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【ゴールドティアーズ1820】ながれながれてほしいくつ



● ――May wish come true.

――それは星の瞬き。
 王都サンクディゼールの南。この国の水源でもあるスペリール湖は屈指の透明度を誇る湖だ。
 この時期満点の星空は今にも落ちてくる程に輝きを増す。
 その宝石のような星空をスペリール湖はさかさにうつして閉じ込める。
 
 毎年7月の上旬にはイ・ラプセルでは流星群を観測することができる。
 尾を引いて落ちる黄金の雫(りゅうせい)。それがゴールドティアーズ。

 星の涙は手には届かない。
 しかし鏡写しになった星はきっとすくい上げることができる。
 故に人々はその手にした星に祈る。

 遠くで聞こえるウタクジラの歌声が心に染み渡っていく。
 
 星降る夜に、願いを託して――。




「ねえ、流れ星よ、――くん」
 女はそれまでなら着るとは思っても居なかったましろのヴェールをめくり空を指差した。
 喪服はもう脱ぎ捨てた。呪われた旅路はもう終わり。
 新しい旅路が始まる。
「願い事はしたのか? ――」
 寄り添う男は愛しい女に話かける。彼もまた呪われた旅路を終えたばかりである。
「ええ」
 問に答えた女は幸せそうに笑んだ。
「どんな?」
「ひみつ」
 男には女がどんな願いを星に託したのかはわかっている。だけれどもわからないふりをした。
 りんごーん、とベルが時間をつげる。
「そろそろだな」
「ええ」
 男女は二人であるきだす。

 


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
イベントシナリオ
シナリオカテゴリー
日常γ
■成功条件
1.ミステルさんたちの結婚式を祝う
2.ゴールドティアーズを楽しむ
ねこてんぢです。
 今年もゴールドティアーズです。
 こちらではスペリール湖へカヌーで漕ぎ出して天と水鏡の星々に包まれてください。
 当日はもっとも流れ星が美しくみえる日になることでしょう。

 今回はスペリール湖のほとりで
 ザルク・ミステル(CL3000067)さんとエル・ミステル(CL3000370)さんの結婚式も行われています。
 参加不参加はご自由に。
 ご当人が参加しなくても結婚式は行われたという体で進行いたしますので、お二人の参加を強制するものではありません。
 常識の範囲内であれば、お好きに式を演出してください。
 数人の神官が出張してくれています。
 バージンロードは湖のほとりまで続き、その両端には簡易的な椅子が用意されています。
 流れはお二人の進行で。(こちらもお二人が不参加であれば 新婦入場→誰かにエスコートしてもらってバージンロードを歩き新郎の元へ→誓いの言葉&誓いのキス→フラワートスという一般的な流れを想定しています)
 観客のみなさまはいい感じに盛り上げてください。

 注意!!! 結婚式に参加される場合はタグ【結婚式】を冒頭につけてください!!!
 

 その他結婚式以外にも
 デートだろうがなんだろうが問題ないです。ばっちこい!
 食べ物の持ち込みは可能ですが、ゴミのポイ捨ては禁止です。
 ゴミは持ち帰ってください。

 カヌーは基本的に誰にでも貸出はされます。
 そこそこに広い湖なので他の方とぶつかったりはしないです。

 王族+クラウス、に会いたい場合に王城へ。アクアディーネに会いたい場合は神殿へ。
 王城からも流れ星を観ることはできます。
 メモリアはスペリール湖でぷかぷか浮いています。この日は皆さんのためにお歌をうたっています。
 クローリーは適当にそのあたりで楽しんでいます。

 その他ねこてんNPCおよび敵NPC以外のちょころっぷNPCは呼べばきますし、いつものようにEXでランダム希望していただければそのように。
 NPCをよんで結婚式をみていただいてもOKですし、別の場所で楽しんでいただいてもかまいません。
 


●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
0個  0個  1個  0個
10モル 
参加費
50LP
相談日数
10日
参加人数
39/100
公開日
2020年07月23日

†メイン参加者 39人†

『夜空の星の瞬きのように』
秋篠 モカ(CL3000531)
『おもてなすもふもふ』
雪・鈴(CL3000447)
『薔薇色の髪の騎士』
グローリア・アンヘル(CL3000214)
『水銀を伝えし者』
リュリュ・ロジェ(CL3000117)
『SALVATORIUS』
ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)
『祈りは歌にのせて』
サーナ・フィレネ(CL3000681)
『みんなをまもるためのちから』
海・西園寺(CL3000241)
『日は陰り、されど人は歩ゆむ』
猪市 きゐこ(CL3000048)
『ペンスィエーリ・シグレーティ』
アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)
『トリックスター・キラー』
クイニィー・アルジェント(CL3000178)



 ――僕でいいのかい? 君も物好きだね。
 ――ええ、だってあなたは私の大事な友達だもの。
 ――そうかい。なあ、君さ、あの頃と比べて魅力がなくなったね。
 道化師はことさら馬鹿にするような口調で女に言った。
 ――そうね。そうかもしれない。でもね――、あたしはその先を手に入れたの。だから変わった。あなたにとってはなんの面白みもない女になり果てたわ。
 そう言って女は老獪――いやまるで少女のように笑った。
 ああ、本当に、面白くない女になってしまったのだと思う。
 ――わかったよ、エル・ミステル。君の手を取ろう。平凡でつまらない人生を送るのであればそれはこの僕が祝うべきだ。
 そういった道化師に、女――エル・ミステル(CL3000370)は白いヴェールから覗く口元をほころばせた。
 ――ねえ、君。君の命は残り少ないだろう。おいておかれる男の気持ちが、わかるかい?
 男の意地悪は聲になることもなく星降る夜に溶け消えていった。

 ――♪
 結婚式を祝う楽曲(マーチ)が秋篠 モカ(CL3000531)、キリ・カーレント(CL3000547)、楽隊のジズ、そしてウタクジラであるメモリアによって奏でられている。
 キリはモカとアイコンタクトでその場で即興でセッションを奏でる。親友同士相手がどんな音を奏でるかなんてわかっている。
 騎士の大先輩であるザルク先輩の結婚式なのだ。最高の音楽を届けなくてはならない。奥さんのエルさんとはそれほどの面識はないけれど、先輩はそうとうの面食いだと思った。だってあんなに白いドレスがにあう美人さんだったのだから。
 讃美歌(ボーカル)を歌うのはミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)。
 神職とはいえ管轄は違うので仕事としては参加できない。というか友人たちのお祝いに仕事で参加するのは味気ない。
 シャンバラ潜入からずっとともに戦ったふたりの戦士の門出。
 それはとても感慨深くて――。
 ミルトスの鍛え上げられた腹筋からの歌声は星にもとどかんがばかりに響く。
「わわ、すごい。キリちゃんまけれませんね!」
「はい!」
 演奏する二人はミルトスの歌声を彩るべく指先をはしらせる。
 けれどモカの心にはひとつのあこがれもある。
 モカとて少女なのだ。いつか素敵なおよめさんになりたいとおもう。
 奥さんがなげたブーケトスはどこにいくのだろうか。とてもきになってしまう。
 けれど今は音楽を友人たちと奏でるのが楽しい。率先してとりにいくものではない。
 だから、二人だけではなく誰かの幸せにつながるように歌いたい。そう思う。

 ノーヴェ・キャトル(CL3000638)とセーイ・キャトル(CL3000639) のマザリモノの双子はせっせと給仕を続ける。
 おもいのほか集まった観客に東奔西走だ。おたがいテレパスによって適材適所、しっかりと給仕していく。
 ノーヴェはこういったことは得意とはいえない。けれど、やりたいとおもった。
 セーイに勧められたこともきっかけではあるがそれだけではない。
 あたたかい。がそこにあるから。
 ふれることはできない、けれど確かなそれを感じたかったのだ。
「けっこんしき、は……いい事……って、聞いた……。
 いい事……は、皆……が「あたたかい」に……なる……」
 二人にとって「結婚式」というものは生まれもあり遠いものだとおもう。
 結婚――他人が家族になるための儀式。
 ぴん、とは来ないけどきっとそれはあたたかいもの。
 セーイにとっても知識だけの其れ。ずっと一緒にいるために誓う約束。
 はじめてセーイはそれを大切なものだと強く実感した。みんな笑顔だ。幸せをみなで喜ぶ。
 よくわからないけれど素敵なことだ。
「セーイ……けっこんしきの次の、あたたかい、は――あかちゃん?」
 そうテレパスで伝えてくる気の早い双子の言葉に皿を取り落としそうになる。
「そうなの、かな?」
 彼ら二人は子孫を残すことができない。行き詰まりの種。
 だからあかちゃん、というものは理解の範疇外だけど。だからこそ――。

 同じくエリシア・ブーランジェ(CL3000661)も手伝いとしてあちらこちらを走り回ってる。
 一応神職としても仕事もできるのだが――。今日はそっちはついでである。
 食事のサーブにドリンクをくばり。双子とも協力して。
 今日の主役とはそれほど親しいわけでもないが、それならむしろ仕事も専念できる。そのぶん仲のいい人がかれらに祝福を送ることができるほうがいいだろう。
 戦争戦争で戦うだけでは頭がパンクする。だからお祝い事は祝うことが大事なのだ。みんなで楽しくいいものにしたい。
 それに――わたくしの番はたぶん来ませんもの。どこか遠くをみて、エリシアはつぶやいた。


 やがて、アレイスター・クローリーにエスコートされた花嫁がバージンロードを進んでくる。
 陰鬱な喪服を着ていた女はいまは真白のドレスに身を包んでいる。
 端的に、きれいだとザルク・ミステル(CL3000067)は思う。
 ちゃんとこの日を迎えることができてよかった。
 ザルクは緊張の面持ちで花嫁をバージンロードの先でまつ。

 赤い絨毯を歩くエルのヴェールの裾を持ち上げるのは雪・鈴(CL3000447)。真白のドレスと同じく真白の彼はこの花嫁に救われた過去を持つ。
 赤い道の先でまつのが最近になってよく名前のでていた男の人だろう。
 エルは彼の名を呼ぶときとてもやさしい顔になっていた。いつからだろう生き急ぐこともなくなった。穏やかに過ごす彼女は幸せそうで鈴もまたうれしくなる。
 そんな風にしてくれたのが彼――ノウブルの青年であるザルクなのだろう。
 鈴はノウブルが恐ろしい。だけれども。彼は亜人であるエルを愛してくれたのだ。そんな人が悪い人であるわけないとおもう。
 だから鈴は祝福の言葉を彼にかけなくてはならない。精一杯の勇気をもって。
 
 騎士として招かれてはや一年。数々の栄誉を得たアンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は今感無量の瞳で追いかけてきた自由騎士を見つめる。
 駆け出しだったあのころとは違う。今は彼と肩を並べて戦うことができる。
 そんなあこがれの存在が結婚などと。
 そんな彼の幸福を祝福しない理由などない。
 暗雲を振り払いその先の未来を勝ち取れるように。神に祈ろう。女神の祝福があらんことを。
 そして、アンジェリカは強く強く孤独を超えた先の未来に行かねばならない理由のために戦うのだ。

 デボラ・ディートヘルム(CL3000511)はバーバラ・キュプカーに絡まれていた。
 おじ様との恋バナについての追求だ。
「そりゃ確かに否定はしませんよ」
「そうなの? 殺すわ」
「ちょっと! せめてこういう場では殺意を抑えて!」
 実際のところレガート砦の進退にパノプティコンのあれこれに、自由騎士は忙しすぎて恋愛ごとを進める余裕などないのだ。
「あなたのほうが若いのにずるい」
「そういうとこです! 年功序列でもなんでもないと思うんですよ! ほら、重縛公の奥さんとかめちゃ若いですし!」
「少女趣味ね。殺すわ」
「だからーーーー! その殺意(ガッツ)を婚活にまわしましょうよ!」
 デボラはなんでこんなフォローしているのかもわからない。自分の恋愛すらままならないのに!
「あ! ほら! 星がながれましたよ! お願いお願い!」
「結婚結婚結婚結婚デボラより先に結婚血痕結婚」
「なにかやばそうなの混じってる!」
「あなたは何を祈ったのよ?」
「え? 今より幸せになれるように歩めますように、これくらいささやかなほうが――いたっ!」
「なんかむかついたわ」
「今おもいっきりお尻つねりましたよね!? バーバラ様」
「なんのこと~~~~?」

 あの二人が結婚かぁ。
 傲慢おじさんことボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)は仏頂面をほころばせて二人を眺める。
 彼らの過去こそはしらないが自由騎士としての彼らのことはよく知っている。
 目頭が熱くなる。
 今日は最高の式にするために仕切り屋でもなんでもしてやろう。問題は起こさせない。
 デボラとバーバラがやけに怖いことを言ってたような気がしたが(いっていたのはバーバラだけだが)聞かなかったことにした。
 あれは触ってはいけないと傲慢アンテナがそう察知したから。
 まあ暴れだすことはないと思う。多分。きっと。めいびー。
 でも暴れだしたら止めようと思う。大けがしたとしてもかまわない。二人のためならこの身を犠牲にすることすら厭わないから。
 
 
 これは本当にめでたい話だ!
 戦争ばかりで心が沈んでいたナバル・ジーロン(CL3000441)は結婚式が純粋にめでたくて仕方ない。
 失って、なくすだけの戦争。しかし未来を紡ぐためには必要で、戦争が絶対悪だとは言えないとも思う。
 ここにはその失うことで紡いだ「未来」の「希望」が具現化されている。
 あの二人が十年後も二十年後も笑っていられるようにしなくてはならない。強く強くそう思う。
 それにしても。
 幸せそうな二人をみて思うことがあった。
 オレも結婚してえなああ!!
 相手はいない、と本人は思い込んでいるのだが、彼の周りには女の子の存在はやけに多い。
 だけど――。
 その前に幸せにしてやらないといけない女の子がいる。
 小さなおびえる幼馴染の女の子。あいつをなんとかしないと――。

 ともに戦う仲間が愛を語って結ばれる。
 まるでロマンス小説のようだとアリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)はため息をつく。
 きれいに着飾った花嫁はきらきらしていて。
 星降る素敵な夜に永遠の愛を誓いあって祝福されるなんて。
 女の子であればだれだって憧れちゃうやん!
 うちにもいつかこんな日が――。
 まあその前に相手どころか好きな人すらいない。
 ゴールドティアーズに願いをかければ、いつか素敵な人が現れるかもと、アリシアは一生懸命願うのだった。

 同じくあこがれをもって祝うのはティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)。
 ずっと一緒にいたいと思う誰かと巡り合えて
 その思いが重なるなんて、奇跡でしかない。
 とても素敵で、とても素晴らしいと思う。
 私もいつかそういう人に巡り合うことができたら。
 そう思ってしまうほどに、ティルダは乙女だ。
 だから星にいのる。願わくば。
 お二人の幸せが永遠でありますように、と。

「サシャの自由騎士仲間の結婚式なんだぞ! すごいんだぞ!」
 サシャ・プニコフ(CL3000122)の住んでいる教会はそれほど大きくない――というか小さな教会なので花嫁花婿など近くで見ることはない。
 だから教会の子供たちを連れて一緒にきれいな花嫁さんを見に来たのだ。あとおにくをたべに。
 子供たちは、特に女の子たちはそのきれいな花嫁をみて目を輝かせる。
 実際のところサシャは二人と直接の面識があるわけではないのだがおねえさんとして子供たちに花嫁さんを自慢をしたかったのだ。
「あ、フラワーシャワーするらしいぞ! みんなでいくぞ!!」
 
 会場の隅で眩しそうにルエ・アイドクレース(CL3000673)は二人を見つめる。
 新米自由騎士の自分は新郎新婦どちらとも親しいわけではない。これくらいの位置がちょうどだ。
 くぴり、とエールを飲めば清涼感のある苦みがのどを通る。
 あまりよくは知らないが名前はよく通っている二人だ。
 そんなふたりが幸せになればいいと思う。
 しかしそんな風に一人で眺めているなんて許さない。
 彼がエリシアに引っ張られて二人の前につれていかれるまであと20秒。

 そうかふたりは結婚するのか。
 月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)が目を細めて、幸せそうな二人を見つめる。
 ふるさとならいざ知らず。
 イ・ラプセルの儀礼というのは変わったものが多い。祝いの場で下手なことはできない。ヨツカは遠目に見守る。
「本当によかった」
 ヨツカはつぶやく。
「と、おもうのでしたらその言葉を伝えないとですわよ!!」
 右手でルエを引きずりながらエリシアがヨツカを左手で握る。
「ああ、そうだな。そうだ。そのとおりだ」
 エリシアの言葉にヨツカはうなずく。
「だがヨツカは礼儀がわからない」
「そんなことでしたら! わたくしにおまかせくださいませ! 礼儀作法であればなんでおまかせあれですわ!!!!!!!!」
 エリシアのなんちゃって礼儀レッスンに騙されたヨツカとルエはとんでもない挨拶を新郎新婦にすることになる。
 
 リュリュ・ロジェ(CL3000117)は緊張してがちがちだ。
 自由騎士同士の結婚、そんな日に立ち会えるその喜びに浮足立つ。
 ご祝儀とか包んだほうがいいのか? いやそういうのは固辞しそうなふたりだ。
 どんなふうに何を伝えればいいのかもわからない。
 当の本人よりも緊張したリュリュはせめてと二人に声をかける。
 ちなみに言い切るまでに4回も噛んだことは特筆しておこう。
 もちろん二人には笑われたがそれはそれ。二人の笑顔が幸せそうだったのがとてもうれしかった。

「ザルク! エル!! 結婚おめでとう〜!! ホントに、ボン"ドに"お"め"でどう"ぅ"ぅ"〜!!」
 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で号泣するのはアンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)。
 祝福しているのはわかるが酔いも回っているのか何を言っているのかわからない。
 グラスをふりまわして泣き散らかすアンネリーザもまた幸せそうだ。
(それにしても、ほんとエル綺麗ね……)
 今までの道のり。つらかったシャンバラへの道のり、そして紆余曲折あって結ばれた二人。その思いでにまた涙があふれてくる。
(ほんと、ほんとよかった~~~)
「いいなあ。ウエディングドレス。私も作りたい。あと着たい。
 相手、いない。
 いい人! ほしい~~~~~~~~~~~!!」
 泣きじゃくるアンネリーザをボルカスがなだめるのであった。

「これから新しい未来を二人で作っていくのよね――。
 あ、でもエルちゃんには偶に魔導の研究を手伝ってくれると……いや……くぅ!!! 駄目ね! 子育てとかもあるものね!!! 悔しいけどそっちも大事だわ!」
 ことさら猪市 きゐこ(CL3000048)ははしゃいでいる。
 大切な友人の吉報なのだ。喜ばないはずはない。気が早いわよ、とあきれるエルにザルクがそうなのか? なんて問うものだから周囲がヒューヒューと沸きはじめる。
「くふふ♪ ザルクさんもちゃんと稼がないとね~♪ エルちゃんとその子供を養っていかないといけない物ね♪ ……まぁ危ない事は少なめにだわ?」
 なんて揶揄うきゐこにザルクがうるせー! と返事する。
「せっかくだから派手にしたいわね。花火となないかしら? 最悪上空にフォーマルハウト打ち上げればそれっぽくなるかしら?」
 突然物騒なことをいうきゐこ。
 面白い! とノリノリになった数人をボルカスが必死で止めた。


 ああ、めでたい、本当に。
 非時香・ツボミ(CL3000086)は目を細めて幸せな二人を見つめる。
 みんな笑顔でたのしそうだ。当然だこんな時代だというのに、異種族同士の結婚が祝われているのだ。
 奇跡に近いそれだ。
 ――自分はアレをしっている。
 何よりも二人が幸せそうで、きっとこの先もずっと幸せなのだろう。
 ――忘れたわけじゃない。忘れたことにしたかっただけだ。
 まぶしいな。本当に。
 ――あれは確かに昔自分が憧れた――。
 さもしい思いにツボミは苦笑して目を拭う。この涙の本当の意味はだれにもあかすことはできない。
 どうせ感動ゆえ感極まったものだと思われるはずだ。
「おいおい、鬼の目にも涙ってやつか」
 隣で参席していたアーウィン・エピが揶揄うように言う。てかお前こそ目尻に涙がたまっているのに気づいてないのか?
「いい式だからな。その貴様――お前はああいうのは好きか?」
「きれーだとは思うが、まあ遠い話だよな」
「私はこうみえてああいうのが好きでな。憧れているんだ」
 笑ってくれといわんがばかりにツボミは自虐的に言う。
「ふーん、女ならそうなんじゃねえの?」
「あんな風にドレスきて、幸せそうに笑って――
 まあどうせ私がきても似合わないだろうがな」
 精一杯の強がりが言葉の先を震わせる。ひとかけらの勇気がこぼさせた自棄にもにたその言葉。
「そうか? ふだんから白衣きてるんだ。それに合ってるし、ドレスでもそんなかわんないだろ」
 本当に、お前は――。
「お前はアホだろ。白衣とドレスの違いもわからんのか!」
 言い返す言葉も震える。何かが救われたような気がして。でもそれ以上の複雑な思いがツボミの胸を締め付ける。
「お前はデリカシーがない」
 そういって反対側からアーウィンの袖を引くのはグローリア・アンヘル(CL3000214)だ。
「なんでだよ。そういうお前はどうなんだよ」
 問われて答える。
 自信をもって。
「もちろん子供のころは憧れていたさ。お嫁さんだとかお姫様だとか」
 しかし両親が殺され貴族としての地位を失い生きるだけに必死だったグローリアにとってもまた遠い話になっていた。
 しかしそういった二人を目の当たりにすれば、憧れはまた蘇ってくる。
 普段はその気がなさそうなやつだって、まじかでみれば触発されるというものだ。白衣の袖で涙をぬぐうツボミを見ながらそれは間違いではないと疎いグローリアでも気づく。
「ほらな、せんせ、グローリアだってそうだから女はみんなそうなんだって」
 得意げに言うアーウィン。ほらみろ、ツボミがなんとも言えない顔をしている。私だってきっと同じ顔をしているだろうとグローリアは思う。
「じゃあ、私にもウェディングドレスは似合うとおもうか?」
 だれでもない。アーウィンに聞きたいのだ。彼にウソであっても似合っているといわれたかった。
「は? 背も高いしグローリアも似合うと思うぜ? 最近結構女っぽくなってきたしな!
 なんだ、ふたりともお嫁さんにあこがれるってかわいいところあるんだな。
 そういう可愛げを普段からみせれば、野郎にもモテるんじゃないないか?」
 ツボミとグローリアは顔を見合わせて半眼で頷き――。
「いてええ!!」
 両方から足を思いっきり踏んでやった。

 はあ。
 ため息一つ。ザルクは知っているが奥さんとの面識はない。遠くから喧騒を眺めて天哉熾 ハル(CL3000678)はもう一度ため息をつく。
 あんなふうに誰かと肩を並べて笑いあうことができれば、幸せなのかしらと思う。
「こんなところで一人かい?」
「えっと、暗躍くんだったかしら?」
 これまた面識も大してない相手が声をかけてきた。ハルは見た目もいいしお酒をのむ肴にはピッタリの相手だなとは思う。
「物騒な呼ばれ方だね」
「アレイスター、たしかそんな風によばれていたわ」
「いーや、僕の名はトリスメギストス。カリオストロでも可。そんなかんじ」
「ふふ、面白いことをいうのね。私がおごるからどう? 一緒に飲まない?」
「美人からのお誘いであれば、そりゃあ断る理由ないよね」
「あらあら、お上手。思っていたよりもずっと背がたかいし、モテるんじゃない?」
「それが全く」
「なのに生気が感じられない。アナタ生きてるの? 死んでるの?」
「さあて、どっちでもありどっちでもないよ」
「少し噛ませてよ。珍しい血をしてそうだわ」
「首筋をかまれるならベッドの上だけってきめてるのさ」
「ほんと面白い人ね、好きなものはある?」
「ソースヌードルなんて大好物だぜ?」
「あ、あっちにあったかしら……買ってくるわね」
 ハルがソースヌードルを買ってもどってくればそこにはもう誰もいない。
「あらあら、逃げられちゃったかしら?」
 手の中のソースヌードルをすすって、ハルは笑った。

「こういうの、あかんやつ……ぼく、陰キャだからあってない」
「何をいってるんですか? アンセムさん」
 たまき 聖流(CL3000283)に連れ出されたアンセム・フィンディングは居心地悪そうにあたりをきょろきょろする。
「自由騎士の方から愛を誓いあう方が出るなんて――とてもすてきですね……
 しかもこんな星降る夜なんて――!!」
 きらきらと自らの瞳に星を閉じ込めたたまきはうっとりとする。
 花嫁さんもとても素敵で……。とため息をついてばかりのたまきは突如アンセムに向き直る。
「アンセムさんはどうですか?」
「え? ぼく? ぼくにはとおい話、だね。ぼくは、マザリモノだから幸せにはなれない」
 ノウブルのたまきにとってそれは思ってもない言葉だった。そうだ、ノウブルは圧倒的に「恵まれている」。
 マザリモノは最下層のヒトだ。なにも望めるものはない。差別撤廃とはいえヒトビトの奥底に眠るそれは払拭できているとはいえない。事実イ・ラプセルを出ればマザリモノの扱いなど家畜以下なのだ。
「アンセムさん! 私と結婚して……ください!!」
 たまきから飛び出したのはとんでもない申し出。アンセムは目を白黒させている。
「アンセムさんを幸せにしてみせます……! ずっとずっと隣にいます……遠い話、じゃない、です」
「ききき、きみ、なにいってるかわかってるの?」
「もちろんです! 私はアンセムさんのことを知りたいです!」
 乙女には身分も種族も、差別もなにもかも関係ない。ただ、目の前の彼を幸せにしたいと、そう思ってしまったのだ。
「きみ、意外と、大胆というか……その、突然すぎてわからないけど。その、
 友達から、なら……。まずは君のことを知りたいと、思う」
「はい!!」
 そう答えて笑ったたまきの笑顔が可愛いとアンセムは思ってしまったのだ。

 
 バージンロードを歩いてきた花嫁がザルクのとなりに並ぶ。
「誓いの言葉を
 新郎ザルク・ミステルは新婦エル・ミステルを病めるときも健やかなるときも愛することを誓いますか?」
 神官の言葉にザルクは強く頷く。
「誓います。この命ある限り彼女を幸せにし続けると」
「誓います。もうどこにも行かないと。そばを離れないと。ずっと一緒。死が二人を分かつまで。でも――」
 エルははっきりと宣言する。
「神様に誓うのではなく。ザルク・ミステルに」
 神官は驚いた顔をするが、すぐに笑みを浮かべ頷き、続きを促す。
「愛してるわ、ザルク・ミステル。そして……ジュリアン・スミス」
「愛している、エル」
 ザルクが花嫁のヴェールを捲る。
 幸せそうな顔のエルがほほ笑んでいる。
 二人のシルエットが重なり大きな拍手が湖に響き渡った。


 みな一様に笑顔で彼らの未来を祝う。
「おめでとうございます、御二方」
「本当に、お二人ともご結婚おめでとうございます!」
「二人とも、おめでとう!」
「ザルクさん! エルさん! おめでとう! 本当に、おめでとう!
どうかお幸せに! 二人が手を取り合えば力は百万倍だぜ!」
「ほんま、おめでとうやで!!」
「ご結婚、おめでとうございます」
「結婚おめでとう。どうか末永く幸せに、素晴らしい家庭を築けるように願っている」
「ザルクさん、エルさん、ご結婚おめでとうございます!」
「その旅路の先に、幸いがありますように」
「2人の門出を祝って!かんぱーーーーい!!!」
「ふふふ♪結婚おめでとう!
二人とも復讐の方も満足いったみたいだしとても良い事だわ!
これからは楽しい未来を二人で作っていってね!お幸せに!」
「これからも末永く幸せにな」
「おめでとう、ふたりとも。仲良く長生きしろよ」
 まるでシャワーのように降り注ぐお祝いの言葉に呼応するように笑顔のエルがブーケを投げた。 

 愛とはなにか。
 哲学者は考える。
 性欲と種族保存本能とは別なのか?
 アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)は哲学する。種族保存本能であれば愛し合うのは同種族同士になるはずだ。なぜなら異種族の子はそこで終わってしまう生き物であるのだから。
 でも彼らは種族を超え愛をはぐくんだ。それほど珍しいものではないとは言え、それほどよくあることでもない。
 これまでは愛、なんて何となくそこにあるものだと思っていた。
 しかし、彼のことを考えるようになってからはわからなくなった。なんせいちいち行動するたびに彼が脳裏に浮かぶのだ。
 例えばコーヒーを飲めば彼は砂糖をどれだけいれるのだろうと思う。勉強をすれば、ここは彼はどう思うのだろうなんておもって勉強が滞ってしまう。
 それはこれまで経験したことのない壁。
 そんなアクアリスの目の端にまっしろい花束が投げられたのが見えた。その瞬間彼女は不格好に走り出す。
 決断とかそういうものとか関係なく条件反射に。壊滅的運動音痴の女はその花束が欲しくてたまらなかった。
 それがまるで「愛」というものの答えにみえたから。


 式のプログラムが終わり場が砕けたころに警備の手を緩めたアデル・ハビッツ(CL3000496)が二人に話しかける。
 その手には似合わない花束を用意している。
 二人は顔を見合わせて少し笑う。
「せっかく結婚したんだ。最前線は俺たちに任せて二人で隠居生活してもいいんだぞ」
 冗談をいうのは珍しいなと笑われた。隠居生活などしそうにもない二人だ。
「死ねない理由ができたんだ。命は大事にすることだ。
 二人ともおめでとう」
 アデルは心からのお祝いの言葉を仲間にかける。
 こちらとてお前たちを死なせれない理由ができた。その重圧がやけに心地いいものに感じる。
 ――いつからだろう。流れ者の自分がこれほどまでに誰かの幸せを願えるようになったのは――。
 
 ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)もまた二人に声をかける。
 付き合ってからあっという間のこの吉報。
 しかし、亜人であるウェルスは正直この二人が付き合うのはともかく結婚――子をなすことは反対だった。
 ウェルスは結婚するのは同族同士というごくごく普通の価値観の持ち主だ。ノウブルと亜人の子がどういう扱いをされるかは痛いほどわかっている。それはこの国が亜人に寛容な理想郷であってもその決断は不幸につながると思っていた。しかし――。
「けどまあ、今なら二人なら何とかなりそうだって思ってる。根拠なんてないけどな」
 それはウェルス本人にも説明はできない予感だ。二人を見ていれば、不思議と何とかなる、そう思えてくるのだ。
 新しい未来の形。新しい未来の夢。
「というわけで! 俺は二人の門出を心から祝福することにしたって訳だ。これからも末永く幸せにな」
 
 



 湖でぷかぷか浮かぶウタクジラをみたいとサーナ・フィレネ(CL3000681)はスペリール湖に向かう。
 どんな歌を歌うのだろう。一緒に歌ってみたい。
 桃色のクジラが歌う声に合わせて自らも声を出せば、ウタクジラ――メモリアが呼応するように歌声を変える。
 ばれちゃったとサーナが歌うのをやめれば、メモリアはどうして? と問いかけてきた。
「あの?」
「歌って。私もあなたの歌が聞きたい」
 その言葉にサーナが歌えばそれに合わせるようにメモリアが邪魔にならないように歌う。
 一曲歌い終えたサーナは空を見上げれば、星がおちる。
「あ、願わないと 皆(ヨウセイ)を助ける力になりますように」
「ふうん」
 メモリアが大きく口を開ける。
 たべられちゃう? とサーナがおびえると、メモリアは水を口に掬い上げた。
「え?」
「みんなを助けるなら星いっこじゃたりないでしょう?」
 メモリアの口の中にはたくさんの星が映っている。
「ふふっ」
 サーナは笑う。こんなにたくさんの星に祈るのはすこし骨が折れそうだ。

「アルヴィダさん。いや、いやキャプテン・スカンディナ
 回りくどいのは良くないね、単刀直入に言うよ
 この戦争を終えたら、僕を貴女の船に乗せて欲しい」
 のっけからのアダム・クランプトン(CL3000185)の言葉にそれを向けられたアルヴィダ・スカンディナだけではなくジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)も飲んでいたものを盛大に噴き出す。
 すこし話を戻そう。
 結婚式に参加する前にとアダムが酒場にいくというので、ジュリエットもついていくことにしたのだ。
 酒場には十中八九ライバルがいる。アダムがライバルに何を言うのか、気にならないはずはない。
「おーーーっほほほほほ!!! ごきげんよう、アルヴィダ・スカンディナ!!!
 アダムから貴女に、お話したいことがあるそうですわ!
 わたくしも話の内容が気になるので同席いたしますわ! よろしいかしら!? よろしいですわね!!!」
 その言いようは不安の裏返し。アダムが何をアルヴィダに言うのか――。もし、もし、思ってるようなことだったら――。
「あんたか。あいかわらずうるっさいね。静かに酒も飲めないのかい。で、なにさ。アダムがアタシになんの用????」
 アルヴィダも興味深そうにアダムに問いかけた。

 そして冒頭に戻る。
「ああ、海賊になりたいわけではないんだ。貴方達はいろいろな国にいくだろう?
 そこに僕はついていきたい」
 ジュリエットはアダムの言葉に気が気でなくなる。アダムがどこかにいっちゃう、どうしよう、どうしよう。
「どういうことだい?」
 いぶかしげに問うアルヴィダにアダムは不敵に笑う。
「僕は世界中すべてを守ると決めた。そのためには足が必要なんだ。都合がいいことを言ってるのはわかってる。もちろんタダとはいわない。
 アルヴィダさん。僕はあなたを守る。すべての災厄から!」
 どん! とテーブルに手をついてアダムがアルヴィダに詰めよればアルヴィダの顔が赤くなる。そういう意味じゃないのは分かっているが乙女回路が無駄にきゅんきゅん回る。
「だからどうかお願いだ! キャプテン!
 もちろん、蟲毒がおわってからだけど! あなたと一緒に海原を駆けたいんだ! どうか僕にすべてを守らせてくれ!」
 海賊仲間が口笛を吹いて冷やかしてくるがアダムには聞こえない。
「貴方が自由騎士の名を捨てろというなら捨てる!!」
 どちらにせよ海賊の仲間として生きるのであればまっとうな騎士を名乗れないだろう。それでも彼には守るという信念がある。
(そんなのいやですわ!)
 ジュリエットは唇を強く噛む。けれど大好きなひとの決意。いうなれば男の決意に女が口をだすなんて野暮にも過ぎるとも思う。
 アダムは戦争後の話をしているのだ。もし、もしもだ。もし戦争が終わらなければアダムは遠くにはいかない――いけないのではなんて不穏な考えが一瞬だけ脳裏をよぎる。
 それはアダムにとっても人類にとっても裏切りの考えだ。
 だけど、恋する乙女にとっては好きな男以上に大切なものはない。たとえそれが世界と天秤にかけるようなことだとしても。
「まあ、落ち着きな、アダム。まだ戦争は終わっていないだろ? 終わってからではだめなのかい?」
「ああ、今聞きたい」
 アルヴィダはため息をつく。傍らの少女なんて明確に動揺しているというのにアダムはそれすら気づいていないのだろう。遠くに目が行き過ぎて近くの小さな不安を救うなんて見えていない。なにがすべてを救う、だ。
「アタシはかまわないけどさ。船に乗るなら最初は雑用仕事はしてもらうよ」
「もちろん!」
「で、ジュリエット、あんたはどうすんのさ」
「え?」
 突然水を向けられたジュリエットが顔をあげる。
「どうせ世界を回るならあんたみたいなうるさいのもいたら楽しいかもね。ああ、あんたはもちろんデッキ掃除当番以外ないんだけど」

「ねえちゃんいける口かい?」
 エルシー・スカーレット(CL3000368)はいつのまにかスカンディナ海賊団の団員を引き連れて酒盛りだ。
 行きつけの酒場にいた彼らと意気投合したのだ。
「夜になったら流れ星が綺麗よ! それまでヒマだから飲んで待ちましょう! カンパーイ!」
「「うぇーーーーい!!」」
「スペリール湖ではザルクさんとエルさんの結婚式が開かれているそうよ!みんな、カンパーイ!!」
「「うぇーい!!!!」」
 店のエールにワインに果実酒。次から次へとカラになっていく。
 明日きっと二日酔いでぐでぐでになるだろうけどそれがごわくて酒がのめるか!
「いくら身寄りのらい女らからってこんらに美人なわらしに男が寄り付からいってどういうことらぁーっ!」
 できあがったエルシーが叫ぶ。
「姉さん! オレ彼女いないんで!! 立候補します!」
 海賊の立候補にエルシーは一瞥すると。
「顔が好みじゃないーーーーーーーー!!!!!! せめて金髪で優し気な顔でそんでそんでかっこよくて!」
「そんな~~~~!!!!!」
 それはただの代わり映えのない日常。こんな日常を守るために。
 エルシーは戦うと覚悟をきめているのだ。
 ずっとずっとこうやって笑っていることができるように。


 メッセージは送っておいた。
 身重の妻の出産予定日は来月に迫っている。そんな妻を置いてはいけない。
 というよりは妻が式に出席したいと言い出したのだ。もちろん許可など出せない。故にテオドール・ベルヴァルド(CL3000375)もまた留守番と相成ったのだ。
 もちろん妻は拗ねた。しかし、無理して大人ぶっていた少女が自分には素直にわがままを言うようになったのはなんともほほえましい。愛しさも増すというものだ。
 最近は腹部をなでながら赤子が腹を蹴ったとほほ笑むようになった。そんな時はまさに母親の表情になる。
 妻のくるくると変わる表情や雰囲気の変化というものにはよく気付くようになった。それが心地よくてむず痒い。
「――体調はどうだ?」
「ええ、とっても元気です。はやくお父様に会いたいっておなかをけってくるんですよ」
 そう言って笑う妻は幸せそうで。
「いや、君のことだ」
「テオドール様は赤ちゃんのことは気にならないんですか?」
「そんなことはない。君もおなかの子も元気でいてほしいと思ってるよ」
 だからこそ、最後の1年にしてはいけないと思う。生まれる子供が大人になる未来はなくすわけにはいかない。

 一人カヌーでぷかぷか浮かぶ。
 ニコラス・モラル(CL3000453)は虚空に向かって男の名をよぶ。こんな夜に色気はないとはおもいつつも。
「なんだい? 人気のないところに呼び出して。僕ぁ男色家じゃあないぜ?」
 カヌーの穂先にまるで体重など感じさせないようにしゃがんでいる男が答えた。
「他に誰にも聞かれたくないからね」
 そう切り出したら内容は決まっている。クローリーは黙って先を促す。どうせ何もかも知っているのだろう。前置きは必要ない。
「思ったより治りが遅くてね。十中八九、精神的要因と俺がやった事が原因なんだろうけど。話した限りそんな感じもしなかった。奇跡とか専門でしょ?」
「僕だって、君らが使う奇跡について確実な説明はできないんだぜ? まあ医学的な側面で言えば彼女はもう戦えないだろうね。
 とはいえ青い猫ちゃんがヘルメスの権能を奪ったんだ。そのうちなんとかなるだろうさ。
 普通の女の子としての余生を送らせてあげなよ」
「あー、ね。それはまあ、それでいい。俺の可愛い嫁だからね。もう戦う必要はないさ」
「娘じゃないの?」
「昔さ、約束してもらったんです~。お父さんのお嫁さんになるって」
「それ契約履行の義務ないやつじゃん」
「嫁だろうが娘だろうが、俺はアイツの幸せは願ってる、いつだって」
「君じゃ彼女の旦那は無理だな。だって、君は今完全に父親の顔でしかないもんよ」
「そうか、そうかー」
 クローリーの言葉にニコラスは嬉しそうに笑った。


 一方王城では。
 ブランディーヌに挨拶をした海・西園寺(CL3000241)はとある言葉をエドワードに伝えようとしていた。
 それは海の誓い。なんども胸に抱いてきた誓い。
「自由騎士所属、西園寺・海です。星の綺麗なこの夜に、王族の皆様の願いが叶う事をお祈りさせて頂きたく参りました。エドワード王の願い……神の蠱毒の勝利に……そして、王族の皆様の繁栄を私も願い、叶えられる様邁進していく所存です」
 普段は人の目を意識して避ける海はまっすぐにエドワードを見据え、瞳に意思を乗せる。
(王様には申し訳の無い事ですが、万が一の時……西園寺は王様より、ティーヌの身の安全を取るかと思います)
 その意思にエドワードは少しだけ目を見開き、ほほ笑んだ。
「ああ、海・西園寺、君の誓い聞き届けた。頼んだよ。みんなを。そして妹を」
 それでいい。とエドワードはうなずく。
 ともすれば打ち首になっても仕方ない不敬なその言葉を飲んでくれたことに海は深く礼をした。
 そして、大切な彼女のもとに向かう。
 ダンスの練習はした。彼女を恥ずかしい目にあわせないために。
「ティーヌ! 今宵は私とダンスをお願いします」
 イ・ラプセル王女は嬉しそうに頷き、手を伸ばした。

「エドワード陛下、お茶はいかがですか?」
 セアラ・ラングフォード(CL3000634)は謁見の間をみてリラックス効果のあるハーブティを差し出す。
「給仕のようなことをさせてすまないね。君は騎士なのに」
「いえ、そんな。やりたくてやっているだけです!」
 エドワードがカップを受け取り、香りを楽しんでから口をつける。
 セアラは王の顔をみつめる。あの時の瞳の陰り。来年誕生日のお祝いができないということではない。もっともっと深いなにかが王の瞳を陰らせているのだとおもう。
 白紙の未来の回避、創造神を倒すことが自由騎士の使命だ。そのためにやることはいくらでもある。
 二面作戦も、インディオも、たくさんのことが王の肩にのしかかっているのだろう。
 だから、だから今だけは。今だけは重いものを横において一息ついてほしかったのだ。
「ありがとう、セアラおいしいよ」
 そういった王様の後ろの窓の向こう星が流れた。
 だからセアラは願う。どうかどうか、――。

「アレイスター! いるんでしょーーー!!」
 遠くの喧騒を避けるようにクイニィー・アルジェント(CL3000178)が夜空に向かって叫ぶ。
「結婚ねえ。
 アレイスターは何回かしてたんだっけ?」
「まあね」
 まるで最初からそこにいたようにクローリーが答えた。
「どう? 結婚式っていいもの?」
「あんな風に祝福された覚えはないけどね」
「あたしは日陰ものだからああいうのまぶしくてさ。溶けちゃいそう!」
「同感。さっさと逃げてきたぜ」
「でもそうだなぁ。君があたしをお嫁さんにしてくれるなら喜んでなるよ?」
「冗談、おっぱい大きくしてからこいよ」
「胸がないのはそれはそれでステータスだよ!」
「大は小を兼ねるからでっかければちっさいぶんのステータスも兼ねるわけじゃん?」
「???? 意味わかんないけど、もし君と結婚したら、四六時中一緒にいて君が何をしてるか片時も見逃さない様に瓶詰めにしちゃいたいね!
 君はスルリとどっかに行っちゃうからあたしはヤキモチを妬いちゃうんだ」
 答えはない。いつものことだ。こんな風にするりと消える。だからあえて、あえて振り返る。
 夜の闇に溶けたように、黒いローブの道化師はいない。知ってたけどね。
「どこにいったの? アレイスター!」
 大げさに騒いでやる。うるさくしてやる。そうやって、自分を忘れることができないようにしてやる!

 法被姿のナイトオウル・アラウンド(CL3000395)は今日も今日とて騒がしい。
 というかどこでそれ手に入れたんだ。
 ロール状に丸めた大きな紙(アクアディーネの絵姿が描かれている)を刺した背負い袋に頭には布を巻き、指ぬきの革グローブを身に着け、光る棒を装備している。
 曰くアマノホカリの一部で伝えられている伝統的祈祷衣であるらしい。
 アマノホカリ出身者が怒りそうな気がするがおいておこう。
「わが女神、今日はいつもとは違う祈りを――」
「ええ、たのしみです」
「はぁああああああああああああ!!!!!
 よっしゃー! いくぞー!
 タイガー! ファイヤー! サイバー! ファイバー!
 ダイバー! バイバー! ジャージャー!
 もういっちょいくぞー!
 虎! 火! 人造! 繊維!
 海女! 振動! 化繊! 飛! 除去!」
 一心に光る棒と頭を振りながらキレッキレのダンスを踊るナイトオウル。
 女神は一瞬びっくりするものの手をたたいての笑顔だ。
 よっしゃ! やったとナイトオウルはガッツポーズをとりながらいつもながらに連行されていくのであった。

「ふふ、騒がしいね」
 マグノリア・ホワイト(CL3000242)は連れていかれるナイトオウルを眺めながら笑う。だいたいいつものことなのでみんな慣れたものである。
 株分けしたエーデルワイスが可憐に咲いている。花冠にするよりはこっちのほうがいいと思ったのだ。
「きれいに咲きましたね。ふふ、かわいらしいです」
 初夏にさくその白い花が揺れる。
「僕のほうのも――咲かせてくれたんだね」
 女神の傍らで咲く桃色の花をみてマグノリアはうれしく思う。
「ねえ、君から見て…僕の『性質』はどんなもの……? 悪い言葉でもいい思った事を隠さず、言ってみて」
 マグノリアの問いに女神はすこしだけ考えて「よくもわるくも純粋」だと答える。
 純粋。混じりけのないもの。それはマザリモノであるマグノリアにとって遠い言葉のようにも思える。
「僕はマザリモノだよ」
「ええ、姿はそうでも心はなにも混ざってないあなたそのものの純粋です」
 マグノリアがその「矛盾」を飲み込むには時間が必要だろう。けれどマグノリアがマグノリアを知るための一つ。
「それと、ごめん
 神の蟲毒は完遂させる。けど――
 彼を守ることはできないよ?」
「ええ。きっとあなたたちはたくさんのものを失うことになるでしょう。全部を救いきるのはきっと――」
 女神はそこで言葉をとめる。言葉にするのが怖かったのだろう。
 それを背負わせたのは彼女だけではないはずなのに。
「大丈夫」
 マグノリアは一言いった。如何なる理由でも「君」を『壊す事はさせない』から。

 




†シナリオ結果†

大成功

†詳細†

称号付与
『永遠の絆』
取得者: エル・ミステル(CL3000370)
『永遠の絆』
取得者: ザルク・ミステル(CL3000067)
『祈りは歌にのせて』
取得者: サーナ・フィレネ(CL3000681)
特殊成果
『エンゲイジ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:エル・ミステル(CL3000370)
『エンゲイジ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ザルク・ミステル(CL3000067)
『白い花束』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)

†あとがき†

 ご参加ありがとうございました。
 花嫁さんへのご祝儀とがんばったふたりにMVPを。
 大成功とさせていだだきます。

 素敵な思い出になることを祈っています。
 ご結婚おめでとうございます!

 以下エドワードとアクアディーネ連名のメッセージ

「この戦争の戦いの最中、自由騎士同士が結婚するのはとてもうれしく思うよ。
 願わくば、永遠に幸せに。
 来年以降の白紙の未来に君たちの色が描かれることを祈っているよ」
FL送付済