「あのね。ヘルメスちゃんには優しい心が無いのかなぁ? 優しい心があったら、こんな事しないのに……って、ナナンは思うよぉ……」
「そうかい? 僕は皆の願いをきちんとかなえているよ。この前も病気に苦しむ子供を助けたところなんだから。みんなこの国のために働けて、嬉しいって思ってるんじゃないかな?」
 ナナンの問いかけに変わらぬ笑顔で答えるヘルメス。わざとなのか本気なのか。その表情からは伺いが知れない。
「やっぱりヘルメスちゃんは懲らしめないといけないみたいだね!」
「私はこの国の民がどうなろうが知ったことじゃないけど――神は殺す」
 短く言い放ち『機刃の竜乙女』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)がヘルメスに肉薄する。圧倒的な速度で動き回り、的を絞らせないようにしながら一気に迫る。攻撃と離脱を繰り返しながら甲剣を振るい、ヘルメスを傷つけていく。
「神ってどいつもこいつもこうなのかしら。傍若無人、善悪の破綻、挙句に脅迫。最低ね」
「おかしな話だよ。そう言う事は人間もしているじゃないか。神と言うだけで責められるなんて、酷い八つ当たりだ」
「議論をすり替えるな。自分の業を悔やんで死んでいけ」
「そうだね。神に逆らったことを悔いながら、死んでいくといいさ!」
 緑色に発光するエメラルドタブレット。その力が解放され、自由騎士達を襲う。
「そいつは叩かせてもらうぞ」
 そこに迫る槍一閃。『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)の『ジョルトランサー改』だ。狙い確かにアデルの槍は緑の板を吹き飛ばし……光となって消えた。だが次の瞬間にはすぐにヘルメスの手にタブレットが蘇る。
「無駄だよ。同期したこれは僕の一部。板だけを吹き飛ばしても意味がない」
「それはいい事を聞いた。つまり先ほどの一閃もお前にダメージを与えているという事か」
 元より壊せるとは思っていない。むしろ無駄ではないと分かって槍を構えなおす。
「国を捨てた神が、人に捨てられる。ごく当たり前の結論だ」
「誤解だね。彼らはまだ生きている。この『ロンディアナ』の一部として。誰も捨ててはいないよ」
「言葉遊びを楽しむ性格ではないだろう。他人が苦しむ様の方が楽しいんじゃないか」
「慧眼だね。まあ隠すつもりもないけど」
 アデルの言葉に悪びれることなく頷くヘルメス。
「本当に最低だな、お前は!」
 そんなヘルメスの言葉に怒りの声をあげる『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)。ヘルメリアで苦しむ人達の声を聞いた。ここに来るまでに何人も機械に融合した人達を見た。死に怯え、異形に嘆き、ただ悲しむだけの機械とヒトの融合体。
 あれを見て楽しいだなんで、ナバルは思えない。盾で仲間を守りながら、怒りで歯を食いしばる。エメラルドタブレットからの衝撃を受け流しながら、叫ぶようにナバルは口を開く。
「神だろうが、人だろうが、人を傷つけ楽しむようなヤツは最低だ! そして、オレはそんな最低な奴は絶対ぶん殴って止めると決めた!」
「傷つけるのが最低なのに殴るなんて。なら君も最低なんじゃないかい?」
「うるせぇ! そのヘナチョコでナヨナヨな顔を思いっきり殴ってやる!」
「気持ちはわかるが暫くは守りに徹してくれ。あれだけの広範囲攻撃だと前衛も後衛もあったものじゃない」
 ナバルを宥めながら『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)は癒しの術を行使する。人間同士の戦いと違い、常識を超えた範囲で攻めてくるヘルメス。神から目を離さず、同時にとにかく手数とばかりに多くの仲間を癒していく。
「しかしメアリー、ダメンズ趣味だったか。寂しそうな男にコロッといったか」
「寂しそう? 違うよ、頂上っていうのさ。
 むしろ人と共に歩もうなんて言うアクアディーネや、人を愛そうとするミトラースが異常なんだよ。君達だって、明日食べる家畜に名前をつけたりはいないだろう?」
「……やっぱり寂しいもんだ。そいつが神の在り方なら、お前は生まれた時から独りぼっちという事か」
 ため息をつくツボミ。人とは違うという事が、ここまで認識の差を生み出すとは。
「……何よそれ。信じる者を助けるのが異常だなんて!」
 ヘルメスの言葉に怒りの声をあげる『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。救いを求めた神がその相手を暇潰しの道具にするなんて考えらえない。そんな神様なんていない方がいいに決まってる。
「くらいなさい! これは貴方に裏切られたヘルメリア国民の分!」
 一気に距離を詰めたエルシーがヘルメスに拳を振るう。
「これは貴方の脅迫でのぞまぬ戦いを強いられた歯車騎士団の分!」
 体を回転させるように、エルシーは下からヘルメスを蹴り上げる。
「そしてこれは! アンタにムカついた! この私の怒りだぁーっ!」
 そのまま蹴り上げた足をそのままヘルメスの頭に叩きつけた。
「神様が皆を不幸に落とすなんて! とんだ邪神だわ!」
「それは人間が勝手に思っている価値観だ。神が人を助ける? 神はヒトを駒としか思ってないよ。君たちの女神も心の底でこう思ってるんじゃないか?
『優しくしていれば感情に任せて神を倒してくれる<いいひと>』『善意は操りやすいから楽』とか」
「口を挟まぬつもりだったが、今の言葉は聞き捨てならんな」
 ヘルメスの言葉に怒気を含んだ声で割り込む『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)。イ・ラプセルの象徴ともいえるアクアディーネを愚弄されては、たとえ相手が神だとしても黙ってはいられない。
「これがこの地に宿った呪詛だ。己の罪を悔いながら苦しむがいい」
 周囲に漂う負の想いを集め、それを凝縮して解き放つテオドール。放たれた力は因果応報とばかりにヘルメスに纏わりつき、痛みを与えていく。
「これからは貴卿がいなくても未来は紡がれる。このような手に出た時点で滅びは決まっていよう」
「へえ。君達は<あの未来>をどうにかできる算段があるのかい?」
「……何?」
「まさか『神の蟲毒を終わらせれば、世界が平和になる』なんて夢物語を信じてるわけでもないだろうに」
「興味深いね。神の蟲毒の後の話。聞かせてもらえないかな」
 ヘルメスの言葉に割って入る『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)。錬金術を用いて仲間を癒しながら、隙あらばヘルメスに薬品を放って攻撃を仕掛ける。
「神の蟲毒に勝利して、その後何をするつもりなんだい? 僕らの誰かに倒される前に教えてもらえないかな」
「決まってるだろう、面白おかしく過ごすのさ。機械と融合した新しいヒト達で」
「……つまり、キミ自身の思惑はどうあれ、神の蟲毒に勝利すれば<あの未来>を回避することはできるわけだ」
 聞けたいことは聞けた、とばかりにマグノリアは笑みを浮かべる。ヘルメスも似たような笑みを浮かべた。
「そうだね、勝利できれば、だ。君達はここで倒れて、お終いだけどね」
「終わりなのはあなたです。ヘルメス」
 声に怒りを込めて『祈りは強く』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が歩み出る。十字架状の武器を構える様は、正に祈るがごとく。ただ真っ直ぐにヘルメスを見て、祈りすべてを叩きつける様に武器を振るう。
「他国と競うが故、国が傾く事はありましょう。国を守るが故、兵が亡くなる事はありましょう。
 ですが。ですがヘルメリアの民には何の罪も無いじゃないですか……!」
「彼らは生まれ変わるんだよ。このヘルメスの『ロンディアナ』の一部に」
「そのような命への冒涜、許せるはずがありません!」
「冒涜か。それこそ価値観の違いだ。遠い未来、キジンが一般的になる未来もあるだろうに。人機融合装置はその懸け橋になるんだよ」
「戯言を! 貴方が命を弄び、娯楽にしていることは解っているのです!」
「ええ。ここで貴方を倒して、その権能を奪い取る!」
 言いながらヘルメスに迫る『慈悲の剣姫』アリア・セレスティ(CL3000222)。蛇のように伸びる剣を振るい、ヘルメスに逃げ場を塞ぎながら攻め立てる。アリアの意のままに動く翠の刃がヘルメスを刻んでいく。
「民をも犠牲にし、あまつさえ人質に取り歯車騎士を操る。そんな神を許しておけません!」
「酷いね。歯車騎士団たちは事情を知って、僕の為に喜んで動いてくれるのに。勝手な価値観の押し付けは嫌われるよ」
「酷いのはどちらですか! 貴方のような神がいるから、こんな悲劇が起きたんです!」
 怒りと共に剣の柄を引くアリア。それに連動して蛇の刃はヘルメスを引き裂いていく。
「権能を奪いとり、ヘルメリアの人達に安らぎを!」
「神だろうが何だろうが、殴って倒す!」
 体全部を叩きつける様に跳躍し、拳を振るう『薔薇の谷の騎士』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)。ここが一つの山場だと理解し、出し惜しみなく暴れまわる。身体が壊れても構わないとばかりに力を込め、突き進む。
「不死身ってんなら死ぬまで殺すだけだ! どりゃどりゃどりゃ!」
「怖い怖い。真に恐ろしいのはこの手合いかな。問答してくれないのは面白くないよ」
「ふん! 時間稼ぎなのは見え見えなんだから! 手を抜かずにぶっ叩くのみ!」
 戦いながら、カーミラは相手の行動や言動からその動きを探っていた。経験と情報から相手の意図を探り、その所作から次の行動を悟る。
「はは。無茶苦茶に見えてよく分かってる。それじゃあ、これでどうだ!」
 エメラルドタブレットが光り、膨大な魔力が乱舞する。その暴威を前に自由騎士の脚は止まり、傷つき倒れていく。
 それでも自由騎士は諦めない。神を殺すために、武器を握りしめる。

●アイオロスの球Ⅱ
 アイオロスの球がある部屋での戦いは苛烈を極めていた。
「決死行とか……嫌です……ううっ……」
『決意なき力』アルミア・ソーイ(CL3000567)は怯えながらもなんとか戦場に立っていた。元より彼女が自由騎士として戦う経緯は、戦いを望んだからではない。様々な不幸と世間に流された結果だ。こんな戦争になんか参加したくなかったのに。
「うう……そんな事、言わないでください。こんな力、望んでなかったのに……」
 誰かと会話をするように口を開き、嘆くように呻きながら手を突き出す。手の平に集まるのは紫色の紋様。周囲を漂う怨念を集め、力に変化して解き放つ。騎士達の気の巡りを乱し、回復する力を破壊していく。早く終わって。それだけを願いながらアルミアは力を解き放つ。
「……来ないで、来ないで……死んで、死んで、死んでください……!」
「歯車騎士団。そして『蒸気王』。民を守らんとするその意志に、心から敬意を」
 一礼の後に『永遠のアクトゥール』コール・シュプレ(CL3000584)は言葉を告げる。悪意などない。心の底から彼らを称賛し、敬意を示していた。立場こそ違えど彼らは民を守ろうと戦っている。その在り方は敵ながらあっぱれと言わざるを得まい。
「それでも、私たちは立ち向かわねばならない。戦いを、始めるとしよう。夜の帳が開く時、立っているのは私達だ……!」
 コールがステップを踏むと同時に展開される魔力の迷宮。蒸気騎士の一人を足止めしながら、舞うように回転して魔力を放出する。蒸気騎士達の足を止め、攻めを滞らせる術式だ。かつて歯車騎士団に放った術には劣るが、それでも足止めには十分といえよう。
「この舞唱は、仲間の助けとなる為に! 騎士も王も、皆纏めて迷いて惑え……!」
「へいへーい。チマチマ狙っていくっす」
 どこか物憂げな表情で『stale tomorrow』ジャム・レッティング(CL3000612) は銃を構える。狙うは蒸気騎士。とにかく数を減らさなければいけないのは確かだ。『蒸気王』は他人に任せたとばかりに目に止めるだけにすぎない。
(最期まで国を守る王を、最期まで守る騎士達。比喩抜きに国を守っているんだな)
 歯車騎士団の動きを見て、ジャムはそんなことを思う。それは一つの騎士の誉れだろう。かつて優等生だったジャムが彼らを見て何を思ったかは、本人にしかわからない。ただ今は、彼らを排するために銃を撃ち続けるだけだ。
「ま、どーでもいいっす。王様狙う人は気張ってほしいっすね。あの玉、結構頑丈そうっすよ」
「ふははははは。これまでもふもふさんを散々苛めてきた王様に天罰をくれてやる!」
『冥王鎌「タルタロス」』を構え、『俺様的正義』クレヴァニール・シルヴァネール(CL3000513)が立ち挑む。異様な風格と恐ろしいほどの波動を身に纏い、高らかに笑いをあげて戦場に挑み出る。
「これが今まで亜人達が受けてきた苦痛です。許しを請い、懺悔なさい。特にもふもふさんに!」
 鎌を一閃し、魔力を解き放つクレヴァニール。鎌の軌跡を追うように魔力が走り、その線上に居た蒸気騎士に『劣化』の概念が付与される。錬金術による奥義の一つ。強い魔力と恨みを乗せた斬撃が呪いとなって蒸気騎士達を襲う。
「これで終わりではありませんよ。己の罪を数えなさい。それだけの苦痛が待っています!」
「はい、では頑張りましょう」
 のんびりと頷く『ReReボマー?』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)。戦争とは思えないほどの緩やかな表情。マイペースに頷いて、戦場に歩を進める。目にしたモノクルを弄ると、歯車音がして距離調整を行い始める。
「ガンガンいきますよ。邪魔しないでくださいね」
 人形のゼンマイを巻いて、解き放つエミリオ。人形は機械音を立てながら銃を構え、エミリオの意のままにアイオロスの球を狙い撃つ。どこか抜けているように見えて、その狙いは正確だ。何処をどうすれば破壊できるか。それを本能で察していた。
「いざとなれば疑似永久機関もありますからね。……上手くいけばいいんですが」
「ガジェット奥が深いネ。ニコラの性格?」
 言って首をかしげる『有美玉』ルー・シェーファー(CL3000101)。ヘルメリアに来た時に伝授されたガジェットスタイル。それは商人のルーも使っていた。物珍しい道具のが商人の感性に引っかかったのだろうか。だが、自爆はご勘弁。
「ヘルメリアの王様、食らうネ。これが商人の一撃ヨ。アチョー!」
 ルーは色々ガジェットをつけた銃を手にして、怪鳥音を叫ぶ。金を使って強化した銃。一度打てばそれで終わりだが、それだけの威力はあると思う。金の力は偉大だと言わんがばかりに派手な音が響き、アイオロスの球に衝撃を与える。
「怨みはないけど……いや……やっぱ色々恨みはあるネ! 覚悟ォーッ!」
「みんな頑張るんだぞー!」
 拳を振り上げ、皆を鼓舞する『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)。神を倒した時、神の力で動いているこの都市はどうなるのか。そんな事をふと考えたが、サシャは考えるのをやめた。今は今できる事をやらなくては。
「サシャも頑張るぞ! 体力を回復していくんだぞ!」
 応援するだけではなく、回復も行うサシャ。『HOLY BIBLE』を手にして魔力を練り上げ、回復の光を解き放つ。元気な笑顔と共に放たれる淡い光が仲間に触れ、その傷を癒していく。その様子を見て、サシャも喜んだ。
「ヘルメスを倒して、美味しいおにくを食べるんだぞ!」
「やるべきことは変わらない。ただ真っ直ぐに進むだけだ」
『忍冬・真打』を手に『薔薇色の髪の騎士』グローリア・アンヘル(CL3000214)は歩を進める。軍人として生きるのなら、やるべきことは軍務に忠実であること。ここで敵兵を討ち、国の勝利に貢献するのだ。
「投降するなら命の保証はしよう。誇りを選んで戦うのならそれに応えよう」
 蒸気騎士に宣誓し、後者を選んだことを確認した後にグローリアは相手と剣を結ぶ。軍人であるがゆえに破壊行為と無関係ではいられないが、それでも必要以上の破壊や殺害は望まない。歯車騎士団にも譲れないものがあるように、グローリアにも譲れないものがある。
「次は誰だ。まだ私は戦えるぞ」
「騎士ちゃんは全部眠らせて、アイオロス城に自ら囚われた、茨姫ちゃんを助けるねぇ〜」
 眠そうに眼をこすりながらメーメー・ケルツェンハイム(CL3000663)が歩み出る。起きているのかねているのかわからない。そんな表情だ。歩き方もどこかたどたどしく、もしかしたら寝ているのではないかとさえ思わせる。
「今の僕の最大魔法〜……え~~い」
 うつらうつらとしながら呪文を唱えるメーメー。動きと共にマナが活性化し、呪力が少しずつ濃くなっていく。メーメーの魔力と魂を糧として、放たれた呪力が強く大きく具現化する。巨大な刃が壁を壊し、激しい睡魔が敵を襲う。
「全てが終わるまで僕の大魔法で眠ってくれてたらいいなぁ〜。
 物語の中での茨姫はハッピーエンドで終わるのに、現実の茨姫は、そうはなれないみたいなのが、僕にとっては物凄く悲しいからねぇ〜」
 ふらふらしながらメーメーは言う。彼女の眼前に立っていた騎士達は全て眠り落ちていた。夢心地のメーメーだからこそ具現化できた、正に夢の魔術。半覚醒状態だからこそ想像力に歯止めなく解き放たれたのだ。
「成程、魂、もしくは存在自体を削ることで世界に干渉する力か。それがアレイスターがお前達に目をかけていた理由の一つというわけだな」
 メーメーの魔術を見た『蒸気王』は自由騎士達の力をそう評価する。
「蒸気王陛下、あなた様は精一杯生きてこられたのだと、私は思います」
 セアラ・ラングフォード(CL3000634)は仲間の傷を癒した後にゆっくりとアイオロスの球に近づいていく。戦いの間は後衛で回復を施していたのだが、メーメーの魔術で雌雄は決した。あとは――アイオロスの球を破壊するだけ。
「確認ですが、陛下はそこから出ればお命は――」
「潰える。融合状態という事もあるが、寿命といった肉体限界もある。死は避けれぬ」
「……はい」
 予想はしていたが、その答えに小さく胸を痛めるセアラ。
「陛下は……神の蟲毒に勝利した時に何が起きるかをご存じですか?」
「……そうか、汝らはそれを知らずに戦っているのか。優しさか、或いは後ろめたさか。
 その質問には答えることが出来ない。いずれ時が来れば、語られる時が来るだろう」
 アイオロスの球に浮かぶ少女は、それ以上は何も言うつもりはないのだろう。
「……壊さなきゃいけないんですね」
 アイオロスの球の前に立つ 『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)が、静かに告げる。邪魔をする者はもういない。球の中にいる少女は胎児のように中の液体に浮かんでいる。破壊することは容易だ。
「私は、ミトラースが憎かった。ヨウセイを迫害し多くの同胞を殺したミトラースが。
 ……でもあのミトラースでも自分の信徒には愛を注いでいた」
 シャンバラの仕打ちを許すつもりはないし、時々黒い感情が湧き上がる事もある。それでも神の名のもとに幸せはあった。だが、
「ヘルメスは違う。ヘルメリアの国民を機械に融合させ、騎士達を無理やり戦わせ、そしてあなたを……!」
「同情なら不要だ。我は王の責務を果たしたにすぎぬ。それが報われず、そして潰えるだけだ」
「……悲しい、です。こんな事になっても、国を、ヘルメスを守ろうとしているのが」
 それでも、進まなくてはいけない。ティルダは自分の意志で魔力を込め、そしてアイオロスの球に向かって解き放つ。
 ガラスが割れる音が響き、中にあった水が床に流れる。そして球と融合していた少女は、力無く崩れ落ちた。もう命がないことは誰の目にも明白だ。
『蒸気王』チャールズ・バベッジ、死亡。アイオロスの球、破壊。トリスメギトスの1、消去――
 夜明けは、少しずつ近づいてくる。

●ディファレンスエンジンⅡ
 熱風が吹き荒れ、冷気が刃と化し、稲妻が乱舞する。
「さすがヘルメリアの演算装置ですわ。容赦がありません」
 的確な攻撃を前に『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)は大きく息を吐く。室内で荒れ狂う天候と、機械と同化したナーガラージャの攻撃。レオンティーナはそれらに傷つく自由騎士達を癒し、そして鼓舞していた。
「融合していない時の演算装置に興味はありましたが、今は一刻も早く壊さなくてはいけません」
 ディファレンスエンジンがヘルメスの命の一つと言うのなら、壊さないという選択肢はない。ヘルメリアの民が機械と同化し、苦しんでいるのはあの神のせいだ。この機会を逃せば、もはや次はない。倒れる仲間に手を当て、癒しの魔力を込めるレオンティーナ。
「人手が足りません。かっこよく倒れられたところ申し訳ありませんが、もう少し頑張っていただけますか?」
「へっ、ありがてぇ。まだ暴れたりなかったんだよ!」
 意識を取り戻した『砂塵の戦鬼』ジーニー・レイン(CL3000647)が立ち上がり、斧を構える。防御を捨てた突撃。自らのダメージを顧みない戦法で相手を傷つけ、そのまま倒れていたジーニーだが、また起き上がれて笑みを浮かべる。
「どうしたナーガラージャ! 私の嵐を止めてみろ!」
 立ち上がったジーニーの動きはまさに突風。全身の筋肉を使って距離を詰め、豪風を思わせる斧の動きで攻め立てる。強大な相手に怯えず、ただ真っ直ぐに吹き荒れる。天候を操るナーガラージャとて、この風は止められない。
「ナーガラージャともあろう幻想種が、ヘルメスにいいように使われて、プライドはないのかい?」
「ふん。神の先兵となっているのはお前達も同じだろうに」
「いいや。確かに僕らはアクアディーネ様のオラクルだが、決してそれだけで戦っているのではない!」
 ナーガラージャの言葉に『真なる騎士の路』アダム・クランプトン(CL3000185)が否定するように声をかける。神の為に戦う自由騎士も確かにいるだろう。だがそれだけではない。この国を思い、融合された民を思い戦う自由騎士も確かにいるのだ。
「騎士アダム! 貴女の知を我が信念で超えてみせよう!」
 言って仲間の盾になるべく立ち構えるアダム。ナーガラージャの知が生み出す天候やディファレンスエンジンの知識による計算された一撃を受けながら、しかし倒れることなく立ち続ける。仲間を守り、未来を紡ぐ。その信念を示すかのように。
「まだ僕は倒れない。全てを守り、全てを救う。これが信念だ!」
「戯言を。いずれ限界が来るさ!」
「ええ、限界はあるでしょう。当然、貴方にもです」
 冷気を放ちながら『音運ぶ小鳥』ドロテア・パラディース(CL3000435)は言葉を紡ぐ。背中の白い羽根を広げ、負けないとばかりにディファレンスエンジンを睨む。強大な幻想種とヘルメリア再興の演算器との融合種。こわくないと言えば嘘にはなる。だけど、
「ここには仲間がいます。そして相棒の楽器だって居るのであります」
 それでも立っていられるのは、仲間がいるから。それでも魔力を紡げるのは、相棒の楽器があるから。リラを奏で、その感触と音がドロテアを安堵させる。そのまま青のマナを構成し、氷の矢と化して解き放つ。
「ここが踏ん張りどころであります。生きましょう、皆さん!」
「はい! 行こう、ノーヴェ!」
「……うん、セーイ」
 セーイ・キャトル(CL3000639)の声に頷きノーヴェ・キャトル(CL3000638)が前に出る。ノーヴェはカタールとカランビットを。セーイは宝杖を手にしてそれぞれの構えを取る。二人を繋ぐ念波の糸と双子の絆。言葉なく頷き、二人は動き出す。
「一気に……攻める……新しい……技」
 間合の異なる刃を構え、ノーヴェが戦場を疾駆する。足を止めずに走り回り、相手の攻撃の隙を縫うように間合に入り込む。数秒後の未来を頭の中に入れながら、ためらうことなく刃を振るう。
「そっちから攻撃くるよ!」
 セーイは魔力を解き放ちディファレンスエンジンを攻撃する傍ら、予知した未来をテレパスで皆に伝えていた。知っているからと言って対応できるかは別問題だが、完全な不意打ちは避けられる。やれることは何でもやるつもりだ。
「ノーヴェ、無茶しすぎ! いったん離脱するよ!」
「まだ……大丈夫……私が……皆を……」
「はいはい! そう言う事は元気になってからね。回復お願いします!」
「……おねがいします」
 無茶をするノーヴェのブレーキ役として動くセーイ。セーイがノーヴェの危険領域を把握し、ノーヴェもセーイがいるから無茶をしている。互いが互いを良く知っているからこそ可能なコンビネーション。双子故に互いのことが分かり合えていた。
「……回復。それじゃあ、行ってくる……」
「うん。一応言うけど、無茶しないで!」
「……うん」
 そして二人はまた戦場に足を踏み入れる。
「再演算完了。威力補正」
「そろそろ死に絶えなさい!」
 ディファレンスエンジンの声とナーガラージャの声が重なる。温度を熱風が部屋の中を渦巻き、熱が自由騎士達の体力を奪っていく――
「いいえ! 誰も倒れさせはしません!」
 その熱風を受け止めた『愛の盾』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)。風が吹き荒れる起点に立ち、噴出を防ぐように盾を構える。確かにそれは仲間を守れるが、デボラ自身がその熱すべてを受けることになる。
「退きません! 私がいる限り、誰も倒れさせはしません!」
「対象、予測耐久値を超えてなお健在。再演算」
「人間如きが猪口才な!」
 無機質なディファレンスエンジンの声と、感情的なナーガラージャの声が重なる。
 体中に纏わりつく熱。そのせいもあって、喉が渇き眩暈までしてくる。気を抜くと倒れそうになるが、それでも必死に意識を保ちたてを構えるデボラ。
「この国の……ヘルメリアの未来のために!」
 彼女を支えるのは、ヘルメリアに住むヒト達の事。今までかかわったヘルメリア人。それを思い、盾を持つ力を込める。そして――
「耐えきった……だと!?」
 必殺の想いを込めた熱風は、デボラ一人によって防がれた。その事実に驚愕するナーガラジャ。だが、
「二度目はない! 今度こそ――」
「はい。二度目はありません。あらゆる天候であっても、全て癒します」
 毅然とした態度で『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)が口を開いた。天を操るナーガラージャに対して、その天候を恐れないと言い放つ。
「あらゆる災害。あらゆる苦難。それを前に膝を折る事もあるかもしれません。前を向けなくなることもあるかもしれません。
 ですがその度に、ヒトは立ち上がってきました。身体と心を奮わせ、築き上げてきた技術を用いて」
 たまきは悪天候の中でしっかりと言い放つ。災害も苦難もすべて乗り越えてきた。ナーガラージャの力も、ヘルメスの災害も、すべて乗り越える。それがヒトなのだ。
「ナーガラージャさん。これがヒトが積み上げた技術です。過去を知っている貴女では見えない、未来に続く力。それが皆を守ってくれます」
 たまきが祈りを捧げる様に魔力を解き放つ。癒しの力と守りの力。あらゆる苦難で受けた傷は消え去り、あらゆる天候が来ても影響を受けることはない。それは人の叡智。過去にこれまで積み上げ、現在に試行錯誤し、そして未来に届く医の歴史。
 それが自由騎士を守り、そして立ち上がらせる。
「誰も怪我の無い状態で、無事に、この部屋から、皆さんが出られる様に……!」
「再演算終了。資料不足により、結論は出ず」
「これがヒトの未来……!」
 驚愕するナーガラージャ。その隙を縫うように、自由騎士は一気に攻め立てる。刃が、魔が、たまきの癒しに支えられて降り注ぎ――
「演算終了。勝率、0」
「ふふ……そう。いずれヒトは、この自然さえも乗り越えるの、ね……」
 その言葉を最後に、ディファレンスエンジンとナーガラージャは沈黙する。誰かが勝鬨の声を上げ、終結を実感する。
 ナーガラージャ、死亡。ディファレンスエンジン、破壊。トリスメギトスの2、消去――
 ヘルメリアの夜明けは、近い。

●ヘルメスⅡ
(……トリスメギトスが二つとも消えた? まさか……!?)
 ヘルメスはアイオロスの球とディファレンスエンジンに預けていたトリスメギトスの消失を感じ取る。今ここで自分が殺されれば、そのまま滅びるだろう。
(暴れてさせていた融合種や、活動的な歯車騎士団たちが戻ってくる様子もない。
 やられたか。だが――)
 だが、それはそれでいい。誰かが来れば上手く押し付けれてやろうかと思ったが、その程度だ。ヘルメスは自分の勝ちが見えていた。
(このまま最終術式を完成して終わりだ。それまでに追い込まれることはない)
 時間がくればこちらの勝ち。ヘルメスは自由騎士達の力と文字が形成する防御壁の強度を考慮し、そう判断する。勝ち目がなくなった時の絶望の表情を見せてもらおう。
「はいはい、娘を誑かした野郎を親父として殴りにきましたよっ」
 手をあげて『罰はその命を以って』ニコラス・モラル(CL3000453)が声をかける。ヘルメスの攻撃範囲を考えれば、前衛も後衛も関係ない。故に前に出て、仲間を癒しながらヘルメスに近づくニコラス。
「誑かした? 失礼な事を言うね。僕は皆を助けようとしたのに。
 ステラ・モラルだってあそこで力を貸さないと自殺していたかもしれないのに。正気でいればいるほど辛いだけなのにさ」
「ゲスな神だな。だがお前のような神が当然だって思ってた俺も同罪か」
 ニコラスは魔力を燃やし、その熱を拳に宿らせる。これだけじゃ足りない。最もっと燃やせ。魂の残りだってくれてやる。ニコラスは全てを込めて拳を振り上げて――
『わたしが困ったときには』
(…………っ!?)
 脳裏によみがえるのは、娘の言葉。それはニコラスがヘルメリアに足を踏み入れた最大の理由で、ニコラスが生に執着する楔。その楔を断ち切り、ここで娘の為に道を切り開くことは、きっと正しい。
『――必ずたすけてね』
 だけど残された娘は、誰が助けに行くのか。生きるために執着した思いが、最後の一歩で踏みとどまる。拳は魔力を込めたのみにとどまった。
「やってくれるね。この神に拳を叩き込むなんて」
「ちっ!」
 振り下ろした拳を強く握りしめ、距離を取るニコラス。
「ChaaAAAAaaaaaaNCeeeeeeeeeeeeeee!」
 咆哮が響く。ニコラスの殴打で生まれた隙を縫うように『黒き狂戦士』ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)が狂ったように声をあげた。機は熟した、と見るや否やヘルメスに向かって突撃していく。防御などない。ヘルメスの攻撃で傷ついてもそれを気にすることなく前に進む。
「Hermeeeeeeeeeeeees! Slaaaaaaaaaaaay!」
 叫ぶ。叫ぶ、唸る、大呼、大喝、雄叫、咆哮、叫喚、怒号、叫声、怒鳴、金切声、怪鳥音、疾呼、哮、諕、嚆、趯、号、嘄、譹、叫、嘑、喊、嚝、嘖、號、轟! 声に狂信と殺意を乗せ、空気を震わせる。同時に斬撃を放ち、ヘルメスを包む文字列を一つずつ削り取っていく。
「GoooOOooODDDddeSSSssSS!」
 ナイトオウルに宿るのは女神への敬愛。純粋な愛ゆえにそれ以外の感情は存在しない。ヘルメスは女神の為に倒すべき邪神である。その眉間に刃を叩き込むために、魂を削って神を追い詰める。
「うーん。あの板を破壊すればそれなりにアド? 術は止めれないみたいだけど」
『Who are You?』リグ・ティッカ(CL3000556)はヘルメスを見ながらそんなことを言う。前に仲間が試したが、エメラルドタブレット自体の破壊は意味をなさない。あれがヘルメスは一部なので、ダメージは通るのだが。
「よくわかんないままですが、リグもリグなりに拳を届けに来たのです」
 真剣な空気は苦手だが、リグもヘルメリアに思う所がないわけではない。かつて助けたチャールズ・ドジソンの『作品』。彼女のようなモノを生み出したのがヘルメリアなら、それは消えなければならない。ただ真っ直ぐに拳を突き出し、ヘルメスを穿っていく。
「リグはおいしいごはんさえ食べられたらいいのですし。だから帰ったら、ざるくんにまたおいしいものを食べに連れてって貰うのです」
「フラグだぞ、それは」
 リグの言葉に『二人の誓い』ザルク・ミステル(CL3000067)はため息をつくように言葉を返す。無意識にモノクルを擦り、ヘルメスを見た。ここまでようやくやってきた。復讐の炎を燃やし始めて、どれだけの時が経ったのだろうか?
「……行くぜ、ヘルメス!」
 口を開くと同時に銃を構えるザルク。弾丸ではあの文字を突破はできない。出来るかもしれないが、圧倒的に時間が足りない。ならば――
「メアリーからの言付けだ。『愛してた。さようなら』だとよ!」
「メアリー……? ああ、あの子か。惜しい才能だった。あの人形劇は上手く育てれれば新たな道が開けたのに。もしかしたらこの『ロンディアナ』が巨大な人型になっていたかもね」
 けっ、と吐き捨てるザルク。まともな回答は期待していなかったが、どうあれ同郷から告げるべき言葉は告げた。ならばあとは己の分だ。
(燃えろ。ずっと俺の中で燃え続けた復讐の炎。足りないんなら、腕でも足でも持って行け!)
 フラッシュバックされる炎の記憶。ずっと噛み続けた憎しみが魂を回転させる。心でくすぶる炎がザルクの腕を焼き、魂さえ燃やしていく。炎は小さく凝縮され、赤く輝く炎の弾丸となって撃ち放たれる。
「それが君の全力かい? この程度、どうという事もない」
 ヘルメスが手を差し出すと同時に生まれた衝撃波が、炎を消し去る。それはあたかもあの日のザルクとプロメテウスの力の差のように――
「お前の敗因は、人間を舐め過ぎた事だ」
 あの日、燃えたモノ――
「自分が特別な存在だと思いあがり、万全の心算でも無意識化で人を見下している」
 炎は消えない。たとえか細くとも、長く長く燃やし続けた炎。
「だから、こうして過去に嗤って焼き払った筈の雑草に足を取られるんだ!」
 炎は消えない。ザルクがこうしてここまで来れたように、消し去ったつもりの炎は再び燃え上がり、ヘルメスの文字列を貫通して穿たれる。
「……っ! ま、まさか……!? あ、あぐはぁ! ああああああああああああ!」
 燃え盛る炎の中苦しむヘルメス。その様子は明らかに致命傷を受けて喘いでいるようにしか見えない。それでもヘルメスは嗤う。
「は、はぁ……! でも、僕の勝ちだぁ! 力は、満ちた!」
 ヘルメスを中心に緑色の文字が回転するように展開される。立体式魔法陣。三次元的に描かれた文字列が灰色のマナを生み出し、そしてヘルメスに力を与えていく。
「ふは、ははははは。この僕をここまで追い込んだんだ。散々恐怖しながら死んでいくんだね! それとも命乞いをするかい? 機械になるなら、考えてあげても――」
「んー。個人的には笑いながら死んでいってほしかったかな? 愉悦を嗜む身としては最後の最後まで愉悦のままに、って感じで」
 ヘルメスの言葉を遮るように『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)が口を開く。規格外のマナの収束。それが一斉に放たれればどうなるか。それを理解しながらヘルメスに話しかける。
「ああ、でも見下したり愉悦だったりは変わらないのか。でもまあ、決着はつけないとね」
「決着? 着くさ。僕の勝ちでね!」
「『地を火から、微細なものを粗大なものから、非常なる勤勉さで丁寧に分離するがよい』そして『それは地から天に昇り、ふたたび地へと降って、上位のものと下位のものの力を受けとる』……これは力の分離と生命の攪拌ね。
 となると『その力はすべての力を凌ぐ。それはあらゆる精妙なものにも勝り、あらゆる堅固なものをも穿つからである』……これはそうして得た者を力と化した」
 突如喋り出すきゐこを前に、ヘルメスは動きを止める。
「そして今解き放とうとしている『太陽の作業についてわたしの語ったことは完遂し畢る』……すなわち回る太陽の存在こそ完成の証。自分から見た太陽の動く軌跡そのものを一つの陣として、世界の何処にいてもどんな状態でも相手を倒す。そんな所かしら」
「へえ。博識だね。セフィロトの海への土産としては上出来だと思うよ」
「そうね。上出来。だって――『太陽は不変にあらす』」
 きゐこはヘルメスの形成する陣に重ねる様に言葉を乗せる。日蝕。月により太陽の影が落ちる現象。その概念をきゐこはヘルメスの術式に乗せた。
「『太陽の船を喰らうヘビ、天翔けるオオカミ、悪なるジャガー、不死になり損ねた反逆者、岩戸に隠れし母。
 二十六の月影、五十六の火烏、羊飼いの道楽は不幸を見る眼を与えたもう。人々は叫び、奪われし日光を取り戻す。――日は不変なれど人ば歩む!』」
 日食の伝説は太陽の絶対性の否定。この世に必定なものはない。否、変化することのみが必定なのだ。生は死に、創は壊に。ヘルメスが掲げる完遂もまた過程の一つ。滅びゆき、それでも人は歩いていく――
『それ』は綻びを生じる。永遠は傷が入った瞬間に、完璧ではなくなったからだ。
「そんな、言葉遊びで……エメラルドタブレットを!」
「そうよ。言霊って概念は知らないだろうけど、人間を舐めないでほしいわね!」
 否定するヘルメス。だがヘルメスを包む文字はひび割れるように崩れ去り、そこから力を受け取っていたヘルメスは支えを失ったように膝をつく。ザルクの一撃が致命傷だったのだろう。そのまま動かなくなる――
 それを確認し、自由騎士達は勝鬨の声をあげた。

 朝日が、『ロンディアナ』を照らす――

●幕外にて
「みーつけた」
『譎詐百端』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は勝鬨をあげる仲間達から離れ、部屋の隅に移動していた。そこにはエメラルドタブレットがあった。戦いの隙にヘルメスが投げ出したのだろう。それを見てクイニィーはほほ笑む。
「こっそり逃げようとしたってそうはいかないよ。アンタの性格や行動パターンはぜーんぶ分かってるんだから。
 皆を道連れにして自爆、とか絶対やらないと思ってたから『ああ。これはオトリだな』ってピンときちゃった。この板もアンタの一部だって言ってたし、このまま逃げてしまおうってハラだったんでしょ? 私達が死んだ後に復活、とかそんな感じで」
 言いながらクイニィーは毒薬を注入する器具を取り出す。そこには丹精込めて作られた猛毒がある。それを躊躇なく突きさした。
「あたし攻撃手段ほとんど無いし、こういう事しかできないんだけど。でも騙し合いとか情報戦なら得意なんだ。
 それじゃ、さよなら。最後の最後まで臆病なカミサマ。特製の毒なんだから、散々苦しんで死んでいってね!」
 興味はなくなった、とばかりにクイニィーは立ち上がり、皆の輪に戻っていく。
 ほどなくして、緑の板は砕け散り砂となって消えていった。


 ヘルメスの消滅の影響で、『ロンディアナ』の動きが止まる。『ロンディアナ』を支えていた足は折れる様に崩れ、数度の衝撃が首都を揺らす。
 同時に神の力で動いていたデウスギア、人機融合装置もただの鉄屑となる。ヘルメスの力が存在しない以上、装置は何も生み出すことはない。
 だが人機融合装置によりキジン化した亜人や融合種。機会に融合させられた人たち。『ロンディアナ』暴走により荒れ果てたヘルメリア島。そういった問題は未だに残っている。かつて蒸気王国と言われたヘルメリアの栄華は、おおよそ破壊されただろう。
 だが、人はまた歩むことが出来る。そしてその最大の障害であるヘルメスは、もういない。
『ロンディアナの今日の天候、晴れ。スモッグから陽光が射すこともあるでしょう』
 蒸気ラジヲが、軽快に今日の始まりを告げていた。

 ――分厚い煤煙の隙間から、朝日が射しこむ。
 その光景は、この島の未来を顕しているかのようであった。



● 幕外にて。
 あーあ、僕ぁさ、意外と君のこと嫌いじゃなかったんだぜ?
 紅茶だけは美味しかったしね。
 可愛そうな女の子の失恋は……いや、そういっちゃあ、野暮だよね。
 彼女(おとめ)の恋はかなったのさ。
 なんたって、一緒に逝けたのだから。
 とはいえ、セフィロトの海で再会は不可能だろうけれども。おっとこれまた野暮か。
 
 少女は願った。儚い恋を。
 男は演じた。淡い恋を。
 
 そうして終わった恋物語、だったのさ。
 なんとも消化不良なできの悪い物語だったけれど。
 黄金の髪の少女が満足だったのだろうね。
 
 さよなら、ヘルメス。
 楽しかったよ。あ、でもアヘン広げようとしたのは許してないからね!
 
 それじゃあ――。
 さあさ、権能は青の神■■■のもとに。重ね重ねて毒は強くなっていく。
 タ■■■に到達すれば、それは神殺の剣となる。
 ねえ、■■■■。
 もっとも戦いを厭うた君が――君のオラクルが世界を変えていくよ。
 神を殺して、
 ヒトを戦わせて、
 大勢の命が失われていく。
 増えていく権能は君の罪の数さ。
 でも、きめたんだろう? 後戻りはもうできないさ。
 
 
 

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『機国解放者』
取得者: マリア・カゲ山(CL3000337)
『機国解放者』
取得者: マグノリア・ホワイト(CL3000242)
『機国解放者』
取得者: シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『機国解放者』
取得者: アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)
『機国解放者』
取得者: セアラ・ラングフォード(CL3000634)
『機国解放者』
取得者: リサ・スターリング(CL3000343)
『機国解放者』
取得者: ニコラス・モラル(CL3000453)
『機国解放者』
取得者: アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)
『狂信の咆哮』
取得者: ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)
『機国解放者』
取得者: テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)
『天を征する盾』
取得者: デボラ・ディートヘルム(CL3000511)
『機国解放者』
取得者: コール・シュプレ(CL3000584)
『日は陰り、されど人は歩ゆむ』
取得者: 猪市 きゐこ(CL3000048)
『機国解放者』
取得者: リンネ・スズカ(CL3000361)
『機国解放者』
取得者: サシャ・プニコフ(CL3000122)
『機国解放者』
取得者: アデル・ハビッツ(CL3000496)
『トリックスター・キラー』
取得者: クイニィー・アルジェント(CL3000178)
『機国解放者』
取得者: 蔡 狼華(CL3000451)
『機国解放者』
取得者: アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)
『機国解放者』
取得者: カノン・イスルギ(CL3000025)
『機国解放者』
取得者: 非時香・ツボミ(CL3000086)
『機国解放者』
取得者: リュリュ・ロジェ(CL3000117)
『機国解放者』
取得者: ライカ・リンドヴルム(CL3000405)
『機国解放者』
取得者: アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)
『機国解放者』
取得者: エミリオ・ミハイエル(CL3000054)
『機国解放者』
取得者: スピンキー・フリスキー(CL3000555)
『機国解放者』
取得者: ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)
『機国解放者』
取得者: ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)
『機国解放者』
取得者: ノーヴェ・キャトル(CL3000638)
『機国解放者』
取得者: セーイ・キャトル(CL3000639)
『夢でまた会えたら』
取得者: メーメー・ケルツェンハイム(CL3000663)
『機国解放者』
取得者: ナナン・皐月(CL3000240)
『天を癒す者』
取得者: たまき 聖流(CL3000283)
『機国解放者』
取得者: グローリア・アンヘル(CL3000214)
『機国解放者』
取得者: カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
『機国解放者』
取得者: エリシア・ブーランジェ(CL3000661)
『機国解放者』
取得者: エイラ・フラナガン(CL3000406)
『機神殺し』
取得者: ザルク・ミステル(CL3000067)
『機国解放者』
取得者: クレヴァニール・シルヴァネール(CL3000513)
『機国解放者』
取得者: ジャム・レッティング(CL3000612)
『機国解放者』
取得者: オルパ・エメラドル(CL3000515)
『機国解放者』
取得者: レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)
『機国解放者』
取得者: ジーニー・レイン(CL3000647)
『機国解放者』
取得者: キース・オーティス(CL3000664)
『機国解放者』
取得者: ナバル・ジーロン(CL3000441)
『機国解放者』
取得者: ドロテア・パラディース(CL3000435)
『機国解放者』
取得者: 月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)
『機国解放者』
取得者: ルー・シェーファー(CL3000101)
『機国解放者』
取得者: アダム・クランプトン(CL3000185)
『機国解放者』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『機国解放者』
取得者: フリオ・フルフラット(CL3000454)
『機国解放者』
取得者: ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)
『機国解放者』
取得者: エルシー・スカーレット(CL3000368)
『機国解放者』
取得者: クラリッサ・マクガフィン(CL3000653)
『機国解放者』
取得者: アルミア・ソーイ(CL3000567)
『機国解放者』
取得者: リグ・ティッカ(CL3000556)

†あとがき†

どくどくです。
この朝日の為のヘルメリア煤煙設定だったり、タイトルをDにするために試行錯誤したり。いろいろ苦労しました(何か違う

ヘルメス……と言うよりヘルメリアはシャンバラの真逆を意識しました。
過剰ともいえる愛を持つ(それ故、愛を拒んだ物には容赦ない)ミトラースと、人間は平等に愛さず玩具なヘルメス。魔導文明と蒸気文明。その辺りすべては意識して設定しました。

なお『蒸気王はフルキジン。そして女』と言うのはたぢまCWのアイデアです。だから別にどくどくがエロイわけじゃないんだよ。
まあ、アイオロスの球に入れて浮かばせようと意見したのはどくどくですが。

さて、去年の6月から続いたヘルメリア編はここで幕を下ろします。戦後処理を始めとしたいろいろな問題はありますが、先ずはお疲れさまでした。
神の蟲毒の一は終わりましたが、自由騎士の戦いはまだ続きます。先ずは傷を癒してください。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済