過去ログ

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[2021/04/05]

●黒鬼将軍、出陣
 ――最近、彼は酒に酔えずにいた。
「まずいな」
 いくさで上げた敵将の首級から滴る血を混ぜた、祝い酒。
 普段ならば、それを一口啜っただけで心が高揚するのだが、そうにも酔えない。
「まずいぞ、土方」
「あれ、何かやらかしちゃいました?」
 栄堂城にて、腹心の土方武蔵と共に酒を飲んでいた宇羅嶽丸は「そうじゃあない」と顔をしかめて、酒が注がれた朱の杯を放り捨てた。
「ああ、もったいない!」
「いらんいらん、飲む者にまずさを感じさせる酒に用はない」
 天守閣から、栄堂を一望する嶽丸が、露骨に舌を打って眉間にしわを寄せた。
「何だァ、この空気は?」
「どうかなさったんですか、上様」
「おまえさんは感じぬか、この空気を……」
「空気、ですか?」
 と、言葉を向けられた土方が同じく立ち上がって栄堂の都を見渡すが、
「別に、何もないじゃないですか。世はなべてこともなし。遠くじゃいくさしてるんでしょうけどねぇ。怖い怖い」
「ンなこたぁどうでもいいわ。余が加われぬいくさになど興味はない」
 憮然とする嶽丸に、土方は大きくため息をついた。
 この方がどうにも、世の道理を弁えながらも、こうして餓鬼のような振る舞いをする。それは土方も重々承知していた。ゆえに、彼はこう返す。
「じゃあ、上様もいくさに加わればいいじゃないですかー」
 いつもならば、嶽丸はここで「総大将は奥にドカッと構えているものよ!」とでも言って、派手に笑いだすだろう。事実、土方もその反応を予想していた。
 しかし、今回は違った。
「――ふむ、そうするか」
「え?」
「よぉし、そうと決まれば準備だ、準備!」
 呆ける土方の前でパァンと両手を打ち鳴らし、嶽丸は踵を返した。
「あの、上様、準備とは?」
「決まっておろう、いくさのだ。余が前に出る。無論、おまえさんも、そして神殲組もだ。ちょっと梗都まで攻め上げて、朝廷をブッ潰そうではないか!」
 これには、土方も仰天する。
「ちょ、ちょちょ、ちょっと上様! どうしてそうなるんですか!?」
「あ? 問題でもあるのか?」
「ありますよ! 諸々の仕掛けをしてる真っ最中ですよ!」
「おう、罠に調略、陽動、離間の計に、他にも様々やってるなぁ。が! 全部中止!」
「ええッ!!?」
「準備せい、準備! さっさと準備して、決戦だ、決戦!」
 あまりにも性急に動こうとする嶽丸に、土方は悲鳴じみた声をあげた。
「上様、どうしていきなりそんなことを!」
 嶽丸は浮かべていた笑みを消して、天守閣から景色を見て呟いた。
「――どうにも、いくさが楽しめなくなりそうなんでな」

【関連依頼】
『天下分け目、遺跡ケ原の戦い!』(吾語ST)


【禁断ノ果実関連依頼】
『【禁断ノ果実】Outwit!アッティーン買占作戦!』(どくどくST)

[2021/01/10]

『巫女よ、またあのヒトならざるものがきた』
「あのヒトも、ヒト……だとおもうわ」
『アレは創造神に呪われたヒトならざるものだ』
「まったく強情ね、■■■」
『ああ、お前からもらったその名で呼ばれるのはいつだって心地がいいな』
「私の話をきいていたの? ほんとうに神より古きものってかわっているのね」
『巫女も相当だろう』
「かもしれないわね……ふう」
『どうした? 気分でも悪いか? 痛いところでもあるのか?』
「そんなに慌てなくてもいいわよ。少しだけ疲れたみたい」
『また『呼んで』いたのか?』
「ええ、答えはかえってこなかったけれど」
『お前もあちらにいってしまうのだろうか?』
「いいえ、いいえ。大丈夫よ。大丈夫。ここにいるかぎり私はあなたのそばを離れない。こうして言葉を交わすこともできる」
『すまない、お前を閉じ込めたのは我だ』
「お願いしたのは私。ずっとあの御方をまつために」
『……そうだったな』
「貴方はわたしのために姿を変えてしまった」
『かまわぬ。しかし……その、この姿は醜いのだろうか? 不快であったらすまない。ヒトの美醜はわからぬ故』
「違うの、■■■。嬉しいけれど……少しだけ、純粋ではなくなってしまったことが悲しいの」
『そうして巫女を守るのは我がきめたことだ。巫女がかなしむことではない。
 ――ヒトは新しい技術を得てきた。空へもその手を伸ばした。蒸気、というのは恐ろしいものだな』
「ええ、これ以上神をあちら側に喪失することはできないわ。もうギリギリよ。押し留めていられる限界は近いの」
『わかっている。これまで通りだ。空に手をだすものは潰す』
「ええ、おねがいするわ。■■■」
 

[2021/01/08]

「道化師よ、あの件はどうなっているのだ?
 ああ、もう、ああ、ああ。
 腹立たしい。あの青の女神がこれほどまでに力をつけたなどとな」
「おいおい、モリグナ。
 元の姿に戻(がっしんす)るほどに怒っているなんて珍しいね」
 道化師は女神にことさら挑発するかのように軽口を叩く。
「貴様、女神に不敬だ……ゴホッ」
 ヴィスマルク皇帝、アドルフはそんな道化師に対して叱責する。しかし最後までいい切る前に咳き込むとその場にうずくまった。
 ぽたり、ぽたりと紅い雫が床にこぼれていく。
「君さあ、女神がその体に入ってなければ病弱なぼっちゃんなんだから、イキるなよ」
 道化師はただただ冷たく言い放った。蹲るアドルフを助けようともしない。
「黙れ、たとえ、我が身が潰えようとも女神モリグナを次なる創造神として樹立させるまでは死なん」
 王杖でなんとか立ち上がりながらアドルフは唸る。
(ああ、ヴィスマルクはそういうカンジに解釈したわけだ)
「道化師、古きものはまだ首を縦に振らないのか?」
「まあね。僕だって、あいつは目的の邪魔だとおもってるもんよ。ヒトとヒトならざるもの恋物語は頑固でしかたないよね……いやぁ、アレをヒトとするには疑問もあるけどね~~~」
「吠えるな」
 ずん、と道化師の周囲の空間が質量をもって彼を押しつぶしていく。
(物理的に押しつぶされちゃそりゃあ声もでないわ)
「いいか、道化師! アイドーネウスから領地は奪ったそこまではいい。しかし目的を果たせずのままで良いと思うな」
 モリグナは冷たく、道化師だったもののシミに話しかける。
(ここまで破壊されちゃ復活までに時間がかかるっていうのに。めんどくさいなあ。

 とはいえ

 古きものは古いだけに強情だ。巫女ちゃんの願いを頑なに守り続けている。さあて。

 オラクル<アポトーシス>たちは古きものにどう動いてくれるものか?

 力技だけでは彼らの時間(さんびゃくねん)は超えられないぜ?)

アレイスター・クローリー (VC:えまる・じょん
ヴィスマルク5世(VC: 神崎恭一
???

天を目指す

[2021/01/04]


 イ・ラプセルの墓地4133の占拠。
 それ自体は眉を顰める行為である。軍事上何の意味を持たない場所への侵攻。しかしその後に告げられた報告は、パノプティコンを揺るがした。
 聖霊門。それを思わせる建築物の存在。
 魔導国家シャンバラより生まれた大規模魔術である。二ヶ所の門を距離的につなげ、行き来を可能とする魔術だ。その詳細は知らずとも、ニルヴァンに突如イ・ラプセルの大軍が送られた事実は無視できない。
 港町3356に駐留するイ・ラプセル軍。これが突如墓地4133に現れ、そこから進行する可能性があるのだ。
 国民管理機構の予知能力――厳密には予知ではなく、国民を未来まで管理する能力であって未来予知自体はおまけ――を行うことで未来は確定できる。だが確定した未来は覆せない。仮に『敗退する』未来を見てしまった場合、パノプティコンは負ける未来しかないのだ。
 なので、予知ではなく予測するしかない。
 イ・ラプセルは墓地4133から攻めるのか。それともそう思わせて港町3356から攻めるのか。戦力を二分するのか。あるいは――
「攻めない、という選択肢はないでしょうね。彼らにとって戦争の勝利、神の蟲毒を進めることは最低条件です。故に地域1155を一気に狙える拠点として、基地2091を攻めてくる。
 ……さて、これを凌げるか否かが勝負の分かれ目。塔を積み上げる為に、あそこを渡すわけにはいかないのですから」
 言ってため息をつき、王族1687は空を見上げる。雲一つない空。浮かぶ三日月が死神の鎌を思わせる。
 ヒトは空を飛べない。ソラビトでも一定の高さ以上は飛ぶことはできない。ヴィスマルクの飛行船でも、だ。
 それは世界にかけられた呪い。現存する神でさえ、それを超えることはできない。仮に大魔術を用いてそこまで行けたとしても、ただ落ちるだけだ。何故かは解らない。そう言う風になっているのだ。
 故にアイドーネウスは塔を築いた。あらゆる形の塔を築いた。人が住む塔。軍事施設を含んだ塔。精霊が集まると言われる場所にも塔を建て、喪われた国民の名を刻んだ塔を築いた。様々な技術、様々なアプローチ、様々な意味を込めて塔を建てた。
 ソラ。そこにたどりつけた存在。そこに居る存在。それこそが――
「……全てはここを凌がねば意味のない話。互いに正念場ですな、イ・ラプセル」
 決戦の時は近い。
 嵐の前の静けさを感じさせる三日月の夜――

「しかし自由騎士達のあの様子だと、神の蟲毒が終わればすべて解決すると思っているのでしょうな。水の女神や魔術師殿も知らぬのか、或いは口を噤んでいるのか。
 然もありなん、と言った所ですか」

【オラトリオオデッセイ関連】

公式ギルド
⇒【1820】オラトリオ・オデッセイピンナップ相談スレッド
⇒【1820】オラトリオ・オデッセイ<神が世界に来た日>


【無料シナリオ】『【無料】《オラトリオ1820》ハッピーニューイヤー』(ちょころっぷST)
【イベントシナリオ】『《オラトリオ1820》オラトリオ・オデッセイ』(たぢまよしかづST)

王族1687 (VC:つとう

ギアが止まる時

[2020/12/26]


「戦車はやっぱり凄かったですね。ええ、疲れました!」
 とても疲れたとは思えない声で報告するエリシア・ブーランジェ(CL3000661)。しかし数刻前までは全魔力を使い切って、ゆすっても起きないぐらいに眠っていたと言う。よくよく見れば、足も少し震えていた。
「基地内も制圧完了です。激しい戦いでしたが、得る者もありました」
 デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は言って息を吐いた。ヴィスマルク兵との戦いは苛烈だったが、やんごとなき理由で協力していた騎士から防御の術を受け継いでいた。完全な形ではないが、逆に自由騎士全員に使いやすい形となった。
「屋上の蒸気騎士は倒しました。チャイルドギアを蒸気鎧に組み込む技術は、ここで凍結です」
 抑揚のない声でロザベル・エヴァンス(CL3000685)は報告する。チャイルドギアを用いた高機動な蒸気騎士。スペック自体はかなりのモノだが、それを好んで使用する気には到底なれなかった。ここで研究結果毎凍結してしまうのが正解だろう。
「なんとか、言うダンサーもついでに倒しといたで。不細工な最後やったわ。生きとるけど」
 物憂げに蔡 狼華(CL3000451)はため息をつく。子供を甚振る趣味を持つ軍人。大人に虐げられた経験を持つ狼華にとって、その軍人は心の傷を想起させる。だがそれを昇華するように刃を振るい、打ち倒したのだ。
「うむ。チャイルドギアの発案者であるウーリヒ卿も無事拿捕できた」
 テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)の宣言は、この戦いの勝利宣言でもあった。研究結果なども無事押さえたこともあり、これ以降チャイルドギアの作製は不可能だろう。ノウハウのほとんどを奪われたのだから。
 かくしてドナー基地強襲作戦は、イ・ラプセルの勝利で終わった。
 逃亡するヴィスマルクへの追撃部隊は最小限とし、軍のほとんどはチャイルドギア搭載戦車を解体して中に居る子供の救出とケアに勤めていた。とはいえ容易なことではない。魔法一つで治るような傷ではないのだ。肉体的にも、精神的にも。

 だが、子供達がこれ以上傷つくことはない。
 その事実が、この戦いで自由騎士が得た最大の報酬だった――

【関連依頼】
【決戦】『【機児解放】Agony! 苦悶の機械を破壊せよ! 』(どくどくST)


【オラトリオオデッセイ関連】

公式ギルド
⇒【1820】オラトリオ・オデッセイピンナップ相談スレッド
⇒【1820】オラトリオ・オデッセイ<始まりの日>

【イベントシナリオ】『《オラトリオ1820》オラトリオ・オデッセイ』(たぢまよしかづST)

テオドール・ベルヴァルド (VC:もめん子
蔡 狼華 (VC:湊みなと
エリシア・ブーランジェ (VC:もめん子

機児解放!

[2020/12/09]


『チャイルドギア』……幼い子供を核として動く駆動系で、これにより戦車の小型化及び大量生産を可能とした画期的な発明である。
 人道を無視した大量生産。その物量を前にイ・ラプセルは劣勢が予想されたが、ドナー基地潜入作戦(依頼:『Vandalism! ドナー基地への破壊工作!』)により『チャイルドギア』の生産を一時的に停止することに成功する。
 同時進行で進められた兵器開発(依頼:『Weapon! 女神に恥じぬ兵器を作れ!』)」により、『チャイルドギア』と『プロメテウス/ファッケル』に対抗しうる兵装『アルタイル』『ベガ』『デネブ』を作製。三機を伴いドナー基地へと進軍。
『チャイルドギア』を生産するドナー基地を廃するための【機児解放】作戦が勃発する!

「作戦内容は簡単だ。
 迷彩を施した『アルタイル』でドナー基地を強襲し、基地のトップであるジルヴェスター・エルトル・ウーリヒ少将を無力化する」
 兵射出式隠密飛行船『アルタイル』……視覚、聴覚、そして温度を誤魔化す迷彩を施して空から目標地点に近づき、兵を入れたキューブを射出する輸送兵器だ。これを使用して、兵を基地内に直接送り込む。

「防衛に出るであろう『プロメテウス/ファッケル』には『ベガ』『デネブ』を当てる。
 難敵ではあるが、ここで破壊しなければドナー基地攻略の難易度は高まる。この作戦の要の一つと思え!」
 貫通式兵装二足歩行兵器『ベガ』。そして自陣防衛防御戦車『デネブ』。人が搭乗し、プロメテウスの装甲を貫通する武装を持つ兵器のベガ、そして仲間を守るべく防衛陣を展開する防御特化のデネブ。この二機をもって、『プロメテウス/ファッケル』を撃破する。

「言うまでもないが、ヴィスマルクは強い。それはこれまでの歴史が証明している。
 だが、我々イ・ラプセル軍も強い! シャンバラとヘルメリアを倒した実力はウソではない!
 ここでドナー基地を占領し、悪辣非道な起動システム『チャイルドギア』を抹消するのだ!」
 湧き上がる鬨の声。
 今、歴史の分水嶺。弱き子供は搾取される未来か、或いは子供が笑顔を浮かべる未来か。
 その分かれ目の戦いが、切って落とされる――

【関連依頼】
【決戦】『【機児解放】Agony! 苦悶の機械を破壊せよ! 』(どくどくST)
『【【機児解放】ZAP! 貫け炎機の無敵装甲! 』(どくどくST)
『【機児解放】前へ前へと進むのならば 』(吾語ST)
『【機児解放】降下作戦アルタイル  』(たぢまよしかづST)

管理国家への楔

[2020/12/07]


 見渡す限りの荒野と、そして一本の塔。
 パノプティコン領の一つ、墓地4133はそんな場所だった。
 そして、そこをめぐる戦いが先日行われた。自由騎士とパノプティコン軍が激突し、そして――
「よっしゃー! 墓地4133の占領完了だぜ!」
 勝利の声をあげたのはジーニー・レイン(CL3000647)だ。敵将を討ち取った彼女の顔は満足げだ。マザリモノを卑下するように見ていた将軍が驚きの顔をあげて倒れていったのは、ジーニーからすれば心地良い。
(墓地4133……いいえ、プレール村……。もう、その面影はないのだけど)
 キリ・カーレント(CL3000547)は荒野を歩きながら、そんなことを思う。かつてここにあった村。それは徹底的に焼かれ、そして塩をまかれて作物を生み出せない大地となった。……それでもいつかはこの地に名物の土筆が生えてくるのだと信じたい。
「思う所は色々あるだろうが、時間が惜しい。急ぎ準備にかかるぞ」
 アデル・ハビッツ(CL3000496)は言って運ばれてきた積み荷を開放する。二人がパノプティコンという国に色々思う所があるのは知っているが、任務は任務だ。それに時間が惜しいのも事実だ。
 積み荷の内容は、魔術的かつ建築物的に吟味された木材だ。幾つかのパーツに分かれていて、組み立てることで巨大な門となるように設計されたものだ。

『聖霊門』

 かつてシャンバラではニルヴァンに大軍を運び、近年では遠い東方の地、アマノホカリに移動する事が可能となった魔術具だ。
 これを用いることで、多くの兵をタイムロスなしでこの地に送ることが出来る。
「つまり、どういうことなんだ?」
 ジーニーの言葉にアデルは指を二つ立てて説明する。
「今イ・ラプセルが占領している港町3356。ここに大軍がいる、と見せかけて聖霊門を通して墓地4133から進軍することが出来る」
「でも、この聖霊門? も予知されてるかもだぜ。それなら不意を打つことなんかできないんじゃないか?」
「そこだ。
 パノプティコンはイ・ラプセルがどちらからも攻めることが出来ると知っている。こちらに兵を差し向けるなら、それに合わせて港町から攻めることも、港町を攻めればこちらから攻めに出ることも可能なことを『知っている』わけだ。
 結果、相手は後手に回ることになる。戦場のイニシアチブをこちら側が握ることが出来るのだ」
「でもそれを予知される……と言う事もあるんじゃないでしょうか? 予知する人が一生懸命何度も予知をして、当てられるって事も」
 キリの問いに、首を横に振るアデル。
「パノプティコンが予知できるのは『確定した未来』……つまり見た瞬間には避けられない未来だ。水鏡のように『未来を変えられない』以上、都合の悪い未来を見てしまった場合はそれを変えることはできない。
 故にパノプティコンの予知は基本的に慎重になる。好きな未来を選んで確定できるほど便利なら、始めからパノプティコンは『待ち』の戦略を取るはずがない。彼らにとっての予知は『賭け』なのだ。ましてや国防となればなおのことだ」
 自分達が死ぬ未来を見たのなら、彼らはそれを受け入れるしかない。神が定めたその未来を変えることなどできないのだから。それが確定型未来予知の欠点だ。
 となれば、積極的に予知はできない。少なくとも『攻めて来る』と分かった段階にならないと使用したくはないはずだ。
「もちろん、まったく使用しないわけでもないだろう。だからこその戦略だ。狙いを絞らせず、気が付いた時には終わっている。それが理想だ」
 つまるに、最後は人と人の勝負なのだ。
「どうあれ、聖霊門が完成するまではパノプティコン攻めは待機状態だ。
 とはいえ、九日にはヴィスマルクとの決戦も控えている。休む余裕はないぞ」
 アデルの言葉に、自由騎士達は様々な反応を示す。スパルタなスケジュールに苦笑する者や、迫る戦いに気合を入れる者。

 一八二〇年一二月、時代は確かにうねり始めていた。

アデル・ハビッツ (VC:柿坂 八鹿
キリ・カーレント (VC:883
ジーニー・レイン (VC:井藤奈南

新兵器開発!

[2020/11/30]


『チャイルドギア』……まだ幼い子供を暴力で屈服させ、機構の一部として運用する人道を無視したヴィスマルク産の駆動システム。
 それにより、戦車の大量生産と小型化に成功するヴィスマルク。時が経てば軍事のパワーバランスは崩れ、大量の戦車兵団に大陸は血の海に染まっていた可能性がある。
 イ・ラプセルは先の投票決議により、国力を投じて新兵器を開発。自由騎士達がアイデアを出し、それを技師達が形にすると言う方向で話を進めていた。そして――

「というわけで、大まかな方向性は決まったわ!」
「大型兵器を三台作り、戦場をコントロールする。一点突破ではなく、役割を分割させて柔軟性を持たせた形だ」
「はい……。皆さんのアイデアは、すごかったです……」
 兵器開発に関わった猪市 きゐこ(CL3000048)とアデル・ハビッツ(CL3000496)とミウ・ムー(CL3000697)は、自由騎士達を階差演算室に集めて報告を行う。ここなら他に情報が漏れることはないだろうという配慮である。

「先ずは一号機! 兵射出式隠密飛行船『アルタイル』!
 高速移動で敵戦場の要まで飛び、耐衝撃に特化したキューブに兵士を入れて射出! 一気に敵衆を仕掛けることが出来るわ! 船自体も多方面の迷彩を施しているので隠密性も高いわ!
 ……ただ、打ち出した兵を回収する機能がないので、自力で歩いて帰ってもらうしかないのが欠点だけど」
 最後は少し尻すぼみになるきゐこ。下手をすると死地に送りかねない兵装の為、注意せねばならない。

「二号機だ。こちらは貫通式兵装二足歩行兵器『ベガ』。
 貫通力に特化した近接兵器と射出武器で戦車やプロメテウスなどの大型装甲兵器を貫くのがコンセプトだ。相応の操縦能力と戦闘技術が必要になるため、自由騎士が乗り込んで操縦する形になる。
 想定敵はドナー基地を守るプロメテウス/ファッケルだ」
 淡々とした口調で告げるアデル。だが言葉に起伏こそないが、そこにかける熱量はけして低くはない。次の戦いにかける気迫を感じさせた。

「さ、最後は三号機。……あの、本当にワタシが説明しても……は、はいぃ、頑張ります。
 三号機、自陣防衛防御戦車『デネブ』……戦車に折り畳み式の盾を乗せた、防御兵器です。物理的、魔術的な防御力を高めた盾です……その、はい。あとは、自己修復機能! 受けたダメージが自動で回復するんです! その、最後まで立ち続けるって、カッコいいですよね!? ロマンですよね!?
 ……あ、すみません。すこし、喋り過ぎました……」
 熱がこもってまくしたてたミウだが、急に我に返っておどおどと頭を下げる。だが、そこに熱を入れるほどには真剣に向き合ったのだ。

 三兵器は突貫工事で作製が進んでいる。ヴィスマルクにバレない様に部品ごとに工場を分割し、最後にドッキングさせて各兵器を完成させる方式だ。
 予定完成日は12月9日頃。それに合わせて、『チャイルドギア』を生み出すドナー基地を攻める作戦――【機児解放】が動き出す!


【関連依頼】
『Weapon! 女神に恥じぬ兵器を作れ! 』(どくどくST)

猪市 きゐこ (VC:つとう
アデル・ハビッツ (VC:柿坂 八鹿
ミウ・ムー (VC:suyari

新兵器開発!

[2020/11/15]

「先の投票の結果だ。『チャイルドギア』に対抗するためにどうするかというモノだな」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)は咳払いの後に言葉を続けた。
「結果は圧倒的多数で『新兵器を作る』というモノだ。
 既に鉄鋼などの材料は用意されてきている。後はどのような兵器を作りたいかを纏めてくれればいい」
 ヘルメリア出身の技師や、シャンバラ出身の魔術師など今のイ・ラプセルは多くの技術者を擁している。兵器の方向性さえ定まれば、後は動くことはできるだろう。また、自由騎士にも多くの技術者はいる。
「だが彼らへの指示があいまいであれば、伝わる事も伝わらない。ただ図面を引くだけの作業では、あの『チャイルドギア』や『プロメテウス』に対抗できるものが作れはしないだろう。その辺りを注意し、計画を練ってくれ。
 同時進行でパノプティコンへの対策もブレインストーミングで討議されている。興味がある者は覗いてみてくれ」
 二か国同時戦略。一カ国に戦力を集中できない事もあり、軍事的に多忙となっている。だが、これを乗り越えなければ白紙の未来は回避できないのだろう。

 時は1820年11月。空気は少しずつ、冷たくなり始めていた――


【関連依頼】
『Weapon! 女神に恥じぬ兵器を作れ! 』(どくどくST)

フレデリック・ミハイロフ (VC:萌島ヘナ

天秤の傾き

[2020/11/06]

 鉄血国家ヴィスマルク。
 管理国家パノプティコン。
 両国を同時に相手にしているイ・ラプセルは、両国の戦略に悩んでいた。
 ヴィスマルクは『チャオルドギア』と呼ばれる駆動システムを開発し、それにより戦車の軽量化、及び大量生産に成功する。だがそれは幼子を暴力と薬物で洗脳し、戦車の『部品』とする非倫理的な兵器だ。眉を顰める者も多い。
 パノプティコンは、国民管理機構による『時間管理』を用いてイ・ラプセルの水鏡の予知を行える。国民管理機構は『他の未来を削除し、未来を限定する』事に対し、水鏡は『無限の選択肢を生かしたまま、可能性の高い未来を見出す』ものだ。

「頭が痛い話だな」

 二国のことを思い、クラウスは眉を顰める。正直、イ・ラプセルにとって芳しくない話だ。
 先ずはヴィスマルク。『チャイルドギア』に関しては非道の兵器と言う意見が多いが、それでも戦車を大量生産されると言う事実は無視できない。放置すれば物量と火力で押し切られるのは明白だ。ならばこちらも同じことをもしくは鹵獲した兵器を、という意見もないでもない。
 そしてパノプティコン。互いに予知を有するがゆえに、硬直状態に陥った。大軍を動かせばそれを予知して相手が動く。イ・ラプセルが今までそうしてシャンバラやヘルメリアに勝ってきた戦略が、あちらも使ってくるのだ。

(救いは、両方とも打開策があると言う事か)

 打開策。
 ヴィスマルクに関しては、あちらと同じような兵器を作り出せば、少なくとも力の均衡は保てる。だが反対意見は多かろう。だがそれ以上の上策は、正直ない。戦争において、数は大きなファクターなのだ。こちらは皆の意見が必要になる。
 パノプティコンに関しては、先の戦いにおいて国民管理機構の予知を『誤魔化す』策が三つある。インディオを囮とする【抛磚引玉】。敢えて別場所を攻める【囲魏救趙】。ヴィスマルクと一時結託する【遠交近攻】。……ブレインストーミングで意見を募り、ブラッシュアップできれば僥倖だ。
 戦争。そんな物はできるだけ早く終わらせなければならない。白紙の未来まであと――


⇒『チャイルドギア』を用いるヴィスマルクにどう対抗するか?
投票締切:11月13日(金)23:59まで

クラウス・フォン・プラテス (VC:やむむ

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