MagiaSteam
流れ流れて、船来たれり



●探検? 冒険? 漂流船!
「さっき海に見たことがない船が浮いてるのを見つけたわ!」
 その日、自由騎士達がたまり場にしているアデレードの酒場で、マリアンナ・オリヴェルは若干興奮した様子でそう話した。別に酒は飲んでいない。
 ただ、彼女は何かと新しい発見をすると驚いたり喜んだりする。
 どうやらマリアンナは新し物好きであるようだった。
「あの船、どこの船かしら。ここに来たりしないかしら。中はどうなっているのかしら。気になるわ。見てみたいわ、どんな風に動かしているのかしら」
 マリアンナ、早口。
 かなり、その見たことのない船とやらが気になっている様子だ。
「やけに気にしてるな。そんなに珍しい船だったのか?」
 飲み仲間の自由騎士が問うと、マリアンナは鼻息も荒く言った。
「大きな船だったわ! でも、煙が出てなかったのよ!」
「煙? 蒸気機関のか?」
 この時代、船といえばもっぱら蒸気機関を備えた蒸気船だ。
 しかし、別にそれがない船だって当然のように存在する。
 だからそれだけでは、マリアンナが興奮する理由にはならないだろう。
「あとは、木でできてたわ! 多分!」
 弓の使い手として目がいいマリアンナなので、その言葉におそらく間違いはあるまい。
 木造船。
 これもまた、多数存在するものだが――、
「見たことがない形の船だったのよ! それでね、帆に大きな印が描いてあったわ!」
「……印、ねぇ?」
 首をかしげる自由騎士に、マリアンナはその印の形を説明する。
 すると「んん?」と疑問の声。別の自由騎士があげたものだった。
「その印とやらの形、間違いはないですか?」
 声をあげた方の自由騎士に問われ、マリアンナはコクコクうなずいた。
「どこの船なのかご存知なのかしら?」
「いや、まさかとは思いますが……」
「何なんだ。知っているなら教えてくれ」
「もし、マリアンナ殿の見たものが私の知っているものと同じならば――」
「「同じならば……?」」
「その船、私の故郷のアマノホカリの船なんじゃないですかね……」
「「アマノホカリ!?」」
 飲み仲間の自由騎士は驚き、マリアンナの瞳は輝きを増した。
「しかもマリアンナさんが見たっていう印は、アマツ朝廷近衛軍――、要するにアマノホカリの最高権力者の親衛隊であることを示す御紋だった気がするんですけど」
「何か、凄い話になってきてないか……?」
「そうね、凄いわ! 何でそんな偉い人の船が来たのかしら、気になるわ!」
 そろそろマリアンナが好奇心を推進力にして酒場を飛び出しそうになった頃、いきなり、酒場のドアが勢いよく開け放たれる。
「おおい、自由騎士さんはいらっしゃいますか!」
 血相を変えて飛び込んできたのは、アデレードの船乗りだった。
「ど、どうしたの?」
 息も絶え絶えに酒場まで走ってきた船乗りの様子に、さすがにマリアンナも目を白黒させて問いを投げる。すると、船乗りは港の方を指でさして、
「い、今しがた、港近くの海岸に見たことねぇ船が流れ着いてきたんでさぁ!」
「あら、それってもしかして?」
 もしかしなくても、今話に上がっていたアマノホカリの船だろう。
「そ、その船ァ、幽霊船になっちまってたんですよ! 乗組員全員、還リビトになってやがった! 助けてくだせぇ、このままじゃ街に被害が出ちまう!」
「えええええええええ!!?」
 何だか、大変なことになっちゃってるようだった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
吾語
■成功条件
1.還リビト化した船員達の撃破
間が空きましたが、吾語です。
何か船が来たぜ。わー、どこの船だろう。ゾンビパニック!
そんなシナリオです。

◆やること
・還リビト化した船員をやっつける
 船員ゾンビは全部で20体ほどいますが、大した実力はないです。
 ただし放置するとアデレードの街になだれ込むので、確実に倒しましょう。

◆戦場
 戦場は船上です。笑うところじゃないですが。
 あとは海岸でも戦えるかなって感じで。
 ちなみに時間帯は昼間です。

◆マリアンナ
 幽霊船と化した謎の船、というシチュに瞳がキラッキラしてます。
 戦闘は皆さんの指示に従います。
 戦闘後は好奇心を満たすためと、船員の遺品を探すため、
 二つの目的から船内部の探索を提案してきます。
 どうするかは皆さんで決めてください。
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
13モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2020年05月02日

†メイン参加者 8人†

『ラスボス(HP50)』
ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
『おもてなしの和菓子職人』
シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)
『ひまわりの約束』
ナナン・皐月(CL3000240)
『みつまめの愛想ない方』
マリア・カゲ山(CL3000337)
『日は陰り、されど人は歩ゆむ』
猪市 きゐこ(CL3000048)


●うわー、本当に船だー
 ざざ~ん。ざざ~ん。
 砂浜に、一定のリズムを刻みながら白波が寄せては返している。
「海だわ!」
 こちら、普通に海を見飽きているのにテンション上がりっぱなしのマリアンナさん。
「海だな!」
 こちら、アマノホカリと聞いて興味津々かつハイテンションの『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)さん。
「潮臭いな」
 こちら、別にテンションは上がっていないというか、これを担当しているSTは彼がノリノリになっているところを見たことがない『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)さん。
「山の方が好きだぜ」
 こちら、マリアンナと一緒に酒を飲んでて酔い覚ましにちょうどいいかー、と思って参加した『森のホームラン王』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)さん。
「海ですねぇ~」
 こちら、海は別にどうでもいいけどマリアンナが生き生きしてるのでほほえましく感じている『食のおもてなし』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)さん。
「みつまめってどうなのだ!」
「「「何が?」」」
 こちら、色々と頭の中で考えてはいるけど圧倒的に言葉が足りないために何を言っているのかいまいち理解されない『ひまわりの約束』ナナン・皐月(CL3000240)さん。
「なるほど、見たことがない船だな。こいつは」
 こちら、マリアンナさんと同じく未知のアマノホカリ船に興味津々、瞳キラキラの『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)さん。
「……近衛軍って何なんですっけ?」
 こちら、アマノホカリ出身だけど庶民の出なのでお上のことはあまりご存じない、『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)さん。
 そして――、
「かーっ! 本当に近衛の船だわ! 何でこんなところにあるのよ、信じがたいわ! そしてキモい! 何が近衛の御紋よ、紋章のデザインがキモいわ! 船のフォルムだってダサいわ! 蒸気機関も積んでないから全滅するのよ、プププー!」
 こちら、言いたい放題に言いまくっているのはステシプロフの「過去」のところに『アマノホカリではやってない犯罪はない』とか明記していらっしゃる、何でイ・ラプセルで自由騎士を続けていられるのかわからない経歴の持ち主の『日は陰り、されど人は歩ゆむ』猪市 きゐこ(CL3000048)さん。
 今回行なわれるアデレードの海岸に漂着した幽霊船の攻略は、この九人でお送りいたします。
「近衛全滅してるのよね? 全員還リビトになってるのよね? やったぁ! ざまぁ!」
 ――きゐこさんのハジケっぷりはすごいなぁ。

●焼け、焼き尽くせ!
「あー」
「うー」
「おー」
 船の上では、還リビト化した船員達がのたのたと鈍い動きで歩き回っていた。
 とりあえず近くの岩場に上ってそれを確認したきゐこは、まずは威勢良く手を挙げる。
「フォーマルハウト使える人、挙手よー!」
「はいです~」
「使えますが、何でしょうか?」
 彼女に応じるように手を上げたのは、シェリルとマリア。
「うんうん、やっぱりみつまめなのだ!」
「「「だから何が?」」」
 嬉しそうにうなずくナナンに、挙手する三人が問い返した。
「ユニット名?」
「「「ユニット名!?」」」
 この期に及んで、会話が一人だけ三歩先を行っていることに、誰も気づいていなかった。
「おそらくはあの三人をアイドルか何かに見立てての言葉なのだろうが、いや、俺の勝手な予想を口にすることで皆が混乱するかもしれない。やめておこう」
 いや、アデルが気づいていたようだが、彼はそれを言うのをやめた。
「一応だが、敵はイブリースだ。準備はできているのだろうな?」
「おう、バッチリだぜ!」
 尋ねるツボミに、ウェルスが威勢よく返事をする。
「ねぇ、もう行くの? いつ行くの?」
「まぁ待て。もう少しだけ待て」
 完全に興味が先行しているマリアンナに、しかしツボミが制止をかける。
「こういうのはな、できる限りやきもきした方がいいのだ」
「え~、何でよ」
「何でよっておまえ、そんなのはな、散々やきもきしたあとの方がいざモノを前にしたときに得る感動が大きくなるからに決まっているだろうが!」
「そうなのね! さすがはツボミ、経験豊富ね!」
「ハッハッハ、調子がいいヤツめ。何ならもっと言ってくれていいんだぞ」
 おだてられて笑っているツボミに、オルパが言った。
「もう戦闘始まってるぜ?」
「早く言えェ!?」
 と、ツボミは仰天するが、実のところこれから始まるという感じであった。
 船上を一望できる場所に移ったきゐこ、シェリル、マリアが一斉に声を揃えて叫ぶ。
「「「フォーマルハウト――――ッ! ドカ――――ン!」」」

 ドカァァァァァァァァァァァァァ――――――――――――ンッッッ!!!!

 メチャメチャ派手な爆音と共に、甲板上に凄まじいまでの熱波が炸裂した。
「よーし、各自船に飛び移れ! まずはイブリース退治としゃれ込もうぜ!」
「了解した。これより状況を開始する」
「名づけるなら、うん。みつまめ花火なのだ!」
「「「その話、まだ続いてたの!?」」」
 三重の魔導炸裂後、表面がチリチリ焼けている船の上へ、まずはウェルス。次いでアデル。そしてナナン。ユニット名に関する話題は、彼女の中では現在進行形である。
「うわぁ……」
 焦げ臭さ漂う負念い降り立って、マリアンナは軽く呻いた。
 ひっでぇ有様であった。
 熱波に焼かれ、爆風に煽られ、吹き飛び、砕け散ったかつてヒトだったモノ達。
 まだ大半は人の形を残して蠢いてはいるものの、残っているのは大半で、要するにそれ以外は全体範囲のランク3スキル3連ぶっぱという(無慈悲×無慈悲)-情け容赦=地獄な攻撃によって戦闘に参加することもできずこのシナリオから退場したワケである。
 ひっでぇ。
「フハハハハハハハー! 所詮朝廷近衛軍など有象無象! ウラ幕府なんかに担がれてるだけのお飾り軍隊が私に勝てるワケないじゃない! ざまぁ――――!」
 腕を組み、ない胸を張って、勝ち誇る。
 そんなきゐこに、みんなドンびき。
「あれは無視して、ひとまず残った連中を叩き伏せよう」
 意識してバカ笑いするきゐこを視界の外に置き、オルパが愛用の双短剣を両手に握った。
「っと、その前に、だ」
 オルパは前に出る前に言うと、仲間の持つ武器に対イブリース用の魔導を施す。
「こっちも準備OKだぜー!」
 同じ魔道を用いて、ウェルスもアデルとナナンの武具に力を付与した。
「助かる。では、行くか」
「よーし、ありがとなの。ナナンンパワーでやってやるのだー!」
 言うが早いか、ナナンは手にした爆弾を敵が多く集まっているところに投げた。
 そして爆ぜたその威力に、また何体かの還リビトが吹き飛ばされる。
「あーぁ。あーあーあー」
 それを見て、ツボミがあんぐり口を開けた。
「これ、回復役必要か? もうあっちで休んでちゃダメか?」
「何を言ってるんですか、万が一ということもあるでしょう。ちゃんとしてください」
「そうだぞ、ツボミ。戦場では何が起きるかわからない。常に備えておくべきだ」
「真面目か?」
 一方的過ぎる展開にボヤくツボミへ、マリアとアデルが説教をする。
 その間にも、自由騎士達は還リビトの集団を各個撃破していった。
「そっち、いただきだ!」
 狙い澄ますは狩人のまなざし。
 ウェルスの構えたラフルが火を噴いて、還リビトの一体に風穴を開けた。
 そんな彼へと迫る、別の還リビト。
 しかし、その肩に突き刺さる風の如き一矢。
「よし、命中よ!」
 マリアンナであった。
 だが、死した肉体の還リビト相手に弓矢だけでは到底足りない。
 痛みもなく、情けもなく、ただ移ろって暴れる。それが還リビトの脅威である。
 が、ゆえに、
「そっち、向かせたわ!」
 放ったマリアンナ自身、そもそもこの一撃で倒す気など微塵もなく、叫ぶ。
 その先にいるのは、対イブリース魔導が付与された突撃槍を構えているアデル。
「上々だ。矢の直撃で生じた運動力によって、敵の向きを変える。上手いじゃないか」
 言いながら、彼は一息に甲板を蹴ってその穂先を還リビトの頭にブチ込む。
 頭蓋が粉砕される音は、何とも軽いものだった。
「あらあら、まぁまぁ」
 繰り広げられる戦闘という名目の一方的蹂躙に、シェリルが口を押さえて呟いた。
「皆さん、ノリノリですねぇ」
「いや、元凶は貴様らだぞ。自覚あるとは思うが」
 返したのは、ツボミである。
「フォーマルハウトなんてシロモノを三つも重ねりゃ、こうもなるってモンだ」
 魔導士スタイルランク3スキル・フォーマルハウト。
 与える効果は、行動遅滞化。肉体延焼。そして、呪縛による弱体化。
 もうすぐ終わるであろう一方的過ぎる戦闘を前に、ツボミは再度ボヤいた。
「だから言ったんだがな、これ、私必要か。と」

●調べろ、調べ尽くせ!
 興味と好奇心が先行しているとはいえ、弔うことを忘れてはいない。
 成り行き上、どうしても軽くになってしまうが、動かなくなった骸を一か所に集めて、自由騎士達は亡くなったアマノホカリの者達に対して黙祷を捧げた。
「さて、こやつらが還リビト化した原因も探らにゃならんな……」
 と、並べられた亡骸を前にツボミは言うのだが、
「まぁ、ここまで散々にボコされたあとだと、検死も一苦労なワケなんだがな!」
「ちょっとだけ、ちょっとだけチョーシに乗りすぎたわ! でも謝らないわ!」
 ボロボロの亡骸を前にして、しかしきゐこは開き直る。
「謝られても仕方がなかろう。……死因とかについては任せるぞ、ウェルス」
「おう、やれるだけやってみるぜ。で、そっちは?」
「当然、船の中を探索するのよ!」
 マリアンナは、鼻息も荒く拳を握る。
「おう、そうだな。ちょっと俺も興味あるんだよな、アマノホカリ」
 オルパも、マリアンナ同様、完全に未知なる異郷に好奇心を刺激されているようだった。許しを出せば、この二人はすぐにでも船の中に突入するだろう。
「わたしは、この船の厨房を見ておきたいですね~」
「文献があるようでしたら、私はそちらを少し確認しておきたいです」
 シェリルとマリアは、それぞれに目的があるようだった。
「ナナンはどうしようかなぁ、誰についていこうかまだ決めてないのだ!」
 そんなことを言いつつ、奔放に歩き回っているナナンもいる。
「俺はマリアンナに同行しよう。何があるかもわからんからな」
 アデルは、船の中に赴くようだ。
「よし、では探索開始だな。皆、調べ尽くすぞ!」
「「おー!」」
 かくして、船の探索が始まった。
 ――そして早々に、彼らは異常を目にすることになる。
「うわ、何だこれ」
 階段を降り、中へと入ったオルパが見たのは、随分と荒れ果てた船内だった。
 木造の船体だからか、かつてあったであろう出来事の爪跡が、そこにありありと残っているのが見て取れる。焦げた壁、凹む柱。床板の一部には、刀傷すらある。
「え、何があったの……」
 マリアンナも目を剥くその有様は、どう見ても戦闘痕であった。
「戦闘の跡。それも、行なわれてからかなり日数が経っているようだな」
 近くにある壁の焦げ跡を調べ、アデルが指先でそこをなぞる。
「ふん、何やらキナ臭くなってきたようだな」
 直前まで自身も興味深げな顔をしていたツボミが鼻を鳴らした。
「れっつ、探索なのだー!」
 そしてナナンが突撃していく。
「ちょっと待ってくださいな~。あらあら、厨房はどこでしょうか~」
「……本、何か残っているでしょうか」
 それに続いて、マイペースなシェリル。マリアが後に続いた。
「俺達も行こうぜ」
 オルパに促され、ツボミ達もまた船の奥へと進んでいく。
 一方、甲板上ではウェルスが交霊術をもって死者の残留思念を読み取ろうとしていた。
 その傍らには、フードを目深にかぶったきゐこが立っている。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
 早速、ウェルスが最も状態のよい亡骸に対し、交霊術を試みる。すると、
『恨めしや、あな恨めしや……!』
 感じたのは、強烈なまでの怨念。敵意。
「……あ?」
「どうしたのよ」
「いや……、こいつは」
 ウェルスは訝しみつつ、死者に向かって問いかけてみた。
「おい、俺の声が聞こえるか?」
『恨めしや、恨めしや……! おのれ、おのれぇぇぇ……』
 ダメだ、話にならない。
 怨念が強すぎるというか、これは――、何かと戦っている?
「なんだこいつ、船の上で何かに襲われたのか?」
「はぁ? どういうことよ……」
 きゐこもワケがわからないといった様子で、眉根を寄せた。
 それはウェルスも同様で、残留思念を読み取ることに集中しようとする。
『おのれ、ここに至って我らを謀るとは……、おのれ、カイコクハ共がァ……』
「――カイコクハ、何だそれ?」
 聞き慣れない単語を耳にして、ウェルスがきゐこの方を向く。
 説明を求められたのだと察した彼女だが、肩をすくめてかぶりを振った。
「知らないわ。聞いたこともない。……私がこっちに来てから出来た言葉っぽいわね」
 ウェルスは無言でうなずくと、残留思念の読み取りに戻る。
『おお、このままでは……、我が国が、アマノホカリが……、おお、ォォォ』
 随分と深刻げな様子だ。死を前にして、この亡骸は祖国のことを憂いていたらしい。
『アレが届きさえすれば、いずれかの国に、かのシンショさえ、届けば……』
「シンショ? もしかして親書か? おい、どうなんだ?」
『ぉぉぉぉ、せめて一太刀、報いをなさん。我が祖国を蝕むカイコクハ共、恥を知らぬウラバクフのやつばらめがァァァァァァァ……』
 ウェルスの声は、この死者には明らかに届いていなかった。
 そして彼は聞くのをやめる。これ以上は無意味だと悟ったからだ。
「……ウラ幕府って連中と殺し合ったらしいぞ、どうやら」
「はぁ!? 何でそんなことになってんのよ、あり得ないわ!」
 ウェルスから話を聞いて、きゐこは仰天する。
「ウラ幕府、ってのは何なんだ?」
「数十年前まで続いてた内戦『千国時代』を勝ち抜いてアマノホカリを統一した宇羅氏っていう連中が建てた軍事政権よ。神アマノホカリが消えて以来、すっかり名前だけの存在になってたアマツ朝廷を国の統治者に担ぎ上げて、表向きは朝廷の守護者として、だけど実際にはその権威を利用してアマノホカリ全域を支配してる統一政府のことだわ」
「ん? つまり朝廷の味方ってことじゃないのか、それ?」
「だから驚いてるのよ。っていうかカイコクハって何なのよ。ワケわかんないわね!」
「親書っつってたから、何かの使節団っぽいんだがなぁ……。どこの国に向けての使節団かもわからねぇし、通商連なら何か知ってるかねぇ、こいつは」
「わかんなーい」
 興味本位で首を突っ込んだ一件であるが、どうやら随分と大きな話になりそうだ。
 そんな予感を抱えつつ、二人が首をかしげていると、そこに船内からゾロゾロと他の自由騎士達が出てきた。探索を終えたのだろうか。それにしては早い気もする。
「何もなかったわ……」
「何もなかったな……」
「だがおかしい点は幾つもあったぞ」
 マリアンナ、ツボミ、アデルによる端的な報告。
「厨房、めちゃくちゃでしたねぇ~」
「書類のたぐいも、全部焼かれてました……」
 次いで、ひどくがっかりした様子のシェリルとマリアの報告。
「戦闘の跡があった。船の中、全体でだ。派手な殺し合いがあったようだぜ」
 そして最後のオルパの報告は、ウェルスの交霊術の結果とも合致するものだった。
「あー、ここまで明らかになった情報を総合すると――」
「この船はアマツ朝廷からのどこかの国への使節団だった。通商連がそれを知っているかは不明。しかし朝廷の味方であるはずのウラ幕府のカイコクハとかいう連中が船にいて、おそらくは殺し合いになった。そして全員死んだか、あるいは洋上で助けも呼べない状況に追いやられて結局全滅。その後、イブリース化した」
「意味わからないわ!」
 アデルがまとめた説明を聞いて、きゐこが声をあげる。
「……どうやら、携えていた何某かの親書が重要だったようだが」
 アデルが皆を見る。しかし、全員が首を横に振った。
 親書と目されるものを見つけた自由騎士は、誰もいないようだった。
「捨てられたか、燃やされたか……」
 その親書さえ見つかれば、もしかしたら何かわかるかもしれなかったのだが――、
「ただいまー、なのだ!」
 と、そこにナナンが戻ってきた。
「ちょっと見てみて欲しいのだ、筒ー!」
「ああ、うん。筒ね」
 一人元気なナナンが、片手で持てる程度の円筒形の何かを見せびらかしてくる。
 それに、マリアンナは軽く苦笑して返すのだが――、
「「「それだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!」」」
 きゐことツボミとウェルスが、ナナンの持ってきた筒を見て同時に叫んだ。
「え、みつまみ?」
「「「それはもういい!?」」」
 きょとんとするナナンに、アイドルユニットみつまめの面々がツッコんだ。
 かくして、回収された親書は王宮へと提出されることとなる。

 ――そして数日後、とんでもない事実が発覚した。

 回収されたものは、実は親書ではなかったのだ。
 ナナンが見つけた筒の中にあったものは、親書ではなく、神書。

 すなわち――、神アマノホカリ自らがしたためた、他に神に向けた手紙であった。

 歴史の中に消えたはずの神アマノホカリ直筆の手紙。
 あり得るはずのないその手紙が何をもたらすのか。それはまだ、誰にもわからない。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『みつまめの愛想いい方』
取得者: シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)
『みつまめP』
取得者: ナナン・皐月(CL3000240)
『みつまめの愛想ない方』
取得者: マリア・カゲ山(CL3000337)
『みつまめのセンター固定の方』
取得者: 猪市 きゐこ(CL3000048)

†あとがき†

はい、お疲れさまでした!
いやー、何か大変なことになりそうですね。

ええ、つまりアマノホカリ編の導入シナリオだったワケです!
ま、本当にアマノホカリ編が始まるかどうかは今後の皆さんの判断にもよりますが!

でもね、考えてみてくださいよ。
世界がこれだけ大変なんだから、他の国だって大変に決まってるじゃないですか!

というわけで今回はここまでです。
次のシナリオでまたお会いしましょう!
FL送付済